ダイハツは13日、「人の働きやすさ」を中心に考えたという新ジャンルの軽商用車「ハイゼット キャディー」を発表。同日より発売した。従来の軽商用車とは異なるFFレイアウトを採用し、荷物の積載量よりも静粛性や運転のしやすさ、運転空間のゆとりを重視したという。

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ダイハツ軽商用車伝統の「ハイゼット」という名前が付いているが、ボディはご覧の通り、「ウェイク」にそっくり。つまり、ウェイクを商用に仕立てたモデルと思えば間違いないだろう。商用車としてみれば、車体後部に重い荷物を載せて走るために後輪駆動を採用するトラディショナルな「ハイゼット カーゴ」と異なり、乗用軽ミニバンと同じ前輪駆動レイアウトを採用する点が最大の特徴だ(これをベースにした4輪駆動もあり)。トランスミッションもお馴染みのCVTのみの設定となる。横向きのパワートレインが車体前方にコンパクトに収まるため、縦置きエンジンの上に座るハイゼット カーゴと比べると、乗員フロアは71mm低く、シートの座面も25mm低い。つまり乗り降りしやすい。荷室フロアも40mm低いので荷物の積み卸しも楽。運転席周りのスペースもゆとりがあり、ステアリングの角度も"軽トラ"のように寝ていないので、乗用車感覚で運転できる。足回りも乗用車ベースだから、乗り心地や操縦安定性が従来の商用車より優れている。リア・サスペンションも「ムーヴ」等と同じトーションビーム式となるが(4輪駆動車は3リンク式)、コイルスプリングのばね定数やショックアブソーバーの減衰力特性は商用車に求められる耐久性を確保するために最適化されているという。標準のタイヤはムーヴと同じ155/65R14。オプションでアルミホイールも用意されている。




以上のようなメリットと相反して、最大積載量は150kgとハイゼット カーゴの200~350kgを大幅に下回る。荷室の長さもハイゼット カーゴより550mmも短く1,310mmしかない。ただし、全高は1,850mmとウェイクよりさらに15mmも高いため(もっとも最低地上高も10mm高い)、荷室の高さはハイルーフのハイゼット カーゴと同等の1,235mmを確保。さらに助手席後方や荷室後方のデッキボードを外して「アンダートランク」と呼ばれるスペースを活用すれば、最大1,485mm(前輪駆動車)まで拡大できるので、観葉植物の鉢植えなど背の高い荷物を立てたまま積むことができる。なお、ハイゼット キャディーは後部座席を持たない2人乗りのみの設定となる。4人で乗るならウェイクを買ってくださいということだ。



ダイハツでは商用車ユーザーにヒアリングした結果、従来よりも働く現場に女性やシニア層が増えたこともあり、荷物の積載量よりも室内の静かさや運転しやすさを求める傾向が高まっていることが分かったという。そこで、これまでのような「1mmでも荷室を広く」する設計から「人の働きやすさ」中心の考えに発想を転換。そうして生まれたのが、乗用車をベースにした商用車、ハイゼット キャディーだ。ウェイクの売り上げが思ったほど伸びないので、商用バージョンも用意して開発費の償却に努めたい考え...かどうかは定かではない。



安全機能についても、ウェイクやムーヴなど乗用モデル譲りのレーザーレーダーとカメラを併用する衝突回避支援システム「スマートアシストII」を一部グレードに標準装備。ABSや横滑り防止機能(VSC)、トラクション・コントロール(TRC)も全車に標準で搭載されている。商用車にもやはり先進安全装備を求める声は多いらしい。「働く人の安全も考えて、ということですね」とダイハツの方に言ったら、「それももちろんそうなんですけど、例えば家庭で奥さんが乗っていたら、バンパーをちょっとこすってもまあいいかとそのまま乗っている方もいらっしゃいますよね。でも企業の名前を入れて走るクルマは、そういうわけにはいきません。キズ付いたままのクルマを使っていたらイメージ・ダウンにつながりますから。じゃあ車両保険で直さなきゃとなると、企業の自動車保険はフリート契約ですから、例えば100台のうち月に1〜2台直すとしても、次の年に全体の保険料が上がちゃう。それを考えたら、車両価格が少し高くても、"ぶつけない"機能が付いているクルマの方が結果的に経費が安く上がることもある」そうだ。なるほど。




