HONDA agricultural machine
ウチの父が野菜作りを始めてもう何年になるだろうか。
仕事一筋、仕事以外に何のとりえもなかった彼は(ごめんお父さん)、定年退職してからやおら思い立ったように自宅裏の空き地を耕して、野菜作りをはじめた。
最初の頃こそ「え、なにこの開ききった白菜...?」みたいな妙ちきりんな作物もあったのだけど、今やなかなかの腕前。もちろんプロの農家の方が作られたような美しいものではないのだけど、無農薬でコツコツ育てられたそれらは、嘘じゃなく滋味深く、文句なしに美味しい。
さらに言うなら、奈良県南部地方という超絶なるカントリーサイドに生まれ育った私だが、帰省するたびに地元に起こるちょっとした変化を感じ続けていた。
これまで雑草はびこっていた休耕田を大阪など都会の人が借りに来て、野菜や果物を作りはじめたのだ。今やうちの近所の週末は、ちょっとしたヒッピーコミューンのようになっている。それもとても嬉しい。
そう、世界的なムーブメントと言ってもいい、急激に加速した食の安全への意識の高まりは、間違いなく日本にも訪れていると感じる。ネコの額ほどの、なんてよく言われるけれど、たとえちいさな畑であったって、自分の口に入れるモノは自分で作りたいという気持ちは、人種と国境を越えるのかもしれない。

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そしてまさに今、ウチの父みたいなシニア層や、農女(のうじょ)=農業女子なんて呼ばれる若年層をも見込んで、ある農機具が15年ぶりというおそるべきロングスパンのサイクルにてモデルチェンジを果たした。

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ホンダの小型耕うん機「こまめ」だ。

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それに併せて同じく小型耕うん機「プチな」がモデルチェンジを、自走式小型耕うん機「サ・ラ・ダFF500」が一部改良を受け、体験取材会が開催された。

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そもそも「耕うん機」とは、クワやスコップのかわりに畑を耕す機械のこと。
農業において、この「土を耕す」ってのがいちばんの重労働になるのは想像に易い。だって不安定な中腰姿勢での作業だ。いくら猫の額ったってホントのネコじゃないんだから、ひと畝耕し進めるだけでも、相当な重労働なのは想像に易い。

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しかも、植物の根はあんまり土が硬いと根が浅くなるから、畑の土はなるべくフワフワふかふかにしとくのがいい。しかしこれが難しいのだ。土をたがやし、ほぐし、畝を形成する。手作業にそこまでを求めるのは、特に週末ファーマーには酷というもの。出来ればこの辺はさらっと機械に任せたいところではないだろうか。

しかし、プロ用の農機具は大型なうえにかなり高価でもある。だいたい、使った後にどこに収納するんだよという問題もある。
というわけで今回のコンパクトな耕うん機「こまめ」は、なんと実に47万台というベストセラーモデルとなっているそうだ。

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もともと「こまめ」は1980年に、欧州の家庭菜園家向けに開発されたのだが、当初は日本での販売に消極的だった。その頃、日本では大型の農機具が主流で、こんなオモチャみたいなものを誰が買うんだ、という議論がなされたのだそう。しかし、売ってみたら大ヒット。現在の家庭菜園ブームのはるか前から、「こういうのを待ってた!」と、売れに売れた。

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コンパクトで軽量を叶えたその秘密は、エンジンユニットと作業部分を直接真下に繋ぐ「バーチカル機構」。従来モデルよりも重心を下げて設計することが出来るため、手押しの形状でも安定性を得られた。
そしてその「こまめ」をスタートとし、さらに広い作付面積をカバーできる自走式の「サ・ラ・ダ」が、より小型化された「プチな」が派生していき、その先になんとカセットコンロに使うカセットガスを動力源とする「ピアンタ」が登場してきたのだ。

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この中でも、今回テストした「こまめ」と「プチな」はエンジンの真下に耕うん爪がある「車軸ローター式」と呼ばれ、使い手がハンドルを握って速度を自分でコントロールする方式を取っているため小型で軽量、取り回しにすぐれている。

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対して「サ・ラ・ダ」は耕うん爪が前にある「フロントローター式」。耕うん機自体が自分で促進してくれる構造で、前者に対してやや大型だが、比較的広い畑でもガシガシと掘り進んで行ける。

