ロータリー・エンジンのファンに悲報、マツダ「RX-VISION」は実現せず?
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退屈な空気が濃厚な現在の自動車界で、マツダは本道と言える多くの取り組みに挑んでいる。新開発の2.5リッター直列4気筒ガソリン・ターボを搭載した新型SUV「CX-9」はマツダらしい果敢な挑戦で、「マツダスピード」ファンにも大きな希望をもたらした。彼らは、このエンジンが愛すべき「マツダスピード3」(日本名:マツダスピードアクセラ)もしくは「マツダスピード6」に採用されるかもしれないと考えたのだ。可能性としては十分にあり得る話だが、確実にそうなるとは必ずしも言えない。

残念ながら、「RX-VISION」コンセプトは叶わぬ夢となりそうだ。ロータリー・エンジンという夢を途絶えさせなかったマツダは賢明だった。開発を続け、人々の心にその存在を留めさせた功績は大きい。褒めるべきところは褒めるべきだ。マツダはその経験値と忍耐強さで、ロータリー・エンジンが持つ厄介な問題点もいくつか解決している。我々は、RX-VISIONコンセプトに搭載されている(ことになっている)「SKYACTIV-R」エンジンの特許申請書類も目にしているし、その実現をほぼ確信していた。マツダも、ことあるごとに開発が進行中であることをアピールし、ロータリー・エンジン搭載のスポーツカーを製品化したいという思いの強さを示してきた。

そんなマツダの姿勢に、嘘はなかっただろう。だが、RX-VISIONはあくまでもコンセプトカーに過ぎない。ロータリー・エンジンの前に立ちはだかっているのは、排出ガスと燃費基準という厳しい現実だ。どちらも、現代のレシプロ・エンジンでさえ高価な部品なしで越えるには難しい壁である。念のためにお伝えしておくと、ロータリー・エンジンにとってCO2排出量と燃費の悪さは悩ましい短所なのだ。だからこそ、マツダは水素を燃料としたロータリー・エンジンに注目した。しかし、その道の先にはインフラ整備に関する問題が、気が遠くなるほど数多く待ち構えていた。これは困難の度合いで言えば、ガソリン燃料のロータリー・エンジンを、「SKYACTIV」エンジンと同レベルのクリーンなエンジンにすることに匹敵する。



こんなことを考えたのは、マツダのデザイン・ディレクターを務めるケヴィン・ライス氏が、先週末に行われたクラシックカーの祭典「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」で 『トップギア』の取材に対し、ロータリー・エンジンについて語った言葉を聞いたからだ。同氏は「我々はロータリー・エンジンの開発をまだ続けている。世界が新しいロータリー・エンジンを買う準備が整ったら、我々はすぐにでも販売するつもりだ」とコメントし、ファンに向けてロータリーの旗印をさかんに振って見せている。

この発言に励まされる人もいるかもしれないが、燃費と排出ガス規制の現実や市場でのマツダの立場を考えると、筆者には空虚な言葉にも聞こえる。「世界が新しいロータリー・エンジンを買う準備が整ったら」とは言い換えれば、「我々マツダがこのエンジン・レイアウトについて基本的な問題を解決し、製造して利益を得られると市場調査で明らかになれば、市販化も検討する」ということだろう。

そこには多くの仮定が存在するのだ。ひょっとしたらマツダは、クリーンな燃焼と効率性に優れた、製造コストも安いロータリー・エンジンのダイノテストを広島の施設で行い、次のオートショーにむけて「RX-9」の準備を進めているかもしれない。もしそうなら嬉しい限りだ。ロータリー・エンジンのサウンドほど、路上で聞ける楽しいものはあまりない。正直言って筆者はライス氏の言葉に希望を見いだせないが、マツダの熱烈なファンたちの興味をかきたてることは間違いないだろう。彼らの情熱によって「MX-5」(日本名:マツダ ロードスター)が影響を受けたり、新型「CX-9」に新たなファミリーが加わることがあるかもしれない。

マツダはこれからもロータリー・エンジンの開発を地道に続けるだろう。そして準備が整った時、我々は大歓迎して受け入れるはずだ。ロータリー・エンジンを積んだスポーツカーについて、率直な意見をフォーラムで述べたり、マツダに直接伝えたりしてみよう。だが、それが必ずしも開発の後押しになるとは限らない。筆者はあまり期待しない方がよいのではないかと思うのだ。


日本版編集部注:この記事は米国版Autoblogのシニア・エディターであるAlex Kiersteinが個人的な考えを述べたものです。日本版編集部の中にはこの悲観的な意見に賛同せず、マツダの挑戦が花開くことを信じて応援している者もいることを付け加えておきます。



By Alex Kierstein
翻訳:日本映像翻訳アカデミー