24 heures du Mans 2016
劇的なフィナーレ。そうとしか言いようのない結末だった。サーキットに居たすべての人が、茫然としていた。ネットで、テレビで、その他の場所で応援していた人も、間違いなくそうだったと思う。

24 heures du Mans 2016 24 heures du Mans 2016
2016年のル・マン24時間レース、決勝。予選3位から飛び出し、序盤から快調に飛ばしたトヨタ5号車は、残り周回、あと1周とちょっと。23時間55分経過の時点までは、初の総合優勝がもう目の前だった。敵味方、観客の誰もがそれを信じていた。しかし次の瞬間、モニターに映し出されたのは速度が上がらない5号車。どんどん失速していき、メインストレートで遂に車両を停止させる。

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2位を追いかけていたポルシェ2号車が、その脇をすり抜けて首位に立ち、ファイナルラップへと突入していく。スタートからずっと、時に数秒というスプリントレースのような僅差で戦ってきたポルシェ陣営。当惑と、信じられないという思いが入りまじった微妙な雰囲気のポルシェのピットだが、2号車はその後も快調に飛ばし、トップでフィニッシュ。見事、栄冠を手にしたのだった。

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一方のトヨタ5号車は、再度のろのろと走り出すが、もはやマシンに力は無く、ルールに規定された最終ラップは6分以内で周回しなければならないという規定を守れなかった。結果、5号車は周回数では2位でも、無情にも失格という結果に終わる。モニターに映し出されたトヨタのピット。首脳陣の顔には、もはや表情はない。

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トヨタはもう1台の6号車が2位に入り、何とか面目を保った。しかしながら、6号車はこの日の朝、小林可夢偉選手が5号車に続く2位を走行中にコースアウト。遅れた上にアンダーフロアを損傷し、その修復にも時間を要して3周遅れの3位に落ちていた。もしも、もしも6号車が順調に走っていれば、5号車が失速しても6号車がトップチェッカーを受けられていた可能性は高い。それを解っているからか、表彰台でも3人の顔には歓びはあまり見られなかった。

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いや、彼らだけじゃない。3位のアウディ8号車は、今年はまったく勝負に加わることができず、トップから実に12周遅れた後方を走っていただけだった。表彰台に相応しいのは自分たちではないと、一時は登壇を固辞したとも言われている。頂点を舞台に真剣に戦っている者同士の敬意が、そこにはあったのだろう。

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総合優勝のポルシェにしても、そう。昨年の優勝の時にはあれだけ熱狂したプレス向けのホスピタリティも、嬉しいけれど、でも......という微妙な空気が流れていたのは事実だ。

表彰式直前のグランドスタンドだって同じだ。単なる熱狂ではない、ザワザワとした空気は、ここ数年のル・マン詣ででも初めて味わったものだった。この感覚は、ちょっと忘れられそうにない。

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トヨタ5号車のトラブルの原因は、ターボチャージャーの制御系だという。今年のトヨタ、実は昨年の惨敗もあり、また今年は自然吸気に不利な高地メキシコでのレース行なわれることも鑑みて、来年用に準備していたターボエンジンを前倒しで採用してきた。ハードウェアは間に合った。いや、間に合ったように見えたが、ソフト含めて、やはり完全な状態までには至っていなかったのだろうか...。

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今年のWECは開幕から過酷な戦いが続いており、LMP1-Hで戦う3メーカー、トヨタ、アウディ、ポルシェはいずれもトラブルの多発に手を焼いていた。3社、使っているテクノロジーはまったく別でも、タイムは拮抗していて、それがギリギリの開発競争に繋がっている。

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一方で、レースに勝つには余計なマジックなんて要らない。やるべきことを確実にこなすのみだ。レースの大半をリードし、実際にコースサイドで見ていても、走りのキレの良さはピカイチだったトヨタだが、結局のところは、まだ道半ばだったということだろう。けれど、2014年には明け方まで首位だったのが、今年はフィニッシュ直前まで来たんだと前向きに考えたい。ましてや2015年の惨敗ぶりを考えれば、よくぞここまでとも思う。だからこそ、ここからが勝負なのだ。

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但し、トヨタが勝つためには、今年足りなかったものを、しっかり埋め合わせてくる必要があるのも確かだろう。偉そうなことは言えないが、現場に居て感じたのは、どれだけ会社が一体となって取り組んでいるのだろうかということだった。アウディもポルシェも首脳陣が勢揃いして、戦況を見守り、そして勝てば歓び、負ければ一緒に顔を真っ赤にして悔しがっている。ル・マンはその価値があるレースなのである。

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そんな風に戦っているアウディやポルシェのようなブランドと、がっぷり四つになって戦うシビレる状況を、トヨタのすべての人達に、もっと自分事として味わってほしい。現場に居て正直、感じたのはそんなことだ。彼らとまさに死闘を尽くし、負けた。その悔しさを身を以て味わったとしたら、それは本気の、勝利への渇望へと繋がるはずだから。

レース終了後、トヨタは豊田章男社長のコメントを発表した。その中の一節を引用する。
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『我々、TOYOTA GAZOO Racingは"負け嫌い"です。負けることを知らずに戦うのでなく、本当の"負け"を味わわせてもらった我々は、来年もまた、世界耐久選手権という戦いに、そして、このルマン24時間という戦いに戻ってまいります。』

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いいじゃない。実は、すでにマシンの開発は始まっているという。現場は間違いなく本気なのだ。あとは執念を持って、プッシュし続けるしかない。しかし、そうすれば必ずや扉が開くはずである。

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ポルシェは今回の勝利で、総合優勝の回数を18回へと伸ばした。「もう、そんなに勝ったんだから、いいんじゃない?」なんて考えは、彼らには無い。何度勝とうが、次の勝負に全精力を注ぎ込んで挑んでくる。ル・マンの女神は、ここまでやって初めて微笑むのだろうか。

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とにかく、あらゆる意味で凄まじいレースが終わった。我々は間違いなく、これから何十年にも渡って語り継がれていくであろう歴史的瞬間の、目撃者となったのである。

■TOYOTA GAZOO Racing 公式サイト
http://toyotagazooracing.com
■ポルシェジャパン 公式サイト
http://www.porsche.com/japan/jp/
■Audi Japan 公式サイト
http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja.html