エンジンはスペックも含めウェイクやムーヴと共通。最高出力52ps/6,600rpmと最大トルク6.1kgm/5,200rpmを発生する658cc自然吸気直列3気筒と、これにインタークーラー付きターボチャージャーを備えることで最高出力64ps/6,400rpm、最大トルク9.4kgm/3,200rpmを発揮する高性能版の2種類が用意される。CVTのギア比は自然吸気用の前輪駆動モデルのみウェイクより最終減速比が低められている。

後部座席がないこともあり、車両重量はウェイクより20~40kgほど軽いが、JC08モード燃費は25.0km/L(自然吸気2WD)から21.8km/L(ターボ4WD)と、ウェイクよりやや劣る。ダイハツの方に訊いたところ、燃費競争が激しい乗用車のウェイクには付いている空力パーツが、ハイゼット キャディーでは省略されているそうだ。全高も高いため、空気抵抗係数がウェイクより大きい思われる。自然吸気FF車では前述のようにギア比が違うというのも、理由の1つに数えられる。CVTやエンジンを制御するソフトウェアはウェイクと共通だそうだ。



商用でもそれほど重い荷物を載せない業種、例えば酒屋さんや製本屋さんではなく、お花屋さんや洋服屋さんなら、これまでの軽トラベースの商用車よりこちらを選ぶメリットは大きく、デメリットは少ないだろう。女性ユーザーの心を掴む商用車としてブレークする可能性を秘めている。しかし、それならもっと彼女たちの目を意識して、例えば「ミラココア」のように丸目にするとか、樹脂製のフロントマスクを変更することでウェイクより親しみやすいデザインにすることは考えなかったのだろうか、とダイハツの方にお訊きしたところ、「もちろん、物理的には可能ですが、ウェイクと違う型を起こすと当然コストが上がります。商用車はプロの道具ですから、機能性に直結したところでコストが上がるのは許容されても、単なる見た目のためにコストを掛けるのは受け入れられない。その分、価格を下げてくれよってなっちゃう」とのお返事。エクステリアに関しては、ウェイクはテールランプが全車LEDだが、ハイゼット キャディーではバルブを使うパーツを新たに製作したという。もちろん、その方が総合的に安くなるから。内装ではシートの形状がウェイクとは異なる。助手席を倒せばテーブルになったり(オプション)、助手席後方のフロア下に収納スペースが備わるのも、ハイゼット キャディーならではの特長だ。



ボディ・カラーは標準の白以外にもオプションの「カラーパック」として5色から選べる。他にも働く人々からの声に応えた多くの実用的なオプションが用意されている。

価格は電動ミラーやオーディオ、ホイールキャップなどの装備を省略した「D」が118万8,000円から、ターボ・モデル「X」のスマートアシストII付き4輪駆動の154万4,400円まで。当然ながらウェイクよりちょっと安めだが、ハイゼット カーゴよりはだいぶ高い。



この日の発表会には、働く女性の代表としてタレントそして今や民間議員でもある菊池桃子さんが登場。そして開発に協力した5つの企業の現場で実際に使われているハイゼット キャディーと共に、それを使用されている従業員の方々もいらっしゃった。皆さん「乗りやすい」「使いやすい」と気に入っているご様子。(ひょっとしたらウェイク以上に)街で見掛けることも、きっと多くなるに違いない。早速気になった方は以下のURLから公式サイトをご覧いただきたい。


ダイハツ 公式サイト:ハイゼット キャディー
http://www.daihatsu.co.jp/lineup/caddie/index.htm