JAGUAR F-PACE
 こいつはそうとう魅力的なSUVだな。もしかしたら、今いちばん魅力的かも。いや、絶対にそうだ。ジャガー初のSUVであるF-PACEに乗って、お世辞抜きでそう思った。
 どこがそんなに魅力的なのか。それについては後々語っていくとして、まずはアウトラインから紹介していこう。

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 F-PACEはジャガー初のSUV。4輪駆動システムと215mmという余裕の地上高は、あらゆる天候や路面状況に対し常にタフな走破性を発揮する。広い後席と荷室を備えているのもメリットだ。いやその、SUVなら広い後席と荷室なんて当たり前だよ・・・と思うだろう。その通り。したがってF-PACEのキモは、SUVでありながらジャガーの走り、それもリアルスポーツであるF-TYPEの走りのエッセンスを注入したとメーカーが謳う高いスポーツ性にある。もしそれが現実なら、F-PACEはとてつもなく実用的なリアルスポーツということになるわけで、「走り」の評価なくしてF-PACEの評価は成り立たない。

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 事実、ジャガーはF-PACEを開発するにあたって、当時もっとも走りのいいSUVを開発目標に設定したという。具体的な車名も明らかにされていて、BMWのX4を超えることを目標に開発が進められていた。しかしその後ポルシェからマカンが投入され、その運動性能の高さに驚いたジャガーは目標を見直し、マカン超えを目指して走りを鍛え上げていった。

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 スリーサイズは全長×全幅×全高4740×1935×1665mm。マカンよりわずかに大きいが、まあほぼ同サイズと言ってもいいボディに搭載するエンジンは340ps/380psというパワー違いの3LV6ガソリンスーパーチャージャーと、新世代の2L直4ディーゼル。トランスミッションは全車8速ATとなる。

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 走りの報告へと話題を進めていく前に、まず褒めちぎっておきたいのがデザインだ。何がいいかって、ひと目でジャガーだとわかる強い個性がグッとくる。

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 いちばんアイコニックなのはF-TYPEとよく似たテールランプだが、ヘッドライトのグラフィックやセクシーなリアフェンダー周りの造形など、様々な部分にF-TYPEとの類似性が見つかるのはジャガーファンでなくとも嬉しい部分だろう。ちょっと優等生っぽいマカンと比べるとずっとセクシーだし、スポーティーだし、ワルな感じもある。それでいて、細かく観察しても奇をてらった「デザインのためのデザイン」がどこにもないのが、イアン・カラム率いるジャガーデザインの真骨頂だ。

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 写真を改めてご覧いただければおわかりいただけると思うが、「なぜここにこんなラインが入っているのだろう?」とか「なぜここが尖っているのだろう?」とか、そう感じさせる部分が一切ない。どこまでも自然でシンプルで純粋なデザインでありながら、美しさやセクシーさやスピード感をきちんと表現しているのが素晴らしい。デザイン要素が少ないのは没個性で、多ければ個性的になる・・・、最近のトヨタデザインが陥っている罠に対する強烈なアンチテーゼ。そんな見方すらできるのがF-PACEである。

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 インテリアはエクステリアと比べるとちょっと大人しい。プレミアムクラスとして眺めると、樹脂パーツやスイッチ類の質感はもうちょっと引き上げて欲しい。

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 とはいえ、それを補って余りあるほどの魅力を放つのがドライビングポジションを含めた着座感。SUVのなかでも最低地上高を大きめに確保しているため、絶対的なヒップポイントは決して低くはないのだが、シートに収まり、ブレーキペダルに足を載せ、ステアリングに指を絡めつつ前方を眺めたときの感覚はSUV離れしている。

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 スポーツカー的という表現はいささか誇張に過ぎるけれど、少なくともスポーツセダンに乗っているかのような印象は味わえる。シート、ステアリング、ペダルの位置関係、つまり「人間をどう座らせるか」という基本設計の部分において、F-PACEはきわめてスポーティーなのだ。

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 さらに、加えてラウンドしたダッシュボードのデザインが、視覚面でもキュッと引き締まった印象を醸しだす。全幅が1935mmもあるとはとうてい思えないタイトなコックピットがドライバーにもたらすのは・・・、これなら思い通りに操れそうだな、という自信だ。
 ドライビングポジションでもうひとつ特筆したいのが足元空間の広さ。ジャガーは英国車だから右ハンドルが基本。そのため他の左ハンドルベースのエンジン縦置き4WD右ハンドル車のように足元が窮屈じゃない。ここはマカンに対する大きなアドバンテージだ。

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 まずは20d Rスポーツに試乗した。1920mmのボディに対し最高出力は180psといささか頼りなく感じるが、最大トルクは430Nm。しかもそれを2500rpmで発生するため、発進は十分に力強いし、巡航状態からゆっくりアクセルを踏み込んでいったときの加速にも不満はない。最高出力ではなく最大トルクがモノをいう市街地では「速いなぁ」と感じるシーンが多い。

