小沢コージに訊く:2015年の良かったクルマ&残念なクルマ 2016年の自動車業界に期待すること
2015年も間もなく終わり。もうすぐ2016年がやってくる。というわけで、我々Autoblog編集部では、お馴染みのモーター・ジャーナリストの方々を招いて忘年会を開催し、皆さんがお仕事を忘れて楽しまれているところを狙って、いきなり次の3つの質問をぶつけてみた。

1. 今年、もっとも良かったクルマ。
2. 今年、残念だったクルマ。
3. 来年、自動車業界に期待すること。


大晦日特別企画としてお送りしてきたこのシリーズ、大トリを飾るのは"バラエティ自動車ジャーナリスト"を自称する小沢コージさん。



・今年、もっとも良かったクルマ

クルマ自体じゃないですけど、自動運転ですね、やっぱり。自動運転のシステムというのは、ここ20年くらいでも一番大きいと思っていて、なぜかというと、あの警察がオーケイって言ったという。だって、警察が安全基準を変えるなんて、まずなかったでしょ。2年前にレクサスがテストしたときには、警察が直接文句を言った訳じゃないんだけど、記者会見かなんかであれをやったら安全運転義務違反になるって言っちゃったらしくて、それで自主規制って形になった。それがオーケイになったっていうことは、どういうことかと言うと、総理大臣がいかに力を持っているかというのが良く分かる。安倍首相が言ったからオーケイになったわけで、総理大臣って偉いんだなって初めて思いましたよ(笑)。

自動運転って、新しい装置だと思っている人がいるけれど、実はあれ、新しい産業なんですよ。たぶん自動車ではない別のものを生み出そうという究極的な目標があるから。でも、相当難しいと思うんですよ。上手く行くわけがないと思っているんですけど、でもやるって決めちゃったし、世界がある程度もう動いているから、どういうふうに摺り合わせしようかっていうのが、相当見ものだと思うんです。それが、安倍首相という、まあ良くも悪くも決断ができちゃう人が決めちゃったっていうのは、この20年に1回もなかったんじゃないかという重大事で、それを考えるともう、新型マツダ ロードスターがどうだとかは、どうでもいいというかね、極論すると。だってロードスターがいくら良いクルマでも、産業は増えないですよ。経済産業省と国土交通省が「自動走行ビジネス検討会」を設置して、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で自動走行研究開発計画に20億だか30億だかの予算(25億3,500万円)が配分されたというのは、まあ額としては少ないですけれど、そっちの方が(新型車の話題より)インパクトが大きくて。だって、何年か前まで「自動(運転)」なんて言葉使えなかったですよ。「(運転)支援」って呼んでいたでしょ。本当に時代が変わったなと思います。




・今年、残念だったクルマ

残念というか、マイナスという意味では、まずフォルクスワーゲンの(ディーゼル排出ガス不正)問題はマイナスですよね。あと自動運転だってマイナスになる可能性もある。要するに責任が重くなるんですよ。ああ、クルマって、こんなに社会的なものだったんだなって。人間だって、破廉恥な行為とか、どんどん許されなくなってきましたよね。クルマって実は今まで本当にフリーダムだったし、グレーゾーンだったんですよ。ぶっちゃけ、制限速度を絶対に守って走っている人がどれだけいるのかっていうとね(笑)。でも、自動運転が進めばそれは管理されるようになるし。これからはもっと社会的な責任が問われ、どんどん厳しくなっていくんだなと。だからね、今後は個人の快楽と社会正義の戦いになると思います。



・2016年の自動車業界に期待すること

そうした社会的責任に対して求められるものが厳しくなる一方で、今年はホンダ S660マツダ ロードスターというオープンのスポーツカーが2台も出たでしょ。スポーツカーって個人の快楽のモノじゃないですか。ああいうのが2台も出たっていうのは素晴らしくて。やっぱり人間はセクシーに生きたいという欲望があるから。ミニスカートもずっとなくならないじゃないですか。

ミニスカートとオープン・スポーツカーに通じる感じというのは、とても分かる気がします。

そう。人間の生活に必要ないし、身体を晒して危ないしさ(笑)。だからスポーツカーも絶えることはないと思いますし、来年もそういう、ばかばかしい世界(笑)が続いていって欲しいなとは思いますけどね。でも、今年もアストンマーティンからサーキット専用車(ヴァルカン)が出たりしたじゃないですか。結局、スーパースポーツって、だんだんサーキットに押しやられるんだなっていう感じがします。公道で飛ばすのって、もう幻になってるんじゃないかな。

でも、今年もS660とロードスターが出たように、まだまだスポーツカーっていうのもなくならないと。

なくならないでしょ。やっぱり僕らも好きだし、人間は安全のために生きているわけじゃないから。




(聞き手・文責:Hirokazu Kusakabe)