ホンダの新型「シビック TYPE-R」が筑波サーキットでタイムアタック!
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去る2月28日、Autoblog Japanは話題のホットハッチ、ホンダシビック タイプR」を筑波サーキットのTC2000コースに持ち込み、スーパー耐久等で活躍するレーシング・ドライバー、井尻薫選手にそのステアリングを委ねた。

なお、この日はモータースポーツやサーキット走行をサポートする東京都足立区のショップ「ディーランゲージ」が筑波サーキットで主催している走行会「走郎(はしろう)」にお邪魔し、その場で参加者のインストラクターを務めていた井尻選手に、いきなりシビック タイプRに乗っていただくことになった。事前の打ち合わせや試乗は一切なし。もちろんクルマもタイヤもノーマルのままである。

井尻選手といえば、ディーランゲージのデモカーである先代スズキ「スイフト スポーツ」で、筑波サーキットにおけるFF車のコースレコードを更新し続け、2015年には57秒974というタイムを記録している。あのニュルブルクリンク北コースでFF車最速の称号を得たシビック タイプRのドライブを筑波でお願いするなら、まさに願ってもない人物だ。



ご存じのように、ベース・モデルの「シビック」自体が販売されていない日本において、新型シビック TYPE-Rは、2代目のEP3型や先代の「タイプR ユーロ」のように、英国で生産された車両を輸入するという形を採る。販売台数は限定750台のみ。当然ながらそれを遙かに上回る購入希望者が殺到したため、幸運なオーナーとなれる人は抽選で決められた。全長4,390mm × 全幅1,880mm × 全高1,460mmの5ドア・ハッチバックに搭載された2.0リッター直列4気筒直噴ターボ「K20」型エンジンが最高出力310ps/6,500rpm、最大トルク40.8kgm/2,500~4,500rpmを発生し、6速マニュアル・ギアボックスを介して前輪を駆動する。ちなみにAutoblog Japanがホンダからお借りした広報車のシリアル・ナンバーは「0000」だった。





走行会のインターバル時に筑波サーキットを走り始めたシビック タイプRは、1周目でいきなり1分07秒446というタイムを記録。次の周で一度ピットに戻り、井尻選手の指示によりタイヤの高気圧を(ディーランゲージのメカニックの方々が)再調整する。そして再びコースイン。そこで今度は1分06秒995というベスト・タイムを叩き出す。1周のクーリングを挟んで今回のラスト・ラップは1分07秒173というタイムだった。

パドックに戻り、シビックから降りて来た井尻選手は、開口一番笑顔で「面白いクルマ!」と連発。ラップタイム以上に、これこそが新型シビック タイプRの真価を表していると言えるかもしれない。



第一印象はいかがでした? 面白いと仰っていましたが。

「面白いっていうのは、今のクルマは、まあ、FFなんか特にそうですけれど、割とパワーの出方がマイルドだったり、乗りやすさを優先しているクルマが多いと思うんですけど、なんかFFで久しぶりにドッカン・ターボというか、パワーがドーン!と来る感じで、じゃじゃ馬な感じのクルマに、久々に乗ったなあっていう感じがしますね」

その"じゃじゃ馬"というのは、良い意味で捉えてよろしいんでしょうか?

「そうですね。あのー、乗り甲斐がありますね(笑)」



今回のクルマはまったくのノーマルでしたが、サーキットを走るならもっとこうしたらいいという部分はどこでしょう?

「タイムだけを狙うなら、フロントのタイヤ幅(標準は前後とも235/35ZR19)をもう少し広くしてあげたら、多分ラップタイムは簡単に上がると思います。まあ、特に筑波サーキットのヘアピンなんかだと、(ステアリングを)切っているところからトラクションを掛けていくので、フロントタイヤというのが結構、容量的に厳しいのかなという感じがしますけど。ただ、あのコンチネンタルの"シックス"(SportContact 6)は凄い剛性感があって。たぶん(一般の量販向けタイヤではなく)クルマに合わせてチューニングしてあると思うんですけど、マッチングが良いですね。ブロック揺れとかもあまり感じないですし」



タイヤ以外にはありますか?

「うーん、あとやっぱりサーキットを走るならブレーキ・パッドですよね。連続で計測するような走りをしちゃうと、ちょっと焼けるようなにおいが出るんで、ああそろそろ甘くなってくるんだろうなって感じがしますから。でも純正のパッドはもちろん、公道を走ることを想定したものが付いているので、交換してあげれば全然問題ないと思いますし。あとはブレーキホースを替えてあげるとか。それだけやれば、全然サーキットを普通に連続で走れると思います」



他に印象が良かった点は?

