アップルCEOティム・クック氏は自動車の製造についてよく理解していない?
アップルのティム・クックCEOは、その他のテクノロジー業界の人々と同様に、自動車産業を理解していないようだ。米ビジネス誌『Fortune』のインタビューで、クック氏は部品製造を委託する契約に基づいて自動車を製造できると思うかと訊かれると、「それができない根本的理由があるとは思わない」と答えた。

そう。そもそも自動車とは、様々なサプライヤーがそれぞれ製造したコンポーネントの提供を受けて、組み立てられる。アップルがiPhoneを製造する過程とほとんど同じだ。これは自動車産業を知る人にとっては常識である。だがどうやら、インタビュアーを含むシリコンバレー・バブルの中にいる人間には通じないようだ。彼らは自動車製造のような古くて泥臭い産業が、テクノロジー業界と同じくらい複雑だとは想像もつかないのだろう。(テスラの革新がメディアによく取り上げられ、それと同時に製造における問題点の解決に苦心しているのも同じ理由だ)

短いインタビューだが、クック氏は製造業界について詳しいと伺える。しかし、彼あるいはインタビュアーはクルマの製造に関しては間違った思い込みをしているようだ。契約に基づく製造について問われたクック氏は「すでに行われているが、その(自動車)産業の典型になっているとは思わない」と発言したのだ。

それは違う。契約に基づく製造こそが、自動車産業の典型的な形式だ。程度は様々だが、乗用車やSUVのほとんどの部品はサプライヤーによって製造されている。トランスミッション、サスペンションパーツ、ステアリング、燃料システム、シート、インパネなど、サプライヤーから供給されるパーツをリストアップしようと思ったら長くなって大変だ。供給されるパーツは全て、別々の施設で製造されている。スマートフォンの部品も異なる工場で作られているのと同じだ。テクノロジー業界との大きな違いは自動車メーカーが最終的な組み立てを行うことである。

そしてクルマはスマートフォンよりも非常に複雑な構造で、使用される期間も長い。そして、不具合には一層の注意を払っているのだ。例えば、歪んだiPhoneを作ってしまうほどのミスが自動車産業にあれば、それは命に関わり、議会聴聞会で提起され、大規模なリコールが発生し、次々と訴訟が起こることになるだろう。

実は、自動車産業のパーツの流通ペースは非常に遅く、メーカーは慎重を期している。もしアップルが独自で、あるいはどこかの自動車メーカーと提携してクルマを製造するのなら、斬新なデザインや製造アイデアがいくつも出てくるだろう。しかし、製品の寿命が短く、不具合も絶えない点では、テクノロジー業界は自動車産業と同じではない。それゆえ、テクノロジー業界が何でもうまくできる手段を知っているわけではない。アップルも自動車産業から多数の人材を引き抜いているので分かっているはずだ。そろそろマスコミ向けの美辞麗句を、同じように内部にも反映させる時ではないだろうか。


By Michael Austin
翻訳:日本映像翻訳アカデミー