ボーズ社といえば、我々の記事でも度々その名前を目にするが、思い浮かぶのは自動車メーカーのハイグレード純正オーディオか、アフターマーケットで販売されているサウンド・システムだろう。しかし数年前に、研究主導型のオーディオ関連技術で有名な同社のエンジニア達は、これまでの概念を根本から変えるかもしれない革新的なアダプティブ・サスペンション・システムを開発していた。ところが悲しいことに、革新は起きなかった。

ボーズのサスペンション・システムは画期的な技術だった。2台のレクサス「LS」がデモンストレーションしている(ついでに、ポルシェ「ケイマン」も登場している)2分ほどの動画を見てほしい。実際にこのシステムを搭載したクルマは、急ハンドルを切っても、バンプに乗り上げても、ボディの揺れは驚くほど抑えられている。急停止してもノーズダイブはごく少なく、きっと車内は平穏な状態が保たれているだろう。動画ではさらに、小さな障害物を飛び越える様子まで紹介されている。

しかし残念なことに、このシステムは重すぎる上にコストも掛かるため、実用化されずにプロジェクトは凍結されてしまった。その代わり、この技術は別の製品に応用され、「ボーズ・ライド・システム」と呼ばれる、ハードな長距離トラックの運転席用サスペンションとして製品化された。劇的に疲れにくく、腰の痛みも軽減されるということで、運転手の注意力と健康維持に一役買うと好評を博している。しかし自動車産業にとっては、このシステムが作られた本来の意図とはかけ離れてしまった。

アウディクライスラーゼネラルモーターズマツダ日産などの高級車に乗って、スピーカーグリルにボーズのロゴを見つけたら考えてみてほしい。もし、あのサスペンション・システムの製品化が実現していたら、ボーズ製オーディオ・システムを採用している自動車メーカーすべてが、同社のサスペンション・システムの搭載を検討していたかもしれない。




By Noah Joseph
翻訳:日本映像翻訳アカデミー