LINCOLN NAVIGATOR
 リンカーンといえば、キャデラックと並びたつ北米プレミアムブランド。ナビゲーターといえばそのリンカーンのフラッグシップモデル。

LINCOLN NAVIGATOR
 5mを超える長さ、2mを超える幅、2.7トンもの重量、豊富な装備を誇る豪華絢爛なフルサイズSUVである。大きいこと、強いことが正義であると信じて疑わないアメリカ人にとって、威風堂々とした巨体に大排気量V8エンジンを搭載したこの種のクルマはいつだって憧れの対象だ。
The 3.5-liter EcoBoost engine specially tuned for truck applications joins the lineup for the 2011 Ford F-150. (08/11/2010)
 そのナビゲーターが、ついにダウンサイジングの波に飲み込まれた。エンジンを従来の5.4L V8から3.5L V6ターボへと積み替えてきたのだ。最高出力は304psから385psに、最大トルクは495Nmから624Nmへと向上したものの、ダウンサイジングエンジンがナビゲーターの個性にどんな影響を与えたのかは実に興味深いテーマである。

LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
 結論から言うと、ナビゲーターはやはりナビゲーターだった。加速するときも、減速するときも、曲がるときも、常に巨大な慣性力を感じる。キビキビ感という言葉とは対照的な、ゆったり、どっしりした乗り味は、まさに大船に乗った気分。とくに、可変ダンパーを「コンフォート」にセットしたときの大船に乗った感は相変わらずで、こういうのが嫌いじゃない僕としては正直ホッとした。

LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
 モードは他に「ノーマル」と「スポーツ」もある。スポーツ? このクルマでどんなスポーツするの?と思うだろう。ナビゲーターでワインディングロードを激走するなんて考えられないし、そもそもそういう気分にさせないのがナビゲーターのいいところ。ならば使い道はないのかというと、僕なら高速道路を走るときにスポーツを選ぶ。突き上げはやや大きくなるが、バネ上のフラット感は明らかに増すし、不測の事態に遭遇したとき、急ハンドルで避ける能力も確実に上がるからだ。

LINCOLN NAVIGATOR
 V6ターボは、出力面だけでなくフィーリング面でもダウンサイジングの悪影響を感じさせない。フル加速時の速さは明らかに向上したし、最新のターボエンジンらしくレスポンスの遅れもないため、先代V8エンジンに勝るとも劣らない極太低速トルク感をちゃんと味わえる。ドロロロロッというV8特有の鼓動感こそないものの、最近のアメリカンV8は昔ほどドロドロしていないから、V6化で薄味になっちゃったなぁという感覚もない。それでいて燃費はよくなった。つまり、ダウンサイジングで失ったものはないということだ。ただひとつを除いて。

LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
 それは何かというと、「V8」という記号性だ。宿命のライバルであるキャデラック・エスカレード(6.2LV8)が好調なセールスを続けるなか、なぜフォードはナビゲーターにV6を積んだのか。実は現行ナビゲーターはモデル末期であり、来年にもフルモデルチェンジが予想されている。MKXやMKTといった弟分たちがヨーロピアンテイスト方面に舵を切っていることを考えると、次期ナビゲーターがその動きに追従する可能性は高い。そう、ライバルをエスカレードに限定せず、すでにダウンサイジング化を進めている欧州性プレミアムSUVにも拡げれば、エンジンのダウンサイジングはまったく不自然ではないのである。

LINCOLN NAVIGATOR
 そういう意味で、アメリカンテイスト満載のボディに最新のダウンサイジングターボを搭載した2016年型ナビゲーターは過渡期のモデルと言えるだろう。そして、過渡期だからこそ「一粒で二度美味しい」のかもしれない。

Related Gallery:LINCOLN NAVIGATOR
■今井優杏
LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
冗談なの?って思うくらいのサイズ感。いやはや、東京でいざコレを目の前にすると、小山のよう!ある種のイケイケな人々には、圧倒的な人気を誇るのも理解できる。だってほんとすんごい迫力なんだから。
そんな巨体、重量にして2.7t(!!)。ド級ワガママ・ボディを引っ張るエンジンはフォードが誇るエコエンジン、その名も「エコ・ブースト」になった。

LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
そう、昨年フルモデルチェンジを迎えた同車だけど、注目はかなり思い切ったダウンサイジングエンジンを搭載したリンカーンが、ちゃんとリンカーンとしての資質を保っているのかという所だと思う。
結論。やっぱり「エコ・ブースト」に外れなし。テッパン!である。

LINCOLN NAVIGATOR
軽いアクセルタッチでスーっと進み出すさまはクルーザーのようでモタつきなし。しかし踏み込めば意外にもゴロゴロと独特のアメリカンなサウンドを奏でちゃうって言うんだから感激だ。繊細なアクセルワークにもリニアに反応してくれるし、なんだか思った以上に印象が良かった。

LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
もちろんアメリカン・ラグジュアリーの神髄、フルサイズSUVだから内装のゴージャスさには手抜きなし。リンカーンとして至極真っ当に進化していて感激しちゃった。

■青木タカオ
LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
狭い都内の道路で、いきなりこれを運転させられることになるとは思ってもみなかった。恐るべし、アメリカン・フルサイズSUV。初めての挑戦だった。

LINCOLN NAVIGATOR
しかし、意外とスイスイいける。走り出してすぐは、車線をはみ出していないかと心配するばかりだったが、サイズ感が掴め、無茶さえしなければなんとかなる。

LINCOLN NAVIGATOR LINCOLN NAVIGATOR
それよりも、385ps、624Nmを発揮するV6ツインターボの力強さに感服する。わずか2,750rpmで最大トルクを発揮するトルクフルなエンジンは、いかにもアメ車。未知なる四輪SUVだったが、ハーレーオーナーの自分にとっては、ハーレーと似たものを感じずにはいられない。

LINCOLN NAVIGATOR
しかしハーレーに例えるなら、今回試乗したフォーティーエイトではないだろう。長い距離を走るほどにその真価に気づかせてくれるツアラー、ウルトラ系がこのクルマに近い。ラグジュアリーで、乗っているだけで胸を張れる。知ってはならない、禁断の世界を味わってしまったようだ。

■リンカーン ジャパン 公式サイト
https://www.lincoln-japan.jp