DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
軽自動車で走りの楽しさ対決!
 このキーワードから引っ張り出されたのは、スズキ・アルトとダイハツ・キャストの2台だ。アルトで"走り"といえば、15年振りに復活を果たした「ワークス」が出てくるかと思いきや、編集部が借り出した(駆り出した?)のは「ターボRS」。専用ギアレシオの5速MTを搭載し、細部を煮詰めたワークスモデルよりも、より一般的にスポーティな走りを満喫できる(であろう)RSの方が、キャストスポーツの相手として相応しいと判断したようである。わかる気もする......というか、シブい選択眼だなぁ。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
さて、まずはアルトターボRSから走らせてみる。
 久々に対面したそのボクシーでキッチュなスタイル。トールワゴンが主流の軽自動車界において、スズキがアルトをコンベンショナルなハッチバックとして小さくまとめたのは度胸一発の大英断。本当によくやったと思う。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 テレスコピック機能のない腕の余裕を合わせると、直立気味になるシートポジション。決してスポーツカー的ではないけれど、相手がアルトだと気持ちも"前のめり"にしてくれる。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 660ccの排気量から64psの最高出力と98Nmの最大トルクを発揮する直列3気筒DOHC 12バルブターボは、ひとこと快活。アクセルの踏み始めはターボパワーのトルクでスィーッと出足よく加速するものの、やっぱり楽しいのはアクセルを"ベカッ!"と踏みつけたときで、室内にはブルブル・ヴィーン! と小熊が唸るような可愛らしいサウンドが豪快に入ってくる。「オイラ、いつだってやる気だぜ!」って感じ。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 あぁ、コイツはうまいタコ焼きだ。小麦に薄口のダシをまぜた、フワフワのお上品なヤツじゃなくて、生地のしっかりとした、ガリの効いたヤツ。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 「AGS」(オートギアシフト)は、AT車のように何も考えず乗ると決して快適ではないが、走るのには楽しいトランスミッションだ。
 コツはあたかもクラッチ付きのMT車のように乗ること。AGSは5速MTをベースにシングルクラッチをクルマ側が自動で断続するシステムだから、クラッチが切られた瞬間にこちらもアクセルを抜き、自分の意志でピッチングを制御してやれば、スムーズに走ることができる。このクラッチレスな対話感は、キカイを操っているようでなかなか楽しい。
 こうした乗りこなしが面倒なら、トランスミッションはCVTの方がいい。しかしカタログ燃費領域重視のCVTは、加速とエンジン回転のシンクロ具合にやや欠ける。二軸式となるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)はスペース効率とコストの関係でムリだし...と考えると、MTが運転できなくてもコツさえつかめばMTライクな走りが楽しめるAGSは、非常に大切な存在だと思う。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 ステアリングのギア比はとりわけクイックではないと思うが、そのハンドリングは俊敏。ダンパーの縮み側がソフトだから、操舵に対してノーズがクイッ! と反応する。この初期特性が高速巡航での直進安定性を少し損なわせるが、長距離移動よりタウンユースの小気味よさや快適性に的を絞るなら、これもよしとできるか。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 ただこの特性は、狙ったモノではない。わずか670kgのボディに対してダンパーの減衰力を高めるには、より高いフリクション性能が必要になる。
 コストとのバランスを考えるとこうした部材の採用は難しいし、ただ減衰力を高めるだけでは乗り心地や走安性が悪くなる。アルトのフロントサスペンションはストラット。ダンパー軸が横力を受ける形式だから、この軽さで剛性の高いダンパーをスムーズに上下させるのがとても難しいのだ。だから結果的に、こうした味付けに落ち着いているのだと思う。
アルトがダブルウィッシュボーンだったらなぁ...なんて、思わず想像してしまう。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 しかしこの初期ロールをやり過ごして、グーッとハンドルを切ると、アルトはとっても大人びたコーナリングをしてくれる。サイド剛性にメリハリ感のある「POTENZA RE050A」地面に押しつけられて、路面と対話しているかのような手応えを示してくれるのだ。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 そのセッティングはリアの接地性を高めた安定型だが、この初期ロールの素早さと、ロール後の安定したグリップ感をミックスして運転すると、アルトターボRSはとってもスポーティに走る。
ヴィーン!なエンジンと小さくて身軽なボディと、良く曲がるサスペンション。どことなく懐かしい"昭和味"は、別にぶっ飛ばさなくても、街中でホットになれる。ほんと、コイツは和製フィアット・パンダだ。いやいや、これこそがスズキ・アルトなのである。

