フェラーリはフロントに6.3リッターのV型12気筒エンジンを搭載する4輪駆動のシューティングブレイク、「FF」(フェラーリ・フォー)を5年降りにビッグマイナーチェンジ。その名も「GTC4 ルッソ」と改めた。この名前は、1960年代に登場したフェラーリの最上級モデル、250GTルッソや330GTCにルーツを置いており、より細かくなったフロントグリルのホリゾンタルバーや、フロントフェンダーのエアアウトレットがこれになぞらえられたが、かつての名車とGTC4ルッソを外観で結びつけるものはさほど多くない。


 つまりフェラーリとしては、フロントにV型12気筒エンジンを搭載する最もラグジュアリーな4シーターモデルということを強調したかったのだろう。なぜならルッソというイタリア語は、ド直球に『贅沢』を意味するのだから。

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 その核となるV12エンジンは、488GTBのようなダウンサイジングターボではなく、麗しのNAエンジンに磨きをかけた点が素晴らしい。すでにそのスペックは知れ渡っている所だが一応おさらいしておくと、6,262ccの排気量から690ps/8,000rpmの最高出力(FFに対して30psアップ)と、697Nm/5,750rpm(同じく+14Nm)の最大トルクが発揮される。
 しかし語るべきはマイナーチェンジお決まりの出力向上よりも、フェラーリがこの4WDモデルに対して後輪操舵システム「4RM Evo」を採用したことだ。



 筆者は幸運にもスタッドレスタイヤを履かせたウインターテストでFFを走らせたことがある。このときでさえ、660psのパワーが炸裂する緊張感に対してFFは見事なスタビリティを発揮していたが、いざその操作性の良さに慣れてくると、初の4WDシステムにやや慎重なフェラーリの姿勢を見ていたのも事実だった。つまりスタビリティシステムをオフにしたときの4輪制御特性が、思いの外アンダーステア基調だったのである。
 もしこれを最新のサイドスリップコントロールがよりニュートラルステア方向にしていたとしたら(かつ安全に!)、それは嬉しい限りだ。ちなみに最上級の乗り心地と共に確かな安定性を示す磁性流体ダンパーも、SCM-Eへと進化した。


 こうした性能の進化は実際にそのステアリングを握り、かつ雪上路へと足を伸ばさない限りコメントできないが、これ以外にもGTC4ルッソで見るべき部分は多い。
 コクピットには10.25インチへと拡大されたタッチスクリーンが備わり、Apple CarPlayにも対応。イタリアン・クラシコの格調高いレザーインテリアとF1テクノロジーのミクスチャーされた独特な世界観に、最新のインフォテイメント・システムが組み合わさることで、そのエグゼクティブ感に先鋭的な磨きがかかった。
 また助手席側インパネに備わるコクピットディスプレイは小さいながらも車両情報をパッセンジャーに伝えることで、センターモニターと合わせこのクルマがトータルでデジタライズされていることを強くアピールしていた。


 4輪駆動でどこへでも出かけることができ、4人乗りのシートを備え(実際はふたり乗りだろうが)、乗る人全てにフェラーリを体験させる新時代のラグジュアリー・シューティングブレイク。
 フェラーリGTC4ルッソは、「速く走るだけのフェラーリ」を脱却したモデルになったのだ。スーパースポーツカーのメーカーであるフェラーリが、この価値観を開拓した意義はとても大きい。

フェラーリ GTC4ルッソ 公式サイト
http://gtc4lusso.ferrari.com/ja/