PORSCHE 911 Targa4GTS
 ポルシェ 911タルガ は、911シリーズ中でも伝統的に特異な立ち位置を歩んできた。アルミで整えられたBピラーはルーフでラウンドし、右から左へ、あるいは左から右へと太い筋を描く。
クローズドの911カブリオレが、時代とともに新しいシルエットを描くのに対してタルガだけは古典的な意匠を貫いてきたのだ。

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リアガラスは個性的に湾曲してもいる。一目でタルガとわかるデザインが、このクルマの最大の外観上の個性である。

PORSCHE 911 Targa4GTS
 にもかかわらず、いや、それだからというべきか、タルガは911シリーズの中で控えめな役割を演じてきた。長きに渡って固定ファンに支持されてきたとはいえ、王道ではない。走りに興じたければクルーズボディを選べばいい。爽快なオープンエアを手に入れたければ、カブリオレがあるじゃないか,というわけだ。頭上のトップだけが開くタルガの開放感は、ちょっと大きなサンルーフに過ぎないと思ってきた御仁も少なくないだろう。

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 だが、新型は一躍話題の中心になった。というのも、その電動で開くカラクリルーフトップの作動が、完璧に設計されているからなのである。一旦リアセクションのガラスが、そのまま折れもせず畳まれもせずに大きく口を開ける。そこに小さなルーフが格納される。すぐさまリアセクションがそのまま所定の位置に戻るというわけだ。

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 油圧ポンプに委ねられたこの単純な作動は、何度観ても飽きない。ランボルギーニ・ガヤルドのような複雑怪奇な作動をするわけではないが、かえってそれがドイツ人ならではの真面目さと知恵のような気がして心地良いのだ。

PORSCHE 911 Targa4GTS
2013年の北米モーターショーで911ダルガが発表されたとき、スポットライトが注がれる中の「20秒のスペクタクル」は、多くのジャーナリストの歓声に包まれた。そう、911タルガのハイライトは、ささやかな開放感を得るには仰々しい、この巧みな仕掛けにある。これほど贅沢なことはない。

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 もっとも、ルーフだけにこのクルマの個性があるわけではない。
 試乗車は「911タルガ4GTS」だ。ポルシェの伝家の宝刀、水平対向6気筒ユニットも、このところのダウンサイジングダーボの隆盛に呑まれるようにターボ化にシフトしつつある。だが、NA派の期待に応えるように、ポルシェはGTSグレードにノーマルアスピレーションを残してくれているのだ。


 素のタルガが水平対向6気筒3リッターに2基のターボが合体されるのに対してGTSのそれは、3.8リッターである。最高出力は+10psの430ps/7500rpmを確保し、最大トルクは逆に60Nm低い440Nm/5750rpmをキープしている。

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 ピークトルクで劣るのは無過給エンジンの宿命だが、そのぶん高回転の伸びは魅力である。比較するならば、超低回転でのトルク感に乏しいのは致し方ないとしても、中回転から激しい咆哮を高鳴らせながらトルクの山を駆け上るのは快感である。ターボが呆気なく頂きを迎えるのに対してGTSのそれは、レッドゾーンで頭を叩かれるまで伸びるのである。この1000rpmのアドバンテージは無視できない。
 7速PDKをパドルで上げ下げするのは、圧倒的にレスポンスに優れるNAユニットだからこそなのだと思った。

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 タルガ化によってほぼ100kgの重量増を招くが、NAエンジンを搭載するGTSはタルガの中では最軽量モデルとなる。そのためか、カレラとの明確なフットワークの悪化は感じられなかった。徹底的に攻めないかぎり、重心高が変化した弊害も感じない。低重心化にも気を配ってくれたに違いない。
 ルーフを開け放っての走行は、快適そのものだった。陽の光りが注いでいるのに、風の巻き込みも皆無なことが不思議なほどである。

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 意外な副産物は、周囲の目が気にならないことである。平静を装っていながら、太陽の温かさを、自分だけ秘かにひとりで楽しんでしまった。

■ポルシェ 公式サイト
http://www.porsche.com/japan/