2015年も間もなく終わり。もうすぐ2016年がやってくる。というわけで、我々Autoblog編集部では、お馴染みのモーター・ジャーナリストの方々を招いて忘年会を開催し、皆さんがお仕事を忘れて楽しまれているところを狙って、いきなり次の3つの質問をぶつけてみた。

1. 今年、もっとも良かったクルマ。
2. 今年、残念だったクルマ。
3. 来年、自動車業界に期待すること。


今年もスーパーカーからタイヤまで、高い運転技術に裏打ちされた批評でお馴染みの斎藤聡さん。




・今年、もっとも良かったクルマ

国産車で凄く頑張ったと思うのは、レクサス GS F。エンジニアの人にはボロクソ言っちゃったんだけど、今この国にあって、V8の5.0リッターで477馬力みたいな、阿呆なパワーを出してクルマを売るということ自体が、凄く良い。いい根性しているなって思うし、偉いと思う。RC Fも含めて、レクサスのFシリーズというのは、ひとり気を吐いている。トヨタという組織の中で、あのクルマを企画して、作って、しかも物凄くコントロールしやすく仕上げた。さらに、VSC(車両安定制御システム)とTRC(トラクション・コントロール)を、全部オフにすることができるという、冒険にまで踏み込んでいる。これはトヨタの自信なのか、それともライバルに対しても世界的にこういうクルマを売る立場としてそうする必要があったのか、よく分からないんだけど、いずれにせよ、これは頑張ったなと思う。本当に褒めてあげたい。だって、大トヨタの作るクルマですよ。それでもしドライバーが事故を起こして、横滑り防止装置が切れたからだ、なんて訴訟になったら大変なことになるわけです。腹の据わり方だよね。これはこういうクルマですから、っていう主張じゃないですか。



それからもう1台。マクラーレン 675LTは、スーパーカーというものを変えたよね。これまでは、スーパーカーなんだから乗りにくくても仕方ないと思われているところがあったけれど、マクラーレンはシャシー性能を真面目に作り込んで、700馬力クラスのクルマを後輪駆動で作ってしまったというというのは、やっぱり凄い。環境問題に対してはどう考えているんだという意見もあるだろうけれど、エコはちょっと置いておいて、クルマの趣味とか面白さというところで、どこまで突き詰められるかという部分が一方であるわけじゃないですか。人が操るものとして、レーシングカーではなく市販車で、ハイパワーのクルマを一所懸命作ってくれるメーカーはやっぱり応援したい。リスペクトしたいという気持ちがある。フェラーリやランボルギーニに対して、マクラーレンというのは後発メーカーでしょ。だから、生き残るためにはああいうクルマを作るしかなかったのかもしれないけれど、それを実現する技術力が凄い。

フェラーリやランボルギーニと比べて、"ああいうクルマ"というのは? 乗りやすいということですか?

乗りやすい。圧倒的に乗りやすい。本当にね、ドリフトが自由自在なんです。さすがに3,000万円のクルマをいきなり横に向けるのは、ちょっと気が引けますけど、でもね、できちゃう(笑)。あるレベルのスキルを持つ人だったら、みんな「あ、これはできる」って思えるクルマ。



・今年、残念だったクルマ

残念なクルマは目に入ってないんですけど。嫌いな人と嫌いなクルマにはなるべく近寄らないようにしているから(笑)。エンジニアの意地と知恵が感じられないクルマには腹が立つから近寄らない。あ、残念なクルマというか、残念なメーカーが1つあるね。スバル。CVTはなんとかしろと言いたい。もう(CVT専用の)工場を造っちゃったから、仕方ないんだけど、仕方ないで済ましているとスバルはなくなっちゃうよ、と予言しておきます。スバルは物凄く良いメーカーだし、エンジニアも物凄く拘ってクルマを作っていて、大好きなんだけど、あのCVTが全部を台無しにしている。そのくらい深刻に考えてくれないと駄目、というかヤバイんじゃないかと思う。スバルは水平対向という個性的なエンジンをせっかく持っているわけじゃないですか。他のメーカーは同じような直列4気筒やV型6気筒で、最近はフリクションを減らしているからどんどんスムーズになって、個性が薄まっちゃっている。単なる動力発生装置に過ぎなくなっている。そんな中で、スバルの水平対向は唯一、個性を発揮しているエンジンであると言っても過言ではない。そのエンジンのダイレクトな面白さを、全部消しちゃうCVTを付けるなんて、一体何を考えているんだと言いたい。

CVTも良くなってはいるのでは?

CVTなんていくら良くなったって絶対ダメだよ(笑)。

それは普通のトルコンATでいいんですか? デュアルクラッチとかじゃなくても?

そんなのいらない。普通のマニュアルか、トルコンATでロックアップだけ速くしてくれれば十分。すごく良くなる。スバルのエンジンの良さをダイレクトに楽しめるようになるのに、CVTなんか使い続けていたら、墓穴をどんどん深く掘っていくような気がします。



・2016年の自動車業界に期待すること

まずは景気なんだよね。景気が良くなって、みんながクルマを買いたい気分になると、メーカーの人達もみんなが買いたくなるようなクルマを作れる。そうすると、3年後か4年後に良いクルマが出てくるわけじゃないですか。そういう意味では、まあ若干上向いてはいるし、何となくみんなの中でクルマを買いたいなって気分がちょっとだけ芽生えて来ている。だからメーカーは、今を逃しちゃいけないんだよね。まだ辛いとは思うけれど、歯を食いしばって、俺はこういうクルマを作りたいという努力を頑張って続けて欲しい。




(聞き手・文責:Hirokazu Kusakabe)