SUBARU LEVORG STI
2014年に発売を開始したスバルのニューモデル『レヴォーグ』が二度目の年次改良を行うと同時に、新グレードとなる『STI Sport』を追加。その『STI Sport』が発売開始から一か月で受注3000台越えのスタートを切っている。これはスバルにとっても"異例"なのだとか。
が、ワタシは少しも驚いていない。というか、魅力的なクルマはちゃんと理解されるのだと一人のクルマ好きとして嬉しくなった。

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まずは『STI Sport』のベース車でもあるレヴォーグの改良ポイントに触れておこう。安全性の強化と静粛性の向上、そして少しだけ外見のアピアランスにも手が加えられている。
安全性についてはアイサイトを標準装備し、アドバンスドセイフティパッケージのオプション装着とそれを選ぶ方も多いという予防安全技術についてのアップデートはないが、今回はフロントドアビームの強化やリヤシートベルトのプリテンショナー追加、リヤシートクッションの改良によるサポート性の向上など、万一の際の衝突被害軽減が強化されている。

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静粛性についてはフロント3面のガラスの2重化やリヤクオーターガラスの板厚のアップ、さらに荷室まわりには制振材が追加された。その効果はドアを閉めて走り出した瞬間から静さを実感できるほど。おそらく高速走行では風切り音なども侵入も減ると想像でき、ロングドライブの快適さも増すだろう。いや、静かさは快適さのみならず疲労軽減にもつながることで一つの安全性を高める要素になるから重要なのだ。
レヴォーグは2014年に国内専用モデルとして登場したが、翌年にはステーションワゴン市場の成熟した欧州でも発売を開始。以降、アジア市場でも販売されている。静粛性や安全性の向上は欧州ライバル勢たちとの競争力アップにも繋がるはずだ。

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『STI Sport』の"STI"とは"SUBARU TECHNICA INTERNATIONAL"の略名。スバルのモータースポーツ活動を統括し、モータースポーツへの参戦をはじめ、その技術を市販車に反映させたパーツ開発やコンプリートカー開発などを行うスバルの子会社。こちら方面に詳しい方なら市販車をベースとしながら運動性能を優先してSTIパーツを多用し専用開発され、かつ台数も限られる「S」や「tS」シリーズたちのことをご存知と思うけれど、今回のレヴォーグで登場した『STI Sport』はそれらと立ち位置が違う。スバルとSTIが共同開発を行ったレヴォーグのカタログモデル(=台数限定でなく、走り一辺倒ではなく乗り手も選ばない)のなかで最上級グレードとなる。多くの自動車メーカーにはSTIのような子会社や部門が存在し、例えばBMWならM社が開発したモデルにM3やM5があり、M社がチューニングに携わるモデルとしてMスポーツがある。アウディならアウディ スポーツ開発のRSモデルではなくSモデルのような存在なのだ。ハイスペック/ハイパフォーマンスに特化したエンジンやサスペンションをはじめとする大幅な変更と開発が行われるモデルではなく、車両全体の質を上げるような動的チューニングを行うことでモデルが洗練されアップグレード感を抱くことができるのが『STI Sport』なのだ。

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外観はベースモデルよりもワイド&ローな印象をフロントバンパー&グリルで演出。

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またSTIのバッヂのほか大型のマフラーカッター(リヤ)がこのグレードの一つの目印になる。その点でいえば、18インチのアルミホイールもこのモデル専用だそうだ。

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内装はレザーシートやトリムにSTI Sportインテリアテーマカラーであるボルドー色を採用しているのが特徴。有彩色の内装は好みが分かれる懸念もあったかもしれないが、これまでのスポーティの定番"ブラック"の呪縛を解き放った感あり。無難なブラックのチョイスがあってなおボルドーも...という選択肢があるのが理想かもしれないが、硬派なスバルユーザー、無難を好む多くの人々にとっては一石ならぬ一色を投じ、感性を刺激する効果があるのは間違いなし。もっと色や素材にこだわってもいいのではないかしら。

