マツダは、1月に商品改良を施したコンパクトカー「デミオ」の説明会を報道陣向けに実施。Autoblog Japanの記者も従来型と新型を乗り比べさせていただいた。

Related Gallery:2016 Mazda Demio

4代目デミオも発売から1年あまりが過ぎ、今回のいわゆる年次改良で目的とされたのは、「人馬一体感の進化」と「質感の改善」。つまり、これまでデミオが高い評価を得た点に磨きを掛け、ネガティブな声が聞かれた点は「真摯に受け止め、できるものから取り入れた」そうだ。

マツダが提唱する「人馬一体」感については、まず1.5リッター直噴ディーゼル「SKYACTIV-D」エンジンに「DE精密過給制御」を取り入れ、軽負荷領域におけるアクセル操作による反応をより緻密に改善したという。また、電動パワーステアリングは操舵初期の応答性を見直すことで、「よりすっきりしたステアリングの反応」になったと開発主査の柏木章宏氏は言う。



さらに、SKYACTIV-D 1.5エンジンには「CX-3」でお馴染みの「ナチュラル・サウンド・スムーザー」と呼ばれる技術を採用し(エントリー・グレードの「XD」を除く)、ディーゼル・エンジン特有のノック音を抑制。1.3リッター・ガソリン「SKYACTIV-G」エンジン搭載車は、フロント・ウィンドウに遮音ガラスを採用すると同時にトノカバーを設定(グレードによって標準またはオプション)することで、遮音性を高めたという。また、運転席と助手席には3段階の温度調整が可能なシートヒーターも用意された。これらの改良は、普通なら「快適性の向上」と謳う種類のものではないかと思うのだが、マツダでは「運転に集中できる環境」づくりと捉え、これも人馬一体感の向上につながるとしている。



質感の改善については、シャークフィン・アンテナとフラットワイパー(フロント)を標準またはオプション装備として新たに採用。些細な部分だが、旧型と見比べると、スタイリッシュなこれらのパーツは、明らかにデミオのモダンなデザインにマッチしている。そしてSKYACTIV-G 1.3 搭載車にも、黒と赤のスポーティな内装と充実した装備を持つ「13S Touring」という新グレードが追加された。豊富なラインアップが揃うデミオで、掛けていたパズルのピースが埋まったというところか。

これらの改良により、装備が追加された"Touring"系の上級グレードは価格が税別で2万円ほどアップ。「13S」「XD」に用意されている「LEDコンフォートパッケージ」もシートヒーターが追加されたことで税別1万円の値上げとなる。逆に言うと価格が変わらないエントリー・グレードでは、(オプションを付けなければ)制御系の変更のみとなる。足回りの設定やJC08モード燃費の数字などは従来と変わらない。




この日、試乗車として何種類か用意された新旧デミオの中から、記者は1.5リッター・ディーゼルを搭載する最上級トリム「XD Touring L Package」の6速マニュアル・トランスミッション仕様を新旧で乗り比べてみた。なるほど、確かに低負荷時のスロットルと初期のステアリングは反応が改善されたことが分かる。旧型では中立付近に僅かな不感帯のあったステアリングは、新型になると指1本分の微妙な操舵にもクルマの動きが感じられるようになった(決してクイックになったわけではない)。スロットルは交通の流れが遅い街中を走行中、右足の親指にじわっと力を込めただけで反応するようになった。MTではその有難みがより大きく、ダイレクトに感じられる。どちらの点に関しても、旧型のディーゼル・エンジン搭載モデルは、アクセル・ペダルを踏めば十分なパンチ力はあるし、ステアリングも切り込んでいけば不自然さを感じるほどではないのだが、その反応の仕方にやや鷹揚な気がみられた。悪く言えば、少々もっさりしていた。それが新型ではより繊細さを増している。より勘の鋭い馬になった。

ただし、旧型に乗っているオーナーが悔しく思うほどではないだろうというのが正直な感想だ。新型デミオは旧型に比べ、機械的に"当たり"と感じられる程度、と言えば分かっていただけるだろうか。例えばこれが中古車になると、使われ方による個体差の方がずっと顕著になるに違いない。これから数年後、中古のデミオを買うとしたら、無理して2016年型以降に拘る意味はさほどない。走行距離や状態、価格を見て選べばよいと思う。



