【ジュネーブ・モーターショー】アストンマーティン、V12ツインターボを搭載した新型車「DB11」を公開
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アストンマーティンのCEO、アンディ・パーマー氏自らが「近年だけでなくその103年間の歴史の中で、アストンマーティンが発表した最も重要なクルマ」と述べるニュー・モデル「DB11」がついにジュネーブ・モーターショーでベールを脱いだ。パーマー氏の強調したい気持ちもわかるが、アストンマーティンのように小規模な会社にとっては、全ての新型車が重要で社運が賭かっているはずだ。何よりもアストン車の変わらない魅力は、ジェームズ・ボンドの愛車として相応しい、洗練された美しさだろう。

DB11が重要なクルマであることに疑う余地はない。今秋発売され、英国における販売価格は21万1,995ドル(約2,500万円)に設定されている。 1948年、当時のオーナーであるデビッド・ブラウンのイニシャルを冠した「DB1」に始まった伝統あるシリーズは、今モデルで10代目を迎えた(DB8というモデルはない)。DB1はたったの15台しか生産されなかったが、その後はボンドカーとして有名になった「DB5」や、23年ぶりにその頭文字が復活した「DB7」、そして2003年に発表された現行の「DB9」など、長年にわたりアストンマーティンの最も成功したシリーズとなった。



チーフデザイナーのマレク・ライヒマン氏が白紙から生み出した新型DB11には、新しいアルミニウム製ボディシェルやサスペンション、キャビンが与えられ、システムを作動させる電気系統はメルセデス・ベンツのものをベースにしている。

刷新された心臓部は、5.2リッターV型12気筒エンジンを三菱重工業製の水冷式インタークーラー付きツインスクロール・ターボチャージャー2基で過給する。最高出力608ps/6,500rpm、最大トルク71.3kgm/1,500rpmを発生し、最高速度は322km/h、0-100km/h加速は3.9秒。この新型エンジンは、ZF製の8速ATとメカニカル・リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを介して、後輪を駆動する。

アストンは、部分負荷効率と燃費の数値を改善させるため、従来の6.0リッター自然吸気エンジンから5.2リッター・ツインターボ・エンジンへと移行した。製品開発担当取締役イアン・マイナード氏は、「エンジンの小型化において、我々は排出ガスの削減や経済性の向上を求めたが、それ以上にトルクの増強を求めた」と語る。燃料を節約するため、ことさらパワーを必要としない場合には、エンジンの片側のバンクを休止させ、2.6リッター直列6気筒エンジンとして働くが、排気触媒が冷えすぎないように電子制御で2つのバンクを切り替える。 同氏によれば、乗員には「バンクの切り替えは感知できない」そうだ。



マイナード氏のチームは3年かけてこのクルマを開発した。「少し挫けそうになった。相当期待されていたし、それに応えることも非常に重要だったので」と同氏は言う。まず、チームはクルマに求めるものを全てリストに書き出した。 「それをQHR(品質履歴レビュー)と呼び、我々の希望だけでなく、カスタマーの要望や、自動車ジャーナリストの考えも、全てリストアップした。おかげで様々な意見を網羅したリストが完成したんだ」とマイナード氏は明かした。



ボディのデザインは、運転席と助手席の位置を決めることから始まった。マイナード氏は、「2+2シーターのグランドツアラーなのだから、空間をもっと利用しようと考えた」と語る。DB11の全長は、DB9より19mm長いだけだが、主に前輪を前に移動させたことにより、ホイールベースは65mm長くなった。DB9のVH(バーティカル・ホリゾンタル)構造に比べ乾燥重量は15kg軽く、マイナード氏によればDB11は剛性も向上しているという。シャシーはVH構造と同様に、押し出しアルミ材をセルフピアスリベットと接着剤で結合している。

エアロダイナミクスにも工夫が施されている。2層構造のクラムシェルボンネット(世界屈指の大きさのアルミボディプレス)の下には、前輪のホイールアーチ付近に魚のエラ状の隠しベントが設けられており、これを通して高圧の空気を車体のスラットから外に排出することでフロントのリフトを低減させる。この仕組みは、空気がホイールアーチをカールしながらすり抜けていくことから「カーリキュー(Curlique)」と呼ばれる。また、リアはCピラー基部から取り入れた高圧気流を後部のトランクリッドのスロットからクルマの上を流れる気流に向けて押し出す"仮想リアスポイラー"「エアロブレード」によってリフトを抑える。加えて、速度が150km/h以上になると、トランクエッジから高さ約5cmのガーニーフラップが自動的にせり出すようになっている。




新しいサスペンションのデザインは、前輪がダブルウィッシュボーン式、後輪がマルチリンク式だ。ダンパーには設定変更可能なビルシュタイン社製のユニットを装備する。ブレーキはブレンボ社製のアルミキャリパー付きスチール・ローターで、回頭性を向上させるため、コーナリング時に内側の車輪にブレーキを作動させるトルクベクタリング機能も採用されている。ステアリングは、アストンマーティンとして初めてボッシュ社の電動パワーステアリングを装備した。ブリヂストン社と共同開発した専用の「S007」タイヤは、フロントが255/40ZR20、リアは95/35ZR20。

マイナード氏は「ステアリング・ギア比(13:1)に関しては大きな決断をした。初期段階からサスペンション・ジオメトリを適確に設定できていたこともあり、その後の調整は難しくなかった」と語る。ステアリングのロック・トゥ・ロックは、DB9の3回転から2.4回転に速められている。ドライビングモードは、GT、スポーツ、スポーツプラスの3種類から選択可能で、順にエンジンのレスポンス、ギアチェンジ、ステアリング、ダンピングがハードさを増していく。ドライビングモードは、ステアリング・ホイール上のスイッチで操作できる。




キャビンは開口部が広くなり、インテリアの空間も若干の余裕が増えたため、乗降性が改善された。インテリア・デザイナーのチーフ、マット・ヒル氏は、「すべての装備を前席の乗員からより離れた位置に配置した」と言う。最新式のインストゥルメント・パネルには、12インチTFT液晶ディスプレイやデジタル式の計器類を採用した。電子技術はメルセデスと同じかもしれないが、「見たり触ったりして感じられるものは、すべて我々が造り出した物だ」と同氏は語る。

背もたれとサイドサポート部分がスリムになった新しいシートは、電動調節できる範囲が拡大された。キャビンスペースはやや広くなったが、その割に後部座席のスペースはあまり増えていない。依然として実際には小さな子供用であり、興味深いことに、2座のチャイルドシートが固定できるリアISOFIXアンカーが標準装備されている。キャビンには従来どおり、クラフトマンシップが冴えるブリッジ・オブ・ウィアー製の本革が使用されているが、気孔の開いたウッドトリムや良質な素材が用いられ、デザインは刷新されている。インテリアのリードデザイナーを務めたレイアン・アーリー氏は、「家具のようなシートを作りたかった」と語っている。バング&オルフセンとのコラボレーションは継続され、同社による最高級オーディオ・システムや、360度バードアイ・ビュー・カメラを採用したオート・パーキング・システムなど、電装系のアップグレード・オプションが用意されている。

アストンは、かつてエンジンにそれを製造したビルダーの名を刻印したプレートを付属させていたが、DB11では過去のものとなっていたその慣習が復活。また、同社のアンディ・パーマーCEOの署名がドアキックプレートに刻印される。まさに、重要なクルマなのだ。





By Andrew English
翻訳:日本映像翻訳アカデミー