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そして個人的にも今回のハイライトと注目していた走行性能。STIとスバルが共同開発した成果がココにある。1.6L/2.0Lのどちらにも『ダンプマチックII』と呼ぶダンパーと、これに合った専用スプリングを採用。このダンプマチックIIは路面からの入力の大小によって制御の変わる可変減衰力ダンパーで、基本構造をメルセデスA,Cなどと同じとするビルシュタイン製(ちなみにSTIモデルの多くのダンパーやスプリングがビルシュタイン製)。加えて操舵応答性を高めるため、ステアリング ギヤボックスの取り付け剛性も向上させている。

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富士スピードウエイのショートコースと外周道路を使った試乗会では、レヴォーグの最上級モデルとしての洗練ぶりがうかがえた。足まわりとステアリングをセットで向上させたことで、確実な相乗効果が生まれている。
路面の上を滑らかに走る。スポーツと付くからと言って、決して硬いわけでもない。年次改良によって静粛性も高まった室内におさまり、滑らかに進むレヴォーグを想像してほしい。ベースモデルには細かな路面の凹凸を拾ってしまうわずかな雑味のようなものがないわけではない。その"わずか"を取り除く作業が洗練を極めるのに大事なことは違いのわかる大人ならご理解いただけると思う。

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"わずか"さが走りの洗練を向上させているという点ではステアリングフィールも同様だった。ステアリングを切り込んだ際の手応えは、切り始めの微舵(="わずか"なところ)から反応してくれる誠実さが好きだ。操舵から路面を捉えるタイヤの反応までの連携に優れている点はサスペンションまでのパッケージングと言ってもよいのかもしれない。スポーツカーのようなクイ、クイッと反応するタイプを想像される方もいるかもしれないが、そういうことではなく、切り始めのレスポンスの良さはその先のステアリング操舵量の正確さに繋がる基本性能として大事なところ。ゆえにスポーツカーじゃなくたってこだわらないといけないところなのだ。そしてソレに応えるサスペンションがコーナリングではグッと荷重を受け止めてくれる。大きめのコーナーで状況に応じて操舵量を変える過程でも足元も手元のフィーリングも一定だからコントロールがしやすい。なんて書くとスポーツカーのインプレッションみたいになってしまいそうだけど、サーキット試乗の最中もコーナリング速度よりもコーナリングのしやすさに好感が持てた。

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『STI Sport』にも1.6L/2.0Lの2種類の直噴ターボエンジンがラインナップされている。動力性能面では1.6Lでも十分だけれど、より上質さを求めるなら走りにも"余裕"がある2.0Lのほうがより『STI Sport』らしさを手に入れることができそうな印象あり。それにサスペンションの仕様は共通であり全車AWDながら、2.0Lには可変トルク配分を電子制御で行うAWDが採用されているため、駆動配分のフレキシブルさが頼もしくも楽しくもあるのが魅力。また実はCVTの制御具合の違いが唯一の気になる点だったのだ。1.6Lはアクセルを踏み込んでいった際の2500-3000回転あたりの加速感とレスポンスに違和感があり、ドライバーの意図と走りの同調さに欠ける点があることは否めない。これが2.0Lのほうが低回転でもトルクが太くCVTとのチューニングというのかマッチングが現状ではより上手くいっていると言うべきだろう。「永遠のテーマ」と開発者の方もおっしゃっていたから、さらなる洗練を目指しているのは間違いない。

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この『STI Sport』はレヴォーグが第一弾として新グレードで登場しているけれど、今後も他モデルにラインナップしていきたいと言う。乗る人を選ばない性能のアップグレードは洗練と上質への架け橋。その橋の掛け方が各メーカーの考え方を体現する。発売後の反響ぶりから想像するに、ユーザーへの上手な橋渡しができているのではないか、と思う。



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