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というわけで早速畑に出てみた。
東京近郊の畑は初夏を思わせる光に満ちていて、報道陣も肩の力が抜けたかのようなリラックスした表情で青空のもと、耕うん機のハンドルを握る。

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まずは自走式の「サ・ラ・ダFF500」から。

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ハンドルに補助バーを追加し、フロントホイールの操作性を向上させたという。

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作付面積のめやすは300坪まで、とかなりの許容量を誇るだけに、操作性はかなりラクだ。機械本体に重みがあるため、ハンドルを強く支えたりしなくても、また体重をかけて前に押さなくても、「サ・ラ・ダFF500」が勝手にどんどん進んで土をパワフルに掘り起こす。

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速度調節も簡単で、ハンドルのど真ん中から突き出たレバー1本を左右にスライドするだけというもの。ちなみにこのレバーで、耕す深さの調節も可能だ。

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鼻歌交じりにお散歩気分で機械に引っ張られて歩いているだけで、あっという間に足元にはふかふかの土が現れていく。その畝のなんたる感動的な美しさったら!
ガソリン満タン時で運転時間は約2.5時間。別売りのアタッチメントを購入すれば、除草にも、畝を高く立てるのにも使えるというから、耕作面積の大きいセミプロ(?)の畑をもカバーする頼りがいを感じた。
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ちなみに畝の上でのUターン(旋回)も、デフロックレバーひとつで簡単に操作できるし、このデフロック機構のおかげで、初心者でも驚くほどまっすぐな畝を形成できる。というか、曲がりようがないくらい安定している。

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次にいよいよ「こまめ」と「プチな」だが、もうこれは超絶楽しかった!まるでスポーツのようなのだもの! 手押し式のこのふたつは、構造がシンプルなために女性でも持ち上げられるほど軽量なのがポイント。

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「こまめ」で27kg、「プチな」でなんと18kg!クルマに積んで持ち運べるように、フロントガードが持ち手の役割も果たしている。

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作付面積のめやすは「こまめ」が100坪程度まで、「プチな」は30坪程度までということからもわかるように、「こまめ」のほうが見るからにすこし大きく、「プチな」はびっくりするくらいにコンパクトだ。

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その外観からの印象通り、「こまめ」のほうが安定感に優れ、しっかりと前に進んで行ける感覚がある。
自走式の「サ・ラ・ダ」と違い、このふたつは使用者自身がハンドルで本体をコントロールしなければいけないのだけど、やはり重量がある「こまめ」のほうが扱いはラク。爪が常に回転している機構的に、放っておいたらどんどん前に進んで行ってしまうし、自分の手でハンドルをぎゅっと土に押し付ける強さで耕す深さを調節するのだから、そりゃ本体が重いほうが安定感がある。

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しかし、なのだ。
この、土に対してヤンチャなまでにちょっとあばれる本体に引かれるかのように、ワシワシと前に進んでいく快感がもう、これまでに感じたことのない爽快感なのだ。

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特に本体の小さな「プチな」は、ハンドリング(というのだろうか)が面白い。同社の軽スポーツカーS660は、そのキャッチコピーを「痛快ハンドリングマシーン」と銘打っているのだが、もう、「プチな」もまさにそれ。

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あるだけの畑を駆け抜けたい! と思わせてしまう底なしのワクワクに、おもわず開眼しそうになってしまったほどだ。とにかく軽快で小回りが利き、意のままに操れる。まさに人馬一体とはこのことではないか!

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ああ、こんなところにもホンダイズムあり、なのである。なんか涙出そうに感動してしまったやないの。
さらに、どちらもこんなに小さく軽いのに、アタッチメントを購入すれば、畝立てや除草などの本格作業も可能だ。

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どんどん土を掘り返しながらおもった。父よりももっと本格的に畑を作りながら、「畝立てするほどの体力がなくて、大根がちいさくしか育たないの」と言っている、ウチの叔母のこと。きっとこれを知ったら喜ぶに違いない。
なんだか畑作業は、大事なひとを思い出すなぁと、ホロリ涙な午後なのであった。

■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp/tiller/