映画『ゴーストバスターズ』の新しい「Ecto-1」は、なぜか不人気の82年式キャデラック
1980年代に人気を博した映画『ゴーストバスターズ』のリブート作品が今年の夏に公開される(日本では8月19日より公開)。1984年のオリジナル版にはアイコン的存在のゴースト退治専用車「Ecto-1(エクト1)」と名付けられた1959年式キャデラックが登場し観客を沸かせたが、代わって新作に登場するクルマは、どうも頭をかきむしりたくなるものだ。

というのも、この最新の『ゴーストバスターズ』では「Ecto-1」として、米国の自動車史において明らかに魅力の薄い時代である1980年代のクルマが使われているのだ。クリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズと共演するそのクルマは、1982年式キャデラック「ドゥビル」の霊柩車だ。



制作側はこのくたびれたキャデラックをそれらしくドレスアップしたが、やはり何かが違う。炎のような赤いテールフィンや輝くクロームメッキのない82年式キャデラックは、明らかに平凡でつまらないクルマだ。1982年当時ですらラグジュアリーカーの購入者層に人気がなかったのだ。米国版Autoblog記者のMurilee Martinが、70年代、80年代を"低迷期"とみなす理由がある。

アカデミー受賞作の初代『ゴーストバスターズ』が劇場で人気を博す数年前に作られた82年式ドゥビルは、「シマロン」に並ぶほどキャデラックの中でも最低の評価を下された1台だ。

ドゥビルは、キャデラックによれば「デジタルな」燃料噴射装置を採用した、当時では最新型の「HT4100」V型8気筒エンジンを搭載していた。しかし最高出力135hp、最大トルク26.3kgmの性能では、信号レースで隣のクルマに勝つこともできなかった。

奇妙なことに、1982年式ドゥビル セダンに標準仕様として設定されたV6エンジンでも同程度のパワーを発揮し、さらにトルクは2.1kgmも大きかった。つまりV8よりも速く、燃費もよかったのだ。

この事実はGMにとって明らかに気まずいものだった。だが、そのガソリン・エンジンの性能はキャデラック初のディーゼル・エンジン登場の陰で目立つことはなかった。

GMはドゥビルのオプションとして「LF9」型5.7リッター・ディーゼルV8エンジンを用意したが、これを選んだ不運な購入者には同情してしまう。というのも、このエンジンはその後30年間に渡りデトロイトにおいて"ディーゼル"を不吉な言葉にしたことで広く認知されているのだ。まあ実際、『ゴーストバスターズ』にはお似合いかもしれないが。

もちろん、この年式のキャデラックということで良い面もある。当時まだ新しかったこのクルマは『ゴーストバスターズ』とコラボした飲料「Hi-C Ecto Cooler」の箱を運んだことがあるかもしれないし、ひょっとしたら一度くらいは葬儀屋が子供を連れて米国大手スーパーマーケットのクローガーに行ったかもしれない。




1984年のオリジナル版『ゴーストバスターズ』では、59年式キャデラックが新たな買い手を待ちわびる忘れられたみすぼらしいクルマとして登場した。

それを見つけたレイモンド・スタンツ博士は映画の中でこう言っている。「サスペンションがあれば動くぞ。あとショックも必要だ。それから、ブレーキにブレーキパッド、ライニング、ステアリングボックス、トランスミッション、リアエンドも」

ミラー・メテオ社によって救急車や霊柩車に改造された1959年式キャデラック「エルドラド」は現在でも高値で取引されているが、その理由は間違いなく初代 『ゴーストバスターズ』の成功にある。しかし、このクルマ自体が魅力的なクラシックカーだという事実も理由の1つだ。おそらく、1950年代のデトロイト製を象徴する1台だろう。

一方、82年式ドゥビルとなるとそうでもない。不恰好な霊柩車は見つけるのも容易い。なぜなら、一般的に幽霊屋敷の小道具として使われているからだ。それがお似合いだ。

制作側がドゥビルを選んだ理由は不明だが、不要品の売買などの情報を載せる掲示板サイト「クレイグリスト」を見れば、1,500ドル(約17万円)で数台が売りに出されているのが確認できる。

映画はまだ公開されていないが、もし初代『ゴーストバスターズ』の大筋を踏襲しているとすれば、ゴーストハンターたちは安い値段でこのクルマを引き取ってくることになるのだろう。

スライマーほど怖くないものに出会ってもブルブルと震えるようなGMのディーゼル・エンジンによって、『ゴーストバスターズ』の最新作が呪われていないことを祈ろう。




By Andrew Ganz
翻訳:日本映像翻訳アカデミー