Riding School
どう考えても上手じゃない。色々迷いもあるし定まってない。
や、人生のことじゃありません。ま、そこにだって多少の不安はないわけではなのだけども、そっちはいくら不器用でもただ生き切るしかないんだからしょうがない。悩んでいるのはバイクの乗り方のことなんですわ。
ほんまのところどう乗るのが正解なのか、イマイチよくわかんないのである。

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大学生時代に普通自動二輪免許を取得して以降、全国各地を激しく乗り回していたのは10代後半~20代前半の頃。20代半ばからは四輪に興味が移り、バイクにはパッタリと乗らずに過ごしてはや10年以上が経過してしまっていた。そんな私がリターンライダーになったのはつい数年前のこと。友人でレーシングドライバーの片岡龍也君のお下がりとして、現在の愛車ヤマハSRV250を譲ってもらったのがキッカケになった。
まさにリターンしたそのときの鮮烈な喜びは、いまも覚えている。
とある仕事のために前橋に行くことになり、そのアシとして、整備から帰って来たてホヤホヤのSRVを選んだ。
晴れ渡った5月、空気はもう夏の香りを含んで汗ばむほどの陽気がまぶしく、絶好のツーリング日和。スコーンと空いた関越道を走っていたら、お腹の底からワハハハ!って笑いがこみあげてきて、気付いたらヘルメットの中で全開で笑っていたのだ。バイクって、なんてすごい開放感なんだろうって。バイクって、なんて突き抜けた乗り物なんだろうって。
そういうの、ずっと忘れてたから一気に思い出した。
大学生の頃、夢中で北海道とか九州とか貧乏旅行していた頃のこと。
単純に移動するのが楽しくて、景色がどんどん過ぎていくのにひとつも取りこぼしたりしているような気がしなかったこと。全部自分の心の中に堆積するように、降り重なっていったこと。

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しかし、しかしである。
そんなメランコリズムに酔う私の心を嗤うかのように、この失われた10年チョットは残酷な変化を連れてきていたのである。体力と筋力の著しい低下がソレだ。
今年五月に念願の大型自動二輪免許を取得してからはありがたいことにたくさんバイクのお仕事をさせてもらっている私であるけれど、長野に2日間ツーリングしただけで腕がパンパンになる。炎天下ちょっと走ったらフラフラになる。筋力がないから取り回しがヨロヨロする。低速で走るのが怖い。
そんな感じだ。

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そんな折、ご縁あって参加させていただいたライディングスクールがまさにそんな私にドンピシャの内容であったのでレポートしたい。
題して「ナイスミドルのためのスマートライディングスクール」。
ホンダ・モーターサイクル・ジャパン主催で、参加資格はホンダ車オーナーであること、そして40代以上であること(!)。中高年ライダーやリターンライダーをターゲットに、美しくバイクに乗るためのテクニックが学べるというものだ。

......いや、まだです、まだなんです。私辛うじて30代なんです。しかし、その内容は
・ブレーキング
・パイロンスラローム
・コーナリングブレーキ
・コーススラローム
といささか派手さはないものの私の求めているものにピッタリ。速く走るというよりも、上手に乗れるようになりたいのだ。

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講師は元ホンダワークスGPライダーの宮城光さん。
現在はモトGPの解説者としても「超舌」でご活躍されていらっしゃるから、二輪好きならずとも彼を知らない人はいないんじゃなかろうか。

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それにしても天才といわれた宮城さんを講師にして、この言うなれば地味な講習内容(すみません)はあまりにももったいないような気もする。だって宮城さんだったらですよ、もっとバイクを寝かせたりアクセル開けたり、そういう派手なコントロール法を教えてもらいたいと思うのが人の常じゃないですか。
しかしこのスクール、終わってみれば宮城さんにしか遂行は無理!なんというナイスキャスティング!と激しく納得の内容である。その理由はただひとつ、ものすごハードだったから!参加ライダーの疲れを見事な話術で紛らわしてくれ、最後まで集中を切らせないように乗せてくれたのはあのトーク力の賜物以外の何物でもない。

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そして、プログラムの内容も宮城さんだからこそ作成されたもの。
自身が年齢を重ねたことで、かつて世界の頂点に輝いたキャリアを以てさえ、バイクと身体の関係に変化を感じているのだとか。参加者の立場に立ったプログラム編成は、そういった経験から生まれたのだ。

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朝は準備運動から始まる。
この辺さすが中高年向けね!と侮るなかれ、普段デスクワークに身をやつす私もギャーヒー言うくらいに身体が縮こまっていることを感じさせられた。
「ここまでやれとは言いませんけど、準備運動をしておけば怪我の防止にもなりますからね!」と笑顔でガンガンストレッチをさせられ...いや、させてくださる。
しかし、スクール後の筋肉痛が少なかったのは、このストレッチのおかげだと思う。

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次にライディングポジションの確認。
このスクールではスクールカーのレンタルがあるので、そのバイクに身体を慣らすためにも、跨って感触を確かめる。

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ここでGPライダー宮城さんのワンポイント。
「いいですか、ポイントは踵です!下半身をホールドしましょうとはよく言われますけど、具体的には膝と踵。ニーグリップだけじゃなく、踵の内側もしっかりとバイクに押し付ければ、格段に安定感が上がります」
まさに目からウロコ。
確かに踵をステップに置いてから、両くるぶしをきゅっと内側に締めると不思議なくらい安定する。このあと、コーナリングが乱れてきた際も、気付けば踵が緩んでいたりして効果テキメンだ。いいことを習った。

