CHEVROLET CORVETTE
 佇むコルベットを前に、そのマッチョなフォルムに見惚れていると、僕はあのことを思い出す。今から8年前、たしか2008年だと思う。北米で開催されたワールド試乗会に招かれた時の、コルベットZR1の開発を担当したエンジニア達の姿が頭に蘇るのだ。
 柔和な笑みを浮かべ、僕らをエスコートしていたエンジニア達は、揃いのユニフォームを着ていた。その背中には、とても大きいQ数でこう記されていたのだ。
「LIFE is over 200mile/h!」
 力強い書体だったから僕にはこう読めた。
「320km/hからだぜ、オレ達の世界は!」
 まるでメーカーの開発エンジニアとは思えないヤンチャなそのフレーズに、すぐさま僕は惹き込まれることになる。
 さらにエンジニアのひとりが僕に歩み寄ってきてこう言った。
日産GT-Rには乗ったのか? すごく速いのだと噂されているけれど、僕らは信じていないんだ。だって、あんな非力で、あんなに重い。そしてあんなにタイヤが細い。それでニュル7分台は不可能なはずだからね」

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 それから彼らと運動理論に関して侃々諤々、やり合うことになった。コルベットのチームの論理によると、「最速タイム=ビックパワー+軽いボディ+太いタイヤ」だと言うのだ。なるほどその公式にあてはめると、GT-Rの記録は眉唾物となる。その後GT-RとZR1はニュル最速をかけた死闘を繰り広げることになったのはご存知のとおりだ。
 そう、そんな武闘派思考の彼らが開発したわけだから、今回試乗したZ51スペックBがいくらZR1ほど尖ってないといっても、驚くほどのパフォーマンスを秘めていることは明らかだ。

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 搭載されるエンジンは6.2リッターV型8気筒。最高出力466ps/6,000rpmを炸裂する。最大トルクは630Nm/4,600rpmに達する。

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車両重量は1,570kg (MT)。軽量なアルミフレームがゆえに可能となった数字である。タイヤはフロント245/35ZR19、リアが285/30ZR20。その強烈なパワーを受けとめるために、前後異径サイズを奢っているのだ。

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 驚くのは、マニュアルミッションが7速に刻まれていることだ。オートマチック仕様は8速だ。7速もあると、さすがにシフトチェンジに忙しい。

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 もっともご丁寧に1速でスタートする必要もないし、生真面目に一段一段ギアを高めていかなくても済む。

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 というのも、6.2リッターというビックキャパシティのエンジには感心するほど低速から粘り強い。アイドリングからでも、ドロドロと驚愕のトルクが溢れ出るからユルユルと進む。あまり大きな声で言うべきことではないが、たとえば、2速発進でも余裕で耐える。3速発進すら許容してしまうのだ。

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 さらに無精をして、3速ホールドのまま突き進めば、ハイウエイのクルージングまでこなすという守備範囲の広さなのだ。そのまま床踏みしていれば、法定速度×2倍にも到達しそうなほど。

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 ほとんどオートマチック感覚で走れる。それほど低回転から粘り強く、ローギアードなのである。そして高回転まで弾けるユニットだから不思議である。
 ならば7速マニュアルミッションは必要ないかといえば、答えは否だ。ゆったりとクルーズしたければ8速オートマチックを選択すればいいのだが、このクルマはやはり、マニュアルシフトを駆使して限界まで攻め込みたくなるオーラが備わっている。

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 7速マニュアルは、ギアダウンに挑もうとすると、力強い破裂音がバスッとしたかと思うと、ブルッっと身震いをしてブリッピングをかます。いわば自動ヒール&トーシステムも選択できるのだ。まるで2ペダルマニュアルのようなシステムが組み込まれているのだ。

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 コクピットに座ると、バケット形状のシートが脇を強く締めつけるし、驚くほど長いフロントノーズとは対象的に、横方向の空間はタイトだ。そして低い。レーシングモードに落とし込まれる。

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 Uターンをしようものなら、リアタイヤがスキッド。効きの強いLSDが組み込まれていることが、それでわかる。コルベットは、きわめて獰猛に武闘派を演じているのである。走り出してしまえば、一瞬たりとも気が緩むことがない。

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 そこであらためて、「LIFE is over 200mile/h!」のロゴが思い出されるというわけだ。

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 ちなみに、今回試乗したスペックBは、限定7台という希少なモデルだ。写真のクリスタルレッドテインコートは専用色であり、ベースのZ51に、ボディ同色のカーボンルーフやミラー類、シルバー塗装のホイールなど、限定車らしい意匠が施されている。

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 価格は1,069万円(税込み)。アメリカの至宝が札束1,000枚で手に入る。

■シボレー 公式サイト
http://www.chevroletjapan.com/