「トラクション・コントロールなどの電子制御デバイスが、最近だと全部カットできないクルマが結構多いと思うんですけど、その介入が気にならないのが良いですね。ただしその分、コーナーからの立ち上がりのトラクションの掛け方は、アクセルを本当に丁寧に踏まないと、ホイール・スピンして、トルク・アンダー(ステア)になっちゃうんで、そこは気を付けなきゃならないんですけど。まあ、けっこう乗り甲斐がありますね(笑)。上手な人が乗ればうまく走ってくれますし、雑に操作すると悪い意味で運転手なりにクルマが反応するんで」

誰が乗っても速いクルマではないと。



「あとクルマの特性として、トレッドとホイールベースの比率は、ホイールベースが短い(2,600mm)ので、クルマの向きも変わりやすいし、先代のFD2(4ドア・セダンの日本国内仕様シビック タイプR)と比べると、向きが変わるのを待っている時間が短いんですよね。ただ、それも良いところもあればネガティブな点もあって、タイヤが冷えた状態からコースインして行って、ペースを徐々に上げていったんですけど、結構リアが(オーバーステア気味に)巻いてくるんですよね」

じゃあ、運転初心者がいきなりタイヤが冷えた状態で峠なんかを走り始めちゃうと危ないと...。

「ちゃんとタイヤに熱を入れてあげないと、(リアが)結構軽いですよね。それはやっぱり、ショート・ホイールベースというのもあると思いますし。ただ、一度熱が入っちゃえば、唐突なオーバーステアというのはないので。リアのスライドもターンインで向きを変えたい状態まで滑らせて、そこからカウンターステアで止めるんじゃなくて、アクセルで止まってくれるので。まあ、本当に上手に乗れば、上手に動いてくれるし、雑に運転すれば、もう結構、フラフラするクルマ(笑)」



今度のシビック TYPE-Rはサスペンションが電子制御になったので、ユーザーが簡単にダンパーを替えたりできなくなりそうですが、サーキットを走る場合、その辺はノーマルでも...。

「ああもう、全然このままで走れますよ。だからサーキットを走るならブレーキパッドと、余裕があればブレーキホースを換えれば、全然問題なく走れると思いますね」

では、サーキットを走るために仕上げる費用を考えたら、総額ではそれほど高くないかもしれないですね。

「僕がちょっと転がしただけで、ノーマルで、しかも純正のタイヤとブレーキパッドで6秒台っていうのは、結構速いと思いますね」



では、逆にこのシビック タイプRで残念な点と言いますか、ネガティブな箇所ってどこでしょうか?

「うーん、まあ現代のクルマは衝突安全基準とかどんどん厳しくなっているので、当たり前なんですけど、重いことは重いですよね(車両重量1,380kg)。やっぱり、昔のEK(6代目シビック)とかEG(5代目シビック)を知っている世代としては、どんどん重量級になって来ているので、軽快さという点では、昔のモデルと比べるとちょっとダルい感じはありますけど。それはまあ、仕方ない部分ではあると思うんですけど」

そんな昔のシビックから、乗り換えを考えていた人も多いと思うのですが。

「でも、先代のFD2になったときは、もうシビックという名前が同じだけでまったく別のクルマといえるほど変わったと思うんですけど、それに比べれば、また"シビック"寄りに戻ってきたなと思います」




どんなところがですか?

「それは、さっきも言ったようにショート・ホイールベースで、ドアの枚数は違いますが形状もまたハッチバックですし。オーバーハングが軽いので、運動性能の特性という点では、FD2に比べれば、また昔のシビックに原点回帰しているような感じがしますね。ただまあ、エンジンの特性が違うんですけど。結構ドッカン・パワーですからね。乗り堪えがありますよ」

その辺が昔のシビックとはやっぱり違いますよね。

「ただ、もしかしたら僕たちの世代はあんまり乗っていないですけど、昔のシティ・ターボのブルドッグ、あれがデカくなった感じなのかもしれないですね(笑)」

そういう意味では、またホンダらしい元気なクルマではあると。

「でも個人的に残念なのは、これを欲しい人がなかなか手に入れられないということ。聞くところによると、本当に欲しいという人だけではなく、投機目的で買い占める人もいるようなので。それが残念ですよね」

それが一番のネガかもしれないですね。今日はありがとうございました。



実はディーランゲージでもこの新型シビック タイプRの購入を申し込んでいたのだが、抽選に外れてしまったのだとか。岡田社長によれば、あの筑波サーキットFF車最速の「スイフトを超えるクルマを作るとしたら、これかなと思っていた」というから残念。シビック タイプRが一部のスーパーカーのような限定生産車ではなく、英国では継続して生産されるのなら、ホンダには是非、再導入の検討を期待したい。選ばれた人のみが乗れる"シビック"なんて、まるで言語矛盾みたいではないか。



取材協力:株式会社ディーランゲージ
http://dlanguage-z.com/