Related Gallery:DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 キャストスポーツは現代の本流、軽自動車の王道を行くトールボーイから較べると、やや背の低い"セミトール"ワゴンである。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 そのスリーサイズは全長が3395mm(±0mm)、全幅が1475mm(±0mm)でアルトと同じながら、全高は1600mmと、100mmほど背が高い。かたやホイルベースは2455mmでアルトよりも5mmだけ短い。また、車重はアルト ターボRSに対して180kg重たい、850kgとなっている。
 快適な室内空間を得るためにほどよく増やされたルーフ高。速く走るためというよりは、その重心移動を抑えるために足回りは鍛え上げられていて、それがそのまま乗り味となっている。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 稼ぎ頭であるムーブRSよりも固められた足周り、「コペンを目指した」といわれるスポーツ性能。ダンパーのロールスピードはアルトに較べスローで、ジワーッと車体の傾きを支えながらコーナリングして行く。ブレーキのタッチにもトゲがない。
 シートはスポーティというにはソフトだが、その分フワッと背中からお尻にかけて包み込んで、体全体をホールドしてくれる。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 装着タイヤはアルトRSと同じポテンザRE050A(サイズは165/50R16)。その乗り心地はやや固めで、遮音性の低い軽自動車(これはアルトも同様)だと路面からのロードノイズや小刻みなハーシュネスをそのまま受け入れる。だがそのおかげでハンドリングはしっかりとしており、狙ったラインをトレースできる。ややグリップと剛性がありすぎるけれど。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 トランスミッションはCVTだが、マニュアルモード時にはその段階を7段に切ることで、スポーティな走りを可能にしている。ステアリングにはパドルシフトが装着されているのも美点で、普段は燃費走行に特化するCVTに、メリハリを与えることができる。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 ここまで読んでもらってもわかる通り、キャストスポーツの乗り味は「スポーツ」というよりもGT(グランドツアラー)だ。軽自動車レベルの話ではあるが、そのスタビリティは非常に高く、乗り心地もしっとりどっしりしている。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 それだけに、直列3気筒ターボの吹け上がりはちょっとだけ惜しい。ターボの過給で低中速トルクは増やされているが、絶対的な排気量が小さく、またアルトよりも車重が重たいこともあって、瞬発力が求められる加速では、加速にはエンジンを常に高回転まで回す必要があり、そこにCVTの滑りのある加速感が加わると、やっぱりこれが軽自動車なのだと思わされてしまう。いやそれほど、軽自動車ばなれしているとも言えるのだが。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 またRE050Aの剛性やパターンノイズが、キャストの質感をやや下げてしまっている。タイヤはアルトも同じなのだが、リッターカーにも負けない走りの質感を狙うキャストにとっては、このゴロゴロ感や突き上げ感はより大げさに感じられる。なまじスポーツを名乗るならもっとキビキビとした運動性能を与えても良いし、GTを狙うならもっとしなやかさが欲しいのだ。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 もっとも軽自動車規格でスポーティな走りをしたい場合、タイヤにその選択肢が少ないのも事実。燃費も欲しい、走りもよくしたいという欲張りなメーカーの主張(ともすれば我々の要求)に、まだ総括的にタイヤが応え切れていない状況にある。軽自動車の進化と、突発的に跳ね上がったその需要に対してインフラが整えば、正真正銘の国民車になれるはずである。

DAIHATSU CAST SPORT VS SUZUKI ALTO RS
 元気ハツラツなアルトターボRSに較べると、キャストスポーツはちょっとだけ大人びている。その乗り心地、静粛性、ダイハツの軽はしっかりしてるなぁ...と思わせる。
 だがスポーティ度合いでは、アルトターボRSの方が断然わかりやすい。スタビリティの高さをスポーツとして受け入れられるならキャストスポーツを、とびっきりの軽快感が欲しいならアルトターボRSを選ぶのがよいと筆者は思う。

■【動画】スポーティな走りが楽しめる CAST SPORT:飯田裕子
http://jp.autoblog.com/2016/03/01/pr-daihatsu-cast-sport/​



■スズキ次世代テクノロジー AGS

■ダイハツ工業 公式サイト
https://www.daihatsu.co.jp/lineup/cast_sport/index.htm
■スズキ 公式サイト
http://www.suzuki.co.jp/car/alto_turbo_rs/