岡崎五朗に訊く:2015年の良かったクルマ&残念なクルマ 2016年の自動車業界に期待すること
2015年も間もなく終わり。もうすぐ2016年がやってくる。というわけで、Autoblog編集部ではお馴染みのモーター・ジャーナリストの方々を招いて忘年会を開催し、皆さんがお仕事を忘れて楽しまれているところを狙って、いきなり次の3つの質問をぶつけてみた。

1. 今年、もっとも良かったクルマ。
2. 今年、残念だったクルマ。
3. 来年、自動車業界に期待すること。


まずはTVをはじめ様々な媒体で活躍中の岡崎五朗さんから。




・今年、もっとも良かったクルマ

スズキ アルト。今、軽自動車というのは日本における新車販売台数のほぼ40%を占めている巨大なマーケットを抑えているわけですが、その中でどういうモデルが売れているのかというと、それは背が高くて、重くて、燃費が悪くて、値段が高い軽自動車が売れているんですよ。でも、それは本来の軽の姿ではないだろうと思うわけですね。じゃあ、その本来の軽っていうのは何かというと、やっぱり経済性。軽くて、安くて、燃費が良くて。本来、そういうクルマが主流であるべきだと僕は思っているんですね。そういうクルマも今まであったけれど、なんかね、ビンボー臭かった。でも今度のアルトは、軽の本質を追究しているんだけど、デザインが良かったり、走りもちゃんとしていたり、という意味で、本来の軽の良さというものを見直す切っ掛けとなった。

先代と比べてそんなに変わりましたか?

もう全然、見た目からして違いますよね。健全なプロポーションと、質の高い面。単に安いだけではなくて、魅力的でもある。そこがやっぱり良いと思う。




・今年、残念だったクルマ

ホンダ クラリティ FC。僕はね、先に出たトヨタ MIRAIより"明らかにカッコ良いクラリティ"を期待していたんですよ。それを買って、(MIRAIを購入した)島下(泰久)くんたちに「どうだ、良いだろう」って言ってやりたかった。ところが、東京モーターショーで市販型が発表されたら、(昨年発表されたコンセプトカーと変わって)なんじゃこりゃっていうデザインになっていた。ホンダは、(MIRAIと違って)フロントに燃料電池のユニットを全部収めることで室内が広くなり、5人が乗れるって言っているんだけど、そんなものは誰も求めていなくてね。いま燃料電池車を買いたい人は、何を求めているのかというと、"FC(燃料電池車)に乗るイケてる自分"というのを演出したいわけですよ。エコだから乗るなんてのは、まだ意味がないわけで。だから、5人が乗れるようになったのでカッコ悪くなっちゃいました、なんてことでは、燃料電池車に乗る人の気持ちをホンダは全然分かっていない。テスラだって、エコだから乗るなんて人は実はほとんどいなくて、みんなカッコ良いから乗るんでしょ。ホンダには、MIRAIより明らかにカッコ良い、燃料電池車のもう一つの選択肢が来ると思って期待していたのに、なんだMIRAIより別にカッコ良くないじゃん、ってがっかりしたのが残念だった。



・2016年の自動車業界に期待すること

これは自省も込めて言うんだけど、自動車メディアが、良いものは良い、良くないものは良くないと、もっとメリハリの効いた記事や評価を出すようになることが重要。どれを読んでも同じような、褒めているのか貶しているのか分からないけど全体のトーンとしてはまあ褒めているんだろうな、って感じの記事ばかりじゃ、読む人だってつまらないでしょ。だから是々非々で、良いものは褒める、悪いものは、ここがこういう理由で駄目だよってはっきり言うような、メディアやジャーナリストが、どんどん増えて欲しいなと思います。




(聞き手・文責:Hirokazu Kusakabe)