【ビデオ】シド・ミードがトヨタ「プリウス プライム」の仮想世界シミュレーターを制作!
自社のクルマが未来を見据えた選択であると顧客に納得させるにはどうすればよいだろうか? その方法の1つが、映画で未来世界をデザインしている人気クリエーターに仮想世界(VR)を作ってもらい、その中で顧客にクルマを運転してもらうことだ。トヨタは『ブレードランナー』や『トロン』で車両や建築などのデザインを手がけたシド・ミード氏に白羽の矢を立てた。

ミード氏は、トヨタの「プリウス プライム」(日本名「プリウスPHV」)のために、VRシミュレーターのコンセプトアートとデザインを担当。米国サンフランシスコで開催されたIT関連の国際イベント「ディスラプトSF 2016」で発表された際に、筆者もこのVRドライブを体験させてもらった。デモは2部構成になっており、まずGoogleのVR描画アプリ「Tilt Brush」に似た装置を使って、イマーシブ(没入型)アートを作成する。その後、"4D VR"ドライブが体験できるVRコンテンツ「The Impossible Quest」に移る。

ミード氏は「"未来のクルマ世界に新たな視点を提案する"。そんな胸躍るアイディアに携わることのできる機会を断るわけにはいかない」と『TechCrunch』にメッセージを寄せている。「トヨタはモビリティの新しい世界を創造した。素晴らしいVRの世界でそのコンセプトを実現し、我々の前に未来を提示したのだ」。

アート作成とVRシミュレーターによるドライブ時に、ユーザーはHTC社製のヘッドマウント・ディスプレイ「Vive」を使用する。このシミュレーターには、実物の運転席とプリウス プライムのステアリングが取り付けられている。これはVRの世界の動きに合わせて自動的に動くので、握っているからといって実際に操舵する必要はない。シートも振動するため、自分がその世界で車内にいるような感覚になるという仕組みだ。

トヨタはVRの制作に関して、クリエイティブ・エージェンシーのサーチ・アンド・サーチ(Saatchi & Saatchi)に協力を依頼し、同社はTilt Brushに似たカスタム・ビルトのVR描画アプリを開発した。当初の計画ではTilt Brushそのものを使用する予定だったが、サーチ・アンド・サーチのデジタル・エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、ドウェイン・コー氏によると、Tilt Brushではユーザーが作成したアートワークを「The Impossible Quest」のシミュレーター用にエクスポートできないという問題が発生したという。彼らが開発したアプリなら、ユーザーは片手で絵を描くことも可能で、初めてでも気軽に使えるとコー氏は言う。

ドライブ体験では、ミード氏の創造力で描かれた風景やクルマが現れるアニメーションの世界へと体験者を導く。シートの振動も加わると、実にリアルな感覚が味わえる。体験する際には実際にシートベルトを締めなくてはならない。これは単に安全を促すためのユーモアかと思ったが、実際に運転席から投げ出される危険性を防ぐように設計されているそうだ。

シミュレーターの操作は実に簡単だった。ユーザーはアートの作成時からガイドによる手助けが得られ、ガイドはそのままクルマへと案内してくれる。クルマに乗り込んだあとはシートベルトを締め、ステアリングを握るだけだ。「The Impossible Quest」のストーリーは冒頭に、移動手段がなくて困っている人物が登場する。ユーザーはその人物と一緒に荷物を届ける手伝いを買って出るのだ。最後に(ネタバレ注意)、その荷物の中身が実はユーザーが最初に描画アプリで作成したアートだったと分かる。

ドライブ体験は数分間続き、シートの振動とVRの組み合わせで少し気分が悪くなったが、筆者にとってVR酔いは珍しいことではなく、"乗り始め"のわずかな時間だけのことだった。全体的な感想として、マーケティングと没入型ストーリーの融合という点では興味深い試みだと感じたが、大多数の人が楽しめるようなVRのストーリーができるまでには、まだ時間がかかりそうだと思った。


注:この記事は米国版『TechCrunch』に掲載されたDarrell Etherington記者の記事を転載したもの。




By TechCrunch
翻訳:日本映像翻訳アカデミー