水素燃料電池の自動車代替燃料の解決策として有望視されているが、生産から保管までのインフラ整備に課題が多く、今のところ主流になれずにいる。しかし、日産が固体酸化物型燃料電池(SOFC)の技術を推進すれば、この構図は変わるかもしれない。

日産は8月4日、同社初となるSOFC搭載車のプロトタイプをブラジルで公開した。このバンは24kWhバッテリーと水素燃料電池を搭載しているが、補給するのは水素ではない。代わりに使うのはバイオエタノールで、改質器を通って燃料電池を発電させるための水素を発生する。この技術は、以前から日産が取り組んできたとはいえ、実は特に目新しいものではない。過去にSOFCの技術研究をしていたメーカーは他にもある。しかし、この「e-NV200」をベースに製作されたバンは、実際にSOFCできちんと走行可能な世界初の例となる1台だ。日産によると、このプロトタイプは600km以上の航続距離を実現するという。

日産が「e-Bio Fuel-Cell」と呼ぶこの技術の長所は、水素燃料電池自動車を走行させるために、水素ステーションなどの完全なインフラ整備をする必要がない点だ。SOFCを搭載したクルマは、バイオエタノールの供給ができるガソリン・スタンドならどこでも補給可能。それどころか、100%エタノールである必要もないのだ。燃料はエタノール混合水でも構わないそうで、ルノー・日産アライアンスの会長兼CEOを務めるカルロス・ゴーン氏によれば、「(エタノール混合水は)他の燃料に比べて扱いやすく手に入りやすい」とのこと。逆に短所は、改質器が二酸化炭素(CO2)を発生してしまう点だ。しかし、発生したCO2は、バイオエタノールの原料となる植物(トウモロコシ、大豆、サトウキビ)が成長過程で吸収するCO2で相殺されると、同社は主張する。もちろん、エタノールの製造自体が環境に優しいかどうかという一連の疑問を伴うが、水素で駆動するクルマをより身近なものにすることは間違いない。

日産のFCV(燃料電池自動車)開発部部長である坂幸真氏は、2020年をめどに同技術の実用化を目指したいと下の動画で語っている。日産は、この技術を採用する予定のクルマやそれらの販売先を明らかにしなかったが、エタノールの供給インフラ環境が整っていることを考えると、米国やブラジルが最有力候補だろう。




By Joel Stocksdale
翻訳:日本映像翻訳アカデミー