もう1つの大きな改良点であるナチュラル・サウンド・スムーザーについては、正直なところ顕著な差は感じられなかった。というのも、デミオはMTでもアイドリングストップ機構が作動するから、停止中のアイドリング音はあまり気にならない。また、走行中はマニュアル・シフトでSKYACTIV-Dエンジンを操れば、こちらの意思と右足に応じてエンジン音も高まるので、音量は確かに静かとは言い難いのだが、人馬一体気分のドライバーにはそれほど耳障りに感じない。これは新型も旧型も同様だ。直接比較してみたら同乗者にとっての快適さには違いがあるかもしれないが、少なくとも新型で劇的に静かになった、とは言えない。

その前に少しだけ乗せていただいた新型「XD Touring」のAT車の方が、かえってディーゼル特有の音質が気になったほどだ。ちなみにデミオの1.5リッター・ディーゼル・エンジンは、最大トルクがMT車では22.4kgm/1,400〜3,200rpmであるのに対し、AT車では25.5kgm/1,500〜2,500rpmと、実はスペックが異なる(最高出力105ps/4,000rpmは共通)。その理由はトランスミッションによるそうで、6速ATは大トルクに耐えられるようにガソリン車より1クラス大型のユニットを使っているのに、6速MTはマツダのパワートレイン担当者のお話によれば「よりフロントが軽く、運転の楽しさを重視して」1.5リッターのガソリン車(日本ではモータースポーツ向けとされる「15MB」のみだが)と共通のユニットを使っているため、これに合わせて最大トルクが控え目にチューンされているからだとか。おかげで、1.3 ガソリンでは5速MTと6速ATの車両重量の差が20kgに留まるのに対し、1.5 ディーゼルは6速にもかかわらずMTの方がATより50kgも軽い。



デミオの1.5リッター・ディーゼル直噴ターボは、アクセル・ペダルの踏み始めからコンパクトカーらしからぬ力強さを発揮する。ただし、それも4,500rpm程度で頭打ち、5,000rpmでレッドゾーンが始まってしまうから、いわゆる息の長い加速は楽しめない。シフトアップを繰り返せば速度は上がるが、良く出来たガソリン・エンジンのような、回転とサウンドの高まりに合わせて気持ちも昂ぶっていく、あの感じはあまり味わえない。マニュアルで乗るディーゼルのデミオには、そういうのとは別種の独特な面白さはあるけれど、どちらかといえばATの方がディーゼルならではの恩恵(大トルクと低燃費)が得られるかもしれない。デミオのAT「SKYACTIV-DRIVE」はトルコンの滑りも気にならず(他社のCVTと比べたら言わずもがな)、ややストロークの長いクラッチペダルを踏まなければならないマニュアルよりも街中では軽快に走れると思ったほど。マニュアルのシフトレバー自体はストロークが短くて適度な重さと節度もある素晴らしい感触なので(マツダの方によれば、ロードスターというお手本があるからできたそうだ)、この日は試乗できなかったが1.5リッター・ガソリン・エンジンを積む「15MB」がMTで乗るなら最高なのではないかと期待が膨らむ。



今回の改良で、デミオの人馬一体感は確かに高まった。だが、直接これが販売増に結びつくとは思えない。実燃費では誤差に等しいほどのモード燃費という数字の差でクルマを選ぶような人々に、この"向上"を分かってもらうのは大変だ。むしろ前席シートヒーターやシャークフィンアンテナの方が、購入者の背中を押す効果は高いだろう。

記者は実際に乗り比べて感心したというよりも、マツダが拘った"refine(洗練・精錬)"に、クルマ作りの良心を感じて嬉しく思った。今は僅かな違いでも、こういう開発を続けていけば、5年先、10年先に出来るクルマには間違いなく大きな差が生じてくるはずだ。また、事あるごとに「人間中心のクルマ造り」を謳うマツダが、微妙な違いも識別できる人間の繊細な感性を信じていることの証でもある。Autoblogを読んでくださっている方ならば、その意味と価値の大きさが分かっていただけると思う。

マツダ デミオの詳細なスペックや価格については、以下のリンクから公式サイトをご覧いただきたい。


マツダ 公式サイト:デミオ
http://www.mazda.co.jp/cars/demio/