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これまで何度かお伝えして来たように、イタリアの2輪車メーカーであるMVアグスタと著名なデザイン・ハウスのザガートが共同製作した「F4Z」が、フランス・シャンティイで開催された「アート&エレガンス」の会場で公開された。MVアグスタの発表によると、この個性的なオートバイは、ザガート・デザインのクルマとイタリアン・バイクを愛する日本人実業家のためにワンオフで製作されたものであり、量産の予定はないそうだ。



車名から予想されていた通り、機械部分はMVアグスタの市販バイク「F4」がベースになっているという。独自のボディ・ワークは、ザガートのデザイン・チームがアルミニウムとカーボンファイバーで製作。これに合わせて、インテーク・マニフォールドや燃料タンク、バッテリー、エキゾースト・システムなどのコンポーネントも再設計されている。

その結果、2輪の世界における伝統的なカスタマイズとは異なるオートバイが誕生し、MVアグスタにとっては新たなコレクター向けの特別で価値が高い注文製作によるバイクを市場にアピールすることになり、ザガートは自動車のボディ製作に留まらないデザイン力と先進素材を扱う技術力を示すことができたとしている。



ザガートは、ファッションや出版関係の会社を率いる若い日本人ビジネスマンのライフスタイルに合わせて、このバイクの創作に取り組む必要があったという。その起点となった概念は、「オートバイはクルマよりもオーナーのライフスタイルを表現する」ということ。だから顧客の性格や情熱、希望を理解することが必須だった。ザガートのアトリエに特別な製品を注文するような人なら、間違いなく強い情熱を持っている。このオーナーの場合、その根源は1980年代、初めてバイクを手に入れ、自らの手でカスタマイズした時代に遡るという。そんな彼の心の底から沸き上がる情熱が、デザイナーの創造力を刺激したとザガートは言う。オーナーは、モダンでファッショナブルなモノなんて求めていなかった。彼が欲していたモノは、価値や魅力が不変で、他とは決して比較できない、クラシックでありながらアップデートされた、時代を超えたデザインのバイクであったそうだ。



メーカーが自社のために製作するコンセプトカーとは趣が異なり、F4Zから漂う強烈な個性は、その後ろに存在するたった1人の個人のために造られた故に違いない。その人物が気に入りさえすれば、他の人々から寄せられる批評や感想は一切意味がないというわけだ。裕福で幸福なオーナーを羨む前に、初めて買ったクルマにドライバーやレンチを突き立てて、"自分だけの物"にした時の感激を、もう一度思い出してみたいと思う。