富士重工業とそのモータースポーツ統括会社のスバルテクニカインターナショナル(STI)は、現在開催中の東京オートサロン2016で、今年のモータースポーツ活動について記者発表を行った。

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壇上に立ったのは、ご存じSTIの辰己英治氏。まず、スバルがモータースポーツに取り組む理由について説明する。例えば、今年も参戦するニュルブルクリンク24時間レースで、これまでスバルとSTIは2011年、2012年、そして昨年と3度のクラス優勝を果たした。「勝ったときの、みんなの喜び。ファンの方々も含めて、これだけ喜んでもらえるんだと。その喜びをみんなで共有したい」と語る。そして2つ目は、スバルのクルマ作りで中心となる「安心と楽しさ」。「モータースポーツを通してそれを知ってもらいたい」。さらにモータースポーツで磨かれた安心と楽しさを、市販車にフィードバックして「お客様に味わってもらいたい」という。また、「ハード的に見ると、スバルの優れているところは、低重心、軽量、バランスに優れた水平対向エンジン。その資産を使って戦い、(水平対向エンジンを搭載するスバルのクルマに乗っている人に)喜んでもらいたい」。さらに、「衝突安全性を世界が認めたボディ技術」や、「走る、曲がる、止まる」というクルマ作りの技術力を、「モータースポーツで勝って証明したい」と語った。

要約すれば、スバルの市販車に乗っている人に喜んでもらいたい、スバルのクルマ作りに関する技術力の高さを証明したい、という2点である。だから、スバルは市販車をベースとするマシンで戦う。





5月26日から29日にドイツで行われるニュルブルクリンク24時間レースには、今年も「WRX STI」で出場する。そのエンジンである2.0リッター・ターボの「SP3T」クラスは、年々規制が厳しくなっている。辰己氏によれば、「GT3に割って入っちゃうくらい速くなったからじゃないか」とのこと。「2年くらい前に(最低重量を)重くされた。今年はリストラクターが1mm小さくなるからパワーが落ちる。タイヤも厳しくなり、市販タイヤを使えというレギュレーションになった」。これにファルケンが名乗りを上げたという。「(これまで使用していた)ダンロップとファルケンは同じ住友ゴムなんだけど、ブランドごとに意地があるのでしょう」。ということで、今年はファルケンの市販タイヤで戦うことになる。だが、パワーが落ち、市販タイヤを使うようになっても「タイムが落ちるとは考えていない」と辰己氏は言う。「ダウンフォースを増やし、コーナリング速度をとにかく稼いで、また来年も性能調整が入るくらい、頑張る」そうだ。「そうなれば、また技術的な挑戦ができるし、そうして技術が磨かれれば、お客様のお乗りになる市販車にフィードバックされる」。つまり、我々が実際に乗るスバルのクルマがますます良くなるわけだ。だから「ぜひ、ご声援をよろしくお願いします」と仰る。スバル車乗りならずとも、将来スバルのクルマに乗るかも知れない人なら、応援しないわけにはいかない。

ドライバーは山内英輝選手(日本)、マルセル・ラッセー選手(ドイツ)、カルロ・ヴァン・ダム選手(オランダ)、ティム・シュリック選手(ドイツ)という昨年の優勝メンバーを引き続き起用。辰己氏が車両開発および総監督を務める。目標はもちろん、クラス優勝2連覇。そして締め付けが厳しくなったにも関わらず、総合で1つでも順位を上げることだ。



国内レースでは、今年も引き続き「BRZ」をベースにしたレース車両でSUPER GTのGT300クラスに参戦する。ライバルは日本のハイブリッド・レースカーと、そして各国の自動車メーカーから送り込まれるGT3マシンだ。「GT3はかつてのようなプライベーターという感じではなく、今では各メーカーのワークスによる戦いになっている」と辰己氏は言う。欧米のメーカーが日本のレースに勝って名声を上げようとしているそうだ。逆にスバルが勝てば、世界にその優秀性を伝えるチャンスでもある。だが、昨年は「お分かりかと思いますが、すごく苦労した」という。去年の東京オートサロンで3勝するという目標を掲げたのに、1度も勝てなかった。その原因はある程度掴んでいるという。




辰己氏によれば、「BRZの弱点を克服するため、空気抵抗を減らしてとにかくスピードを上げようとした。でもこれが間違いだった」そうだ。昨年は、フロント・フェンダーを低くするため、2種類用意されている中でより径が小さい300/680R18というサイズのタイヤを使った。しかし今年は、330/710R18というサイズに変更する。どれだけ違うかは、ステージに展示されているBRZ GT300を見れば分かる。これは昨年型の車両に今年用のタイヤが装着されているのだ。このままだとフロント・タイヤがフェンダーに当たって走れない。つまり、今年は空気抵抗が増えてもフロント・フェンダーを上げることになる。だが、代わりに、拡大されたフロント・タイヤによってコーナーリング性能とブレーキ性能は向上する。実は昨年末にこのタイヤで既にテスト走行を実施しており、そこで「読み通りの結果が得られた」そうだ。「さらにエンジンの性能を引き上げ、重心を1mmでも下げるとか、ダウンフォースを増やすとか、いっぱいやって」、今年こそ「3勝を目指す」という。昨年同様、チーム運営はR&D SPORTが担当し、チーム総監督は辰己氏が務める。ドライバーは、井口卓人選手と山内英輝選手を継続起用する。



壇上に登場した井口選手は「昨年は3勝できず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。でもその悔しさが今年のレースに生きると確信している。エンジンも良くなると聞いているので、今年は強くてカッコ良くて速いBRZをお見せできるんじゃないかと思っています」と話す。

山内選手は「3勝という目標を達成すれば、沢山の人達の笑顔が見られると思うので、そのために頑張りたい」と決意を語った。



今年は水平対向エンジンを搭載したブルーのクルマが、ドイツと日本で昨年以上の速さを見せてくれるに違いない。目標を達成すれば全部で4回、我々も喜びを共有できるはずだ。もちろん、それを上回ることになっても全然構わない。