BMW 7 series
 新型BMW 7シリーズは、これまでに無いほど大きく変わった。ハードウェア自体の進化やデザインの変化も大きいが、話はそれだけには留まらない。クルマ自体のコンセプトまで踏み込む、大胆なまでの刷新。その跳躍の幅は、7シリーズの歴史上もっとも大きいと評していいのではないだろうか。

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 今回試乗したのは740i Mスポーツと、ロングホイールベースの740Li の2モデルなのだが、いずれもまずはもう見た目からして、明らかにこれまでとは趣が違っている。これまでの7シリーズは、ちょうど先々代で一度、ドギツいディテールを試したことはあったものの、基本的にはアンダーステイトメント、意地悪く言えば地味で、それはそれで良かったとも思うが、アピール度が高いとは言えなかったのも事実。そこで新型は、より堂々としたフォルムをまとい、クロームパーツの使用部位も大幅に増やされて、いかにもな高級感が解りやすく演出されている。

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 筆者個人の思いとしては『今さらコレをやるの?』という感じだし、BMWらしくない気もする。キドニーグリルの間が繋がり、ヘッドランプユニットから横一直線に見えるのも、やはり"らしくない"。しかし、少なくとも単に大きな3シリーズだなんて言われることは無くなったはずだ。

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 柔らかな手触りのレザー、艶やかに磨き込まれたウッドパネルが縦横にあしらわれたインテリアも、やはり同様に解りやすい雰囲気と言える。走ることに専念するための硬派なコクピット、なんて感じではない。

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 指先を空中で動かすだけでオーディオの音量などを調節できるジェスチャーコントロールの搭載も面白い。それこそ先々代で初めて iDriveを搭載した時のような、荒削りであっても操作系に革命を起こすようなインパクトは無く、正直言ってまだギミックの域を出ていないとは思うが、それでも、これまでとは違う層の目を惹きそうなことは間違いない。

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 そんな内外装だけでも大きく変わったなと思わせるには十分。しかし、そこはさすがBMWで、何よりインパクトが大きいのは、やはり走りの進化ぶりだ。まず驚かされるのは、意外にも乗り心地の良さ。ボディの剛性感はハッとさせられるほど高く、リアだけじゃなくフロントにも7シリーズでは初めて使われたエアサスペンションは想像以上にソフトに躾けられていて、気味が悪いくらいにしなやかなのだ。

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 ハッキリそれだと体感できたわけではないが、前方の路面をスキャンして減衰力を自動調整するエグゼクティブドライブプロの効果も、きっとあるのだろう。その乗り味、まるで浮遊しているかのような感覚である。

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 いや、一種異様なまでのこのフィーリングに何より貢献しているのは、間違いなくルーフメンバーやウインドウフレーム、ピラーなどの構造部材にCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)を使った"カーボン・コア"と呼ばれる新構造のボディだ。ボディだけで130kgの軽量化に繋がっているだけでなく、CFRPらしい入力に対する減衰の素早さが、感覚的にも軽さを強調しているようだ。

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 静粛性も目を見張るものがある。低速域の静けさなどは、単に騒音が抑えられているというより、そもそも完全に遮断されているかのように感じられるほど。これもまた金属とCFRPの違いが表れているのかもしれない。

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 もちろん、そのボディはフットワークにも軽やかさをもたらしている。特にピラーからルーフ辺りにかけての高い部分が軽く感じられるおかげで、グラリと傾くようなロール感は最小限。4輪操舵の威力もあって、とにかく曲がりたがり、ステアリングを切った方向にスイスイと吸い込まれていく。

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 但し、おかげで直進時の落ち着きが損なわれているのはマイナス。せっかく素性が良いのだから、後輪操舵は隠し味程度にしておいて、シンプルにその良さを味わわせてくれても良かったはずだ。それでも比較すれば、ロングボディの方が動きは自然で、それでいてワインディングロードも楽しく攻められる小気味良さもうまく両立できていた。

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 この軽いボディに搭載されるエンジンは、新開発の直列6気筒3.0リッターターボ。余裕のパワーとトルクで力強い走りを実現しているだけでなく、ストレート6らしい緻密な吹け上がりでも楽しませてくれる。最近では搭載車種もめっきり少なくなったストレート6の味わいは、それだけでもプレミアムだ。

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 そうした、これまでの延長線上にある走りの歓びに加えて、新型7シリーズは最新の運転支援・安全装備を満載している。クルーズコントロール使用中にはレーンキープだけでなく操舵補助も行なう。横方向からの危険を自動操舵によって回避するアクティブサイドプロテクションも搭載。カメラにより車両の周囲360度を常に監視し、車庫入れなどの際に役立つ3Dビュー機能も用意する。LEDの2倍の最大600メートル先を照らすBMWレーザー・ライトも備わった。極めつけは、クルマから降りてキーフォブをリモコンに車外から車庫入れを可能にするリモート・コントロールパーキング。こちらは2016年中盤より使えるようになるという。

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 新型7シリーズ、こんな具合で稀に見るほど力の入ったフルモデルチェンジを遂げた。その背景には、現在の7シリーズの置かれている状況が、決して易しいものではないという事実があるのも確かだ。このクラスの王者として君臨しているのは、相変わらずメルセデス・ベンツ Sクラス。一方で、新興勢力のアウディ A8には追い立てられている。そんな現状を打破するには、キャラクターをより明確にして、攻めに出るしかない。

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 見た目の存在感を高め、ハイテクでアピールし、そこからブランドの誇りであり自慢の走りの世界へと誘引する。描いたのは、そんなストーリーだろうか。

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 但し、個人的な印象としては、ちょっと力が入り過ぎという感はなきにしもあらず。デザインにしても走りにしても演出過多で、本来持つ旨味が損なわれてしまっているようにも思う。しかしながら、良くも悪くも伝統を深くは知らない、若きリッチ層には、このぐらいのインパクトが受け入れられるのかもしれない。是非その辺り、話を聞いてみたいところである。ともあれ、この挑戦は見物だ。

■BMW Japan 公式サイト
http://www.bmw.co.jp/ja/index.html