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 こうした特性は高速道路を巡航する際にもメリットをもたらしている。4Lエンジン級のトルクによってエンジン回転数を低く保つことができるため燃費がよく、なおかつもともと静かなエンジンであることも手伝って、巡航中はエンジン音がほとんど聞こえないほど。トルクに余裕があるから、前を走るクルマとの車間距離コントロールもしやすい。ただし、上までガンガン回すような走り方では180psなりの動力性能しか期待できない。

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 トップエンドの伸びやガツンとくるパンチ力を期待するなら、価格は120万円以上高くなるものの、やはり3LV6スーパーチャージャーに注目だ。もっともホットかつ高価な「S」にはハイチューン版(380ps/450Nm)が積まれるが、残念ながらこいつには試乗できていない。

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 しかし、340ps/450Nm版を積む35t Rスポーツでも十分に刺激的だった。最大トルクはディーゼルとさして変わらないが、太いトルクを保ったままより高回転まで回るため、仕事量=出力はほぼ2倍。実際にドライブしてみても、ディーゼルが4000rpmを超えたあたりで伸びが鈍るのに対し、6000rpmを超えてもなお力感は失われず、気持ちのいいサウンドを響かせながら伸びる伸びる!

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 スポーティネスとは無縁なSUVであればディーゼルがオススメと断言するが、F-PACEはF-TYPEの血統をもつ当代きってのスポーツSUV。そんなキャラクターによりマッチするのは3LV6スーパーチャージャーだし、V6ならではの上質な回転フィールもF-PACEのプレミアム性をより引き立たせる。とか言いつつ、自分で買うとしたら価格もランニングコストも安く付くディーゼルを選んでしまうかもしれない。そのぐらい、このディーゼルもよく走る。

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 しかし、F-PACEの魅力の原泉はエンジンではなくフットワークに宿っている。このスポーティーで正確でしなやかで自由自在に操れる痛快無比なフットワークと比べれば、エンジンは3LV6スーパーチャージャーをもってしても相対的に薄味と思えてしまう。そのぐらい、F-PACEのフットワークは僕に強烈な印象を残した。

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 足回りのセッティングはさほど固くはない。スプリングとダンパーを固めて動きを抑え込むのではなく、むしろしなやかに動かすことで上質な乗り心地と荒れた路面での接地性向上を狙ったセッティングだ。重くて重心が高いSUVにソフト方向の足回りを与えたとなれば、当然ながらロールは比較的大きめにでる。高速域で強引にキュッとステアリングを切り込むような操作をすると、ステアリングレスポンスがSUVとしては高めなことも手伝ってグラッという速めのロールが発生し、早期にスタビリティコントロールが作動して姿勢の乱れを抑え込もうとする。試していないが、高速ダブルレーンチェンジはさすがにスポーツカー並みとはいかなそうだ。

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 しかし、ワインディングロードでの走りはパーフェクトだった。ステアリングのレスポンスは高い。しかし切り始めの指1本ぐらいから見事なまでに正確かつスムースにノーズが反応するため、クイックさがナーバスさにつながっていない。しかもステアリングからは常に豊富な情報が伝わってくるから、下りの高速コーナーのような、繊細なステアリング操作が要求される場面でも一筆書きのようなスムースなラインが簡単に決まる。

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 きついカーブやS字の切り返しも、操舵速度と操舵量を増してやるだけでスパッと気持ちよくクリアするし、後半部が回り込んでいるようなコーナーでも、ステアリングを切り増すことでノーズがグイグイ入っていく。この、ドライバーの意思にどこまでも忠実な感じはちょっとスゴい。F-PACEでワインディングロードを走ったら、SUV離れしたハンドリングが生みだす爽快感とともに、自分の運転が上手くなったような感覚を満喫できること請け合いだ。

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 こうした特性には、50:50に近い前後重量配分や、ドライ路面では後輪にほとんどの駆動力を配分する電子制御式4WDなどが貢献しているが、それらを生かすも殺すもセッティング次第。SUVトップの運動性能を与えるという高い志と、長年にわたってスポーツカーやスポーツサルーンを作り続けてきた職人による入念なセットアップが、F-PACEに奇跡的な走りを与えた原動力である。

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 それでいて、前述したように乗り心地も抜群にいい。うねりに対する姿勢制御も上手だし、尖ったショックの抑え込みもよくできている。ハンドリングはマカンと同等、快適性はF-PACEが一歩リードというのが正当な評価だろう。ただし20万円のオプションであるアダプティブダイナミクス(電子制御可変式ダンパー)は必須アイテムだと報告しておく。

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 見て美しく、実用的で、なおかつ走らせても素晴らしい。F-PACEは究極のオールラウンダーだ。愛車として迎えて困ることがあるとすれば、1900を超える全幅による駐車場や狭い道でのネガぐらいなものだろう。

■ジャガー 公式サイト
http://www.jaguar.co.jp/index.html