米国運輸省道路交通安全局が、ついにリアシートに衝突テスト用ダミー人形を設置
米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、2019年から衝突テスト時に後部座席用のダミー人形を設置するという。それにしても、なぜリアシートにダミー人形の設置するまで、これほど時間が掛かったのか。

米金融情報サービスメディア『Bloomberg』によれば、NHTSAは1978年から5つ星の評価を使い始めたが、その評価はフロントの2座席のみの安全性に対するものだった。フィラデルフィア小児病院傷害予防管理センターのエンジニアリング・ディレクター、クリスティ・アーボガスト氏は、このようなテスト方針のせいで、飛躍的に改善しているフロントシートの安全性にリアシートが追い付いていないという。「5つ星の評価はすべての座席に当てはまると理解してしまう人も多いだろうが、実際は違う」と、アーボガスト氏は同メディアに語っている。

リアシートの安全性を向上させるためには、比較的単純な変更で済むものもあり、その一例として、衝突時に自動的にベルトを引き込むプリテンショナー付シートベルトの採用が挙げられる。他にも、例えばリアシートの乗員のためにフロントエアバッグを追加するなどの手段が考えられるが、これにはもう少し面倒な変更が必要となるだろう。

一方で、リアシートの乗員の前に設置された頑丈なフロントシートが障害物になっているという問題もある。フロントシートの中には、後ろからの衝突時にフロントシートの乗員を保護するため、衝撃を吸収・分散できるようにあえて壊れるように設計されているものがあるが、これがリアシートの乗員にとって危険となるのだ。『Bloomberg』は2010年に発生した16歳の少女の死亡事故について触れており、この事故では後ろからの衝突により壊れたフロントシートが少女の頭部を直撃した。NHTSAは、衝突時に頑丈なシートでフロントシートの乗員を保護すると同時にリアシートの乗員も保護できる方法を模索している。

自動車安全センター(CAS)の事務局長、クラレンス・ディトロウ氏は『Bloomberg』に対し、米国の衝突事故のデータベースに、フロントシートの破壊に伴うリアシートの乗員の死傷事故という分類がないことが一因だと述べている。なお、今年3月に米国版Autoblogでは、1990年から2014年の間に、後方からの衝突事故でリアシートに座っていた約900人の子供が亡くなったというCASの調査を報じている。

これは驚くような数字だが、アメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)の役員を務めるベラ・ディンザール氏によれば、リアシートにダミー人形が設置されることになったのはオンデマンド配車サービス「Uber」や「Lyft」の普及によるものだという。とはいえ、この2つのサービスの利用者数が増加したというだけでは、数十年前に採用すべきだったテストを今頃になって開始する理由としては弱い気もする。新しいテスト方法について、NHTSAに問い合わせたところ、広報担当のカレン・アルダナ氏から早速、以下のような回答が得られた。

「今日の自動車は以前よりも軽く、コンパクトになっていることから、NHTSAは5つ星評価による衝突試験プログラムのもとで、リアシートの乗員の安全性についても向上を促したいと考えている。2015年12月にパブリックコメントを募集した変更案には、前面衝突試験で初めて、リアシートにダミー人形を設置することを盛り込んだ。現行のプログラムでは側面衝突試験でリアシートにダミー人形を設置しているが、2019年モデルイヤー以降は2ドア車や4人乗りクーペを含む全ての自動車で、(フルラップ前面衝突試験でもリアシートにダミー人形を)設置する予定だ。これは、NHTSAが検討している様々な変更の1つである」


By Brandon Turkus
翻訳:日本映像翻訳アカデミー