Related Gallery:Bridgestone POTENZA Racing Tyres for Nürburgring 24h Race

2007年からトヨタ GAZOO Racingと共にニュルブルクリンク24時間レースに参戦を続けているブリヂストンは、5月26日から29日に開催される今年のレースで初めて会場内にコミュニケーション・ブースを出展すると発表。同時にタイヤのサポート/サービス体制を強化することで、欧州のモータースポーツ・ファンに向けたアピールを強化していくという。

ブリヂストンのモータースポーツ活動における目的は大きく分けて次の5つ。技術開発の強化、従業員の育成、ブランディング、"走る楽しみ"の提供、そして社会への貢献。つまりは、「より良いタイヤづくり」と「楽しいクルマ社会づくり」のためであると同社は説明する。

まずは技術開発の強化。"スポーツカー開発の聖地"と呼ばれる1周約25kmのニュルブルクリンク北コースは、特に他のサーキットと比べて高低差とギャップが多いため、上下方向の荷重に耐えられる高いケース耐久性が求められる。さらにそこを昼夜通して走るとなれば、幅広い路面温度に対応する必要がある。また、スリックタイヤであってもコースの一部のみに雨が落ちている状況を走らなければならないことも多い。もちろん、耐久レースなので耐摩耗性や燃費に関わる面も重要だ。しかも過酷な長いレースでドライバーの疲労を低減するため、乗り心地や静粛性も疎かに出来ない。つまり、一般的な"スイート・スポット"が狭いレース用タイヤよりも、我々が日常的に使用する市販タイヤにもつながる性能・技術が必要になる。だからブリヂストンの方によれば、市販タイヤを開発するときに「どこをどうすればどんな性能が上がるか」という点でこの経験から培われる技術力が役立つそうだ。具体的にはコンパウンドに含まれる新素材、レースに対応するために考えられた新構造、そしてドライバーの運転技術を数値化する解析技術などが市販タイヤの開発にフィードバックされるそうである。

従業員の育成に関しては、「人を鍛える」ためにレースの現場に社員を参加させるトヨタ Gazoo Racingの理念とも一致する。参戦当初から関わっているブリヂストンの井出慶太氏によれば「いくらデータを積み上げても、何が起こるか分からないのがニュル」であり、「毎年新たなことが起こる」という。これに対処することがエンジニアの育成に繋がる。また、直接レースに関わる技術者だけでなく、社員全体にもレースへの関心を喚起し、一体感を醸成させるという効果があるそうだ。

ブランティングについては、1980年代のはじめから国内タイヤメーカーで初めてフェラーリやポルシェに純正装着されるタイヤとして、ニュルブルクリンクで開発を行ってきた「POTENZA」をはじめとするブリヂストンの高性能タイヤ・ブランドを欧州でアピールする機会と捉え、今年から会場にブースを構えて、製品やその歴史などの展示を行うという。日本ではクルマ好きなら知らない人はいないPOTENZAも、欧州ではそこまで認知度が高くないらしい。この欧州ユーザーに向けたアピールは、サーキットに訪れる20万人の観客だけでなく、全部で200台にも上るレース参加者たちも対象としているわけで、実際にトヨタと共に訪れたニュルで、他のチームからブリヂストンのレース用タイヤを供給して欲しいという申し出を受けたこともあるそうだ。

そんなモータースポーツ好き、クルマ好きの人達に「走る楽しみ」を提供するだけでなく、自動車メーカーの「良いクルマづくり」にも貢献したい、というのが4番目の目的。今年は初めてブリヂストン専用サービスゾーンを設置し、エントラントに向けたサービス体制も強化する。日本の社員とドイツの技術部隊が協働で出場車両のタイヤ技術サポートにあたるという。

そして5番目の目的としてブリヂストンは「社会貢献」を挙げている。レースで磨かれた技術からより良いタイヤを作ることが自動車メーカーの「良いクルマづくり」と「モビリティ社会」への貢献となり、また「世界最大の参加型モータースポーツ」であるニュルブルクリンク24時間レース参戦をはじめ、「走る楽しみ」を支えることでクルマ好きを増やすことが「楽しいクルマ社会づくり」につながるという考えだ。



今回の発表会ではニュルブルクリンク専用に開発されたレーシング・タイヤが報道陣に公開された。市販車ベースのトヨタ「C-HR」に装着されるこれらのタイヤは量産車向け市販タイヤ「RE11S」などをベースに開発されているという。ドライ・タイヤは、昼夜にわたる大幅な路面温度変化にも対応できるワイドレンジなコンパウンドが特徴。ウエット・タイヤは、ニュルという広大なコースの各箇所で異なる雨量、路面の水量においても安定したグリップを発揮するように設計されているという。どちらも高温かつ高入力に耐えうる骨格部材を使用し、耐久性が考慮されているため、通常のレース用タイヤより重い。"ニュル専用"と言っても、例えばもし、これを装着して日本のサーキットを走っても、ブリヂストンの担当者によれば「良い意味で、何も起こらない」そうである。もちろん、そのコースと環境にピンポイントで合わせたタイヤほど速いラップタイムは出ないが、「何の問題もなく安定して走れる」そうだ。逆に日本のレースで使われているタイヤをそのままニュルに持っていったら、危なくてとても走れないということになる。

今年のレースでは、トヨタ GAZOO Racingから、レクサスRC F」と「RC」、そしてトヨタC-HR」をベースとした3台のマシンが、ブリヂストンのタイヤを装着して24時間レースに参戦する。チーム・ドライバーの一人である大嶋和也選手によれば、このニュルブルクリンク北コースは「本当にすごいコース」で「本当に良いクルマじゃないと、怖くて走らせられない」という。タイヤも「レンジ(グリップを発揮できる路面温度帯)を外れたら本当に怖くて、そうなったらゆっくり走ればいいという問題じゃない」とのこと。気温が5度の明け方から20度になる日中まで「どちらでもグリップする」タイヤが求められる。また、ニュルでは「270km/hの高速から急に登りになる区間があって、そこですごく負担が掛かる」という、。ここでは「どこのとはいえないけれど(笑)、バーストするタイヤも多い」そうだ。これに対し、「(タイヤへの)要求は年々高まっている。それに応えるのが我々の使命であり、発奮材料」とブリヂストンの井出氏は言う。

10回という節目を迎える今回の挑戦で、トヨタとブリヂストンはどのような戦いを我々に見せてくれるのか。

トヨタ GAZOO Racingの公式サイトでは、5月28日21時30分から29日23時30分(日本時間)まで、今年も26時間にわたる生中継が行われる。我々が命を預けるタイヤやクルマづくりにもきっとつながる過酷な戦いを、インターネットを通じて見届けよう。


TOYOTA GAZOO Racing 「ニュルブルクリンクへの挑戦」
http://toyotagazooracing.com/jp/nurburgring/