米国を代表する3台のスポーツカーがIIHSの衝突試験で低評価、甚大な身体的被害の可能性も
カーエンスージアストは、のんびり走るためにスポーツカーを購入するのではない。だが、そのスピード性能と大胆不敵なパフォーマンスに魅了されると、つい速度を上げて無茶なドライビングをしてしまいがちになるし、また高性能なスポーツカーにはもしもの際にも確実に身を守ってくれる高い安全性も備わっていると思っているのではないだろうか。

しかし、米国IIHS(道路安全保険協会)が示した最新の衝突試験結果によると、どうやらすべてのスポーツカーにそれが当てはまるというわけではなさそうだ。IIHSは業界の中でも最も厳格な衝突試験を行っており、最近では米国の最も象徴的なスポーツクーペ3台で初めて耐衝突性能試験を行ったところ、3台とも安全性評価が認定基準に達していないことが判明した。

対象となったのはフォード「マスタング」シボレー「カマロ」ダッジ「チャレンジャー」で、いずれもIIHSが認定する最高評価の「トップセーフティピック+」はおろか、その下の「トップセーフティピック」にさえ及ばなかった。2016年モデルの中で他の65車種は既にどちらかの評価認定を受けている。今月24日に公開された試験結果は、危険な走行をしがちなドライバーの安全に一石を投じるものとなった。

「この3台のスポーツカーは大パワーがあり、非常に速いスピードで走ることが可能だ。それゆえに、通常よりも高い速度で走行している状態から衝突事故を引き起こすことが多い。従って、優れた安全性を備えていることが理想的だが、残念ながら3台ともトップセーフティピックに達しなかった」とIIHS代表のエイドリアン・ランド氏は米国版Autoblogの取材に答えている。

このようなテスト結果から、高性能なスポーツカーは安全性も高いとは限らないということが分かるが、購入者にはその判断が難しい。米国消費者団体の自動車安全センター(CAS)が示す最新データによると、2016年モデルのうち全車種の99%は政府管理の下で試験が行われ、4つ~5つ星の評価を得ているという。しかし、IIHSが実施したマッスルカーの衝突試験では、全く異なる結果となった。

IIHSの「スモール・オーバーラップ衝突」試験では、電柱や木などの障害物に時速40マイル(約64km/h)でフロント部分の運転席側1/4が衝突した状況を再現している。その試験で、カマロが「good(優)」の評価を得ており、マスタングは「acceptable(良)」、チャレンジャーは「marginal(可)」だった。チャレンジャーに関しては、障害物が車体にかなりめり込んでいて、「ドライバーの生存空間が制限される」と試験官は報告している。下の資料写真を見て分かるように、ダミー人形の脚部は被害が甚大だ。これは「実際でも十分起こりうる状況」だという。



ダミー人形の左足が押しつぶされ、くるぶし部分は異常な方向に曲がっている。破損したチャレンジャーからダミー人形を運び出すには脚部を一度分解しなければならなかったという。これまでスモール・オーバーラップ衝突試験を何度も実施してきたが、そこまでの状況になったのは過去に5回だけだ。

「このようなクルマが道からそれて木や電柱などに衝突した場合、このスモール・オーバーラップ衝突試験と同じような状況になることはよくある。試験結果を重視するべきだ」とランド氏は言う。政府提供のデータによると、2014年に自損事故で亡くなった人の割合は43%にのぼる。



IIHSは全5項目の耐衝突性能試験(前面衝突、側面衝突、追突想定、スモール・オーバーラップ衝突、車両転覆)を3台それぞれに実施し、各車両の衝突保護機能を評価したところ、総評としてチャレンジャーが3台の中で最低だった。

マスタングはトップセーフティピックに最も近い記録だったと、ランド氏は言う。スモール・オーバーラップ衝突試験では十分な結果が出せなかったものの、ルーフの強度は3台の中で最も高かった。ルーフはスポーツカーにおいて特に重要な部分だ。というのも、車両転覆によるドライバーの致死率が最も高いからである。

その他の点で3台を比べると、マスタングとチャレンジャーはドライバーに衝突の危険性を警告する標準的な衝突警報システムが搭載されているが、カマロには衝突を事前に防止するようなシステムは備わっていないことが挙げられる。

「試験結果から判明したのは、スポーツカーは衝突予防システムにおいて、ファミリーカーより性能が劣っていることだ」とランド氏は述べている。

また、今回の試験結果によって、いわゆる"ビッグスリー"と呼ばれるデトロイトの自動車メーカーのさらなる弱点が露呈した。安全性能では他国のメーカーに差を付けられていることが分かったのだ。1月までに実施された2016年モデルのトップセーフティピック+獲得車で、トップ52にランクインした米国車は1台のみ。その優良車は、フィアッ ト・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が生産打ち切りを発表した「クライスラー200」である。これが米国車の中でトップセーフティピック+の評価を受けた唯一のモデルだった。

スポーツカーは市場における販売台数が少ないため、IIHSはスポーツカーの衝突試験を通常的には行っていない。 しかし、IIHSの関連団体であるHighway Loss Data Institute(HLDI)は、車両保険における自動車修理のデータから、乗用車の中でスポーツカーのドライバー死亡率が最も高いことを指摘している。今回試験を実施した3台はどれもV8エンジン搭載モデルだった。


By Pete Bigelow
翻訳:日本映像翻訳アカデミー