80年代を感じさせる希少なフォード「マスタング ASC マクラーレン」がeBayに出品中
この風変わりなコンバーチブルが「フォード マスタング マクラーレン」と広告に出ていても、販売店を責めることはできないだろう。この名前の方が、「フォード マスタング ASC マクラーレン」よりも自然に発音しやすいし、断然魅力的に聞こえるからだ。しかしながら、この「ASC」が付いていないと、このクルマの正体は掴めない。とりわけ1980年代には多かった、奇妙な自動車業界のコラボレーションから誕生したクルマなら、その正体を知りたいと思うのではないだろうか?

「ASC マクラーレン マスタング」は、まさに偶然のタイミングから生まれたもので、旧アメリカン・サンルーフ・コーポレーション(現アメリカン・スペシャリティ・カーズ:ASC)とマクラーレン(あのマクラーレンではない)の間ですでに進行中のプロジェクトだった。デトロイトのカスタムカーのビルダー、ピーター・マスキャット氏は、"フォックス・ボディ" マスタング(87~93年型のマスタング)のルーフを自ら切り取った後、トノーカバー付きマスタングを製作するアイデアをASCに持ち込み、そしてASCの創始者であるハインツ・プレッチャーがそのコンセプトをフォードに持っていったのだ。

フォードでは、10年間ラインナップから外れていたマスタング・コンバーチブルに再び取り掛かっていた最中だったため、まずはマスタングの兄弟車であるマーキュリー「カプリ」がASC/マクラーレンのカスタマイズを受けることになった。結果として「マスタングGT」よりも高価になってしまったことや、カプリ全体のセールスが落ち込んだため、同車は1986年に生産停止となってしまう。しかし、このことが今回eBayに出品されている、ASC マクラーレン マスタング誕生の道を切り開いたのだ。



1987年にマスタングのプラットフォームが改良を受けたため、ASC/マクラーレンは、注目に値するものを造り上げる機会を得た。カプリのカスタマイズにもその価値はあったが、マスタングの名前はより象徴的な地位をもたらした。では、ASC/マクラーレンは、自動車の歴史に足跡を残すチャンスをどのように物にしたのだろうか?

まず、見た目を重視してインテリアとエクステリアの両方に改造を施すことにした。カプリと同様、パワートレインには一切手を加えていない。しかし、これまたカプリと同じく、2万ドル(約210万円)以上の生産コストが掛かってしまった。価格が高くなったのに対し、当時80年代後半は米国の経済状況が振るわず、マスキャット氏とプレッチャー氏の間で衝突も見られたため、ASC マクラーレン マスタングは1990年に生産中止となる。



4年間の製造期間中にASC/マクラーレンが改造したマスタングはわずか1,806台。この出品車両のように走行距離が少ない個体は特に貴重だ。5.0リッターV8は頑丈なエンジンとして知られており、大掛かりなチューニングや過大な走行距離にも耐えられる。入札を迷うような問題点にはならない。すべてのマスタングGTモデルに採用されたボルグワーナー製5速トランスミッションもまた耐久性が高く、87~90年モデルは特に優れている。

主な不安要素と言えば、この車両の素性だろう。どのような扱いを受けてきたのか、どこで使用されていたのか、その経歴が懸念される点だ。クルマの下回りには明らかに錆が見られる。このクルマ、あるいは現存するASC マクラーレン マスタングに強い関心のある人なら、専門的な目で精査するのは当然だろう。この改造を受けたクルマはリアクォーターパネルやトランク周りが錆びやすいので、特にその辺りに目を凝らす必要がある。

運転席側ドアミラー周辺に見られるボディのへこみなど、エクステリアには修理を必要とする個所があるとはいえ、全体的に良いコンディションに思われる。現在の提示価格は7,999ドル(約85万円)。80年代の自動車の歴史に名を残す、この個性的モデルを格安で手に入れる絶好の機会と言える。極め付けとして、同時代の「COBRA 18-RV」CB ラジオが搭載されている。これでトラック運転手と交信でき、排ガスで目の前が曇るほど混み合った道を通らずに済むだろう。

注:この記事は『BOLDRIDE』に掲載されたAndrew T. Maness記者による記事を転載したもの。

By Boldride
翻訳:日本映像翻訳アカデミー