JAGUAR F-Type
ランボルギーニガヤルド以降、ウルトラ・ハイパフォーマンスカーを開発するメーカーは、4WDモデルの開発を積極的に行なった。源流をたどれば、オンロード用の4WDという発想はAudiに行きつくのだろうと思う。タイヤ2本より4本。誰が考えたって、4WDのほうが巨大なパワー(トルク)を受け止めるのに有利。ただし4WDはメカニズムが複雑になること、重量が重くなること、様々な抵抗が増え燃費が悪くなることなどのデメリットもあった。なにより4つのタイヤで駆動するため、曲がる性能を作り出すのが難しく、それが一つのハードルではあった。
4WDシステムにはいろいろな種類があるが、ハイパワースポーツカー向けの4WDシステムとして、いま主流になりつつあるのが、トランスファーに電子制御クラッチを組み合わせたシステムだ。
トランスファーは、ミッションの後ろに配置され、前後輪に駆動トルクを振り分けるギヤシステム。4×4用の4WDシステムとしてもよく知られている。4×4の場合は、トランスファーに断続のレバーやスイッチを設け2WD⇔4WDの切り替えができるようになっているのが一般的で、前後駆動配分は50対50であるのが一般的。

JAGUAR F-Type JAGUAR F-Type
前後輪の回転差(前輪と後輪、それぞれ速い回転の車輪の回転差)を許容しないので、カーブでブレーキがかかったような症状となるコーナリングブレーキング現象が起こるため、タイヤがスリップしにくい舗装路では扱いにくい4WDシステムでもあった。
けれども、トランスファーに電子制御クラッチを組み合わせることで、そのデメリットを解消することができた。
ジャガーの4WDシステムはまさにこのシステムで、後輪駆動を基本に、トランスファー+電子制御クラッチの4WDシステムによって、前後駆動配分は0対100から50対50の範囲でコントロール可能だ。実際には数%常にフロントタイヤに駆動力が伝えられている。

Related Gallery:JAGUAR F-Type
JAGUAR F-Type
ジャガーF-TYPE R AWDの雪上試乗会が行われた。試乗車はF-TYPE R AWDクーペ。5L V8+スーパーチャージャーで、550ps/680Nmを発揮する。この強力なエンジンをボンネット内に収めた。FRベースの4WDとなる。
焦点は「果たしてまともに走るのか?」だ。さすがに、これだけのパワーとトルクがあると、雪上ではナーバスな面がクローズアップされてしまい、ポジティブな面が見えにくくなってしまう......ことが多い。
最大の問題点はグリップの低さにある。グリップが低い氷雪路面で、トラクションと操縦性をいかにバランスさせるか。そんなことが一朝一夕にできるものだろうか。
なので、正直なところ、そこそこ走れれば上等...くらいの、かなり上から目線で試乗に臨んだのだった。だって、最近ようやくSUVと4WDモデルがラインアップに加わったけれど、昔から4WDを真剣にやっていたなんて話は聞いたことがなかったからだ。
まあ、かつてジャガーXタイプという4WDモデルは存在したが、あれはFFベースで短命だった。

JAGUAR F-Type JAGUAR F-Type
ところが、いざ試乗してみると、ビックリするくらい走らせやすいのだ。試乗ステージが圧雪された広場での定常旋回、8の字、スラローム程度だったので、走り込んで見極めたというわけではないが、全体像はつかむことができた。たぶんベースにあるのは優れた前後重量配分なのだろうと思う。後輪駆動モデルの前後重量配分は50対50に整えられているのだ。
個人的には、4WDは必ずしも前後重量配分50対50である必要はなく、むしろフロント側がやや重いほうがいいのではないか、と考えているが、ことハイパワースポーツモデルに限って言えば、舵の効きの良さと、リヤタイヤへのトラクションのかかりやすさのバランスを勘案すると、50対50かそれに近い重量配分のところにスイートスポットがあるのではないかと思う。
ジャガーで感心したのは、発進時にリヤにスッと荷重が乗って、リヤのトラクションがしっかりかかってくれることだ。同時に、フロントタイヤが比較的大きな割合で駆動力を受け持って、リヤの空転を抑えながら、スムーズに加速させてくれるところ。

JAGUAR F-Type
逆にコーナーでは、フロントタイヤへの駆動トルク配分を抑えめにして舵の効きの良さと後輪で蹴りだす力を出している。
もっと単純に言ってしまえば、前後駆動配分の基準はアクセル開度とステアリングの舵角センサーにあり、アクセル開度がある程度以上開いており、舵角が少ないときには、駆動トルクは50対50に近く、コーナリング中は駆動トルク配分がリヤ寄りになる。

JAGUAR F-Type JAGUAR F-Type
特にそれを強く感じるのは、やや大きめの円弧を描いて旋回から立ち上がりも向けてハンドルを戻しつつ、アクセルを開けていったとき。旋回中フロントタイヤにさほど大きな駆動力は感じていなかったのに、カーハンドルを戻しながらアクセルを開けていくにつれ、フロントタイヤの駆動感がどんどん強くなっていくのだ。リヤタイヤが軽くアウトに滑りながら、それをフロントタイヤが引っ張っていってくれる、といった動きによく表れている。
ただし、制御は(当たり前だが)それほど単純ではなく、例えばコーナリング中リヤが大きく滑ってしまった時、カウンターステアを当てて強めにアクセルを吹かし込んでやると、フロントタイヤへの駆動力が増し、タイヤの向いた方向にノーズが引っ張られ、結果的にリヤのスライドで発生したヨーを相殺してくれる、といった操作も効く。


では定常旋回のドリフトはどうなるかというと、試乗ステージが傾斜路面だったので、安定した姿勢と舵角で旋回を続けることはできなかったが、印象としてはかなり深いドリフトアングル(クルマが旋回の中心近くを向いている状態)でもハンドルの舵角は100~150度くらいカウンターを当てた状態でバランスしそう。もっともこれは路面の状態やドリフトアングルによって違ってくるので一概には言えないが...。
また、駆動トルク配分0対100~50対50と言っているが、実際の駆動配分は常に50対50まで行っているわけではなく、5対95くらいから35対65くらいのところが頻繁に使われる駆動配分量ではないかとおもう。実際様々な走らせ方をしてみたが、きちんとAWDらしさは出ているが、インプレッサランエボほどフロントタイヤが駆動している感覚はない。もっとFR的な乗り味となっている。
これは良いとか悪いとかではなく、個性としてそういう味付けなのであり、それがFタイプAWDの運転する面白さにもつながっているのだろう。

JAGUAR F-Type JAGUAR F-Type
そもそもこのAWDシステムは、雪道を走って楽しむためのものではなく(それもできるが)、オンロードでの圧倒的なスタビリティと、スポーツカーらしい操縦性を両立するためのシステムだ。雪道や氷の路面で起こる挙動はドライ路面でもグリップ限界近くになると、ほぼ同じ挙動として表れる。
つまり一般道を走らせても、基本的な挙動は同じ。550馬力/680Nmという強力なパワー/トルクを持つFタイプを、ビックリするくらいイージーに、しかも楽しく走らせてくれるAWDであることは間違いない。

■ジャガー 公式サイト
http://www.jaguar.com/jp/ja/