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それにしても、余談だがバイクにスッと跨ったときの宮城さんの佇まいの美しさったらなかった。なんというかもう完全にアンダーコントロール、バイクを完全に自分のものにしてる感!説得力って言うのは、こういう風に匂い立つもの......本物を目前にしたときの感動がフツフツと沸いてきて泣きそうに感動しちゃったのはここだけの話である。ああこんな風に乗れるようになりたいな!と自然と「カッコよく乗ること」への憧れが増す。

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ポジションを習ったら、いよいよコースに出る。
交通教育センターレインボー埼玉 内の特設コースはさほど広くない。まるでジムカーナ場のように複雑に細かなコーナーが入り乱れたハンドリング路だ。
インストラクターのあとについて何度か周回してバイクに身体を慣らした後は、いよいよブレーキングの練習に入る。

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ここでは、教習所でも習った急制動をもう少しロジカルに勉強する。
信号が赤になった瞬間に急制動をかけ、実際に信号が点灯した場所はどこなのか、停止が出来たのはどこなのかを知る体験だ。

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年齢を重ねると、認知・判断・操作という一連の動作に遅れが出て来るのは仕方のないこと。とはいえ、年齢なんて急にドバっと重ねるものじゃないから、悲しいかな衰えって言うのは自分じゃ気づきにくいものだ。

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私も実際にやってみて、赤信号が点灯したと思ってブレーキをかけ始めたポイントも実際の動距離も、恐ろしいくらいに遅かった(涙)。
特に2輪は無茶なブレーキングをすればかならずバランスを崩す。クルマじゃ停止で転ぶことはないけど、バイクは転倒というリスクもある。一般道ではなかなか探ることの出来ない「己の限界」をここで知っておくことの重要性を身に染みて感じる結果となった。

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午後は主にバランスを磨く練習が始まる。
とにかくキツかったのは、狭いコーナーを想定したUターン練習。地味すぎる(泣)。
プログラムを監修された宮城さんご本人すら「なんちゅうしみじみした練習やねん」とおっしゃるほどの地味練なのだが、これがもう、強烈に難しいし自分の苦手を残酷なまでにあぶりだす過酷なものだった。
バイクは促進力さえあればなんとか体制を立て直すことができる。勢いがついていれば挙動はある程度誤魔化せる。だけど、超低速になったらそれこそ、乗り手のフィジカルがモノを言うのだ。ああ無情、と非力を嘆く結果になる。

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ちいさなRをとにかく細かく回る。左方向へのターンは案外に出来るのだが、右方向へのターンが悔しいくらいに出来ない。借金もないのにクビが回らない。イライラしたらますます挙動が乱れる。半クラッチを繰り返す左腕がパンパンになる。

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「地味でしょう。地味だけど、コレはコンビニで『あら、あの人素敵ね!』って言わせられる必殺のテクニックなんです。パーキングエリアでもキマったら最高にカッコイイです。でも自分のバイクで一人で練習してたらさみしい気持ちになるでしょう(笑)。だからみんなでやりましょう!」宮城さんのゲキが飛ぶ。

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そう、確かにUターンは身体の小さい女性にとっても由々しき問題なのだ。
車体が大きくなればなるほど持て余し、あわや立ちゴケ!なんてことも起こってしまう。正直こういうときにスクールカーで練習できるのはありがたい。バンパー付の車両だから、転ばせてしまっても怪我のリスクが少ないし、バイク本体へのダメージも少ない。

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さらに難関と言えば、最後に行われた「コーナリングブレーキ」もハードなものだった。
コーナーの頂点でブレーキをかけて止まる、というもので、ブラインドコーナーの頂点などで急停止しなければいけない状況に備えて練習をする。足を着ける左コーナーはたやすいが、右コーナーは車体を倒してコーナリングしたのと反対の左足を着かなければいけないために難しい。
これもよろめきつつ、コツを何度も掴ませてもらった。

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プログラムには、宮城さん自身がツーリングなどでいつもニガテに感じている操作を盛り込んであるという。本当に地味なんだけど、確かにこういうシーンに遭遇したら怖いだろうし、練習が必要なシーンではあるのに故意に再現するのは難しいものかもしれない。
大変貴重な経験をさせてもらった。

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そして、なによりもやっぱり半日乗っただけでヘトヘトになってしまった自分とも、もう少し向き合わなければいけないのだなと強く感じた。

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ホンダのライダーは40代以上の人がとても多いのだという。
そして、悲しいことに事故のボリュームゾーンも40代に集中しているのだとか。
「僕は100歳までバイクに乗りたいです。そう考えたら、これから勉強することがたくさんありますよね。僕ですら、まだ40年もバイクに乗っていませんから、まだまだ勉強です。
80年代は速い人がかっこよかった。だけどこれからは上手い人がカッコイイとされる時代です。どうか皆さん、カッコいいライダーになってください」
そう、そのために必要な練習は、決してスピードに乗せることだけじゃないのだった。

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このスクールは来年も3回開催予定。
フレンドリーな雰囲気も気負いがなくて素晴らしいから、ホンダユーザーは是非参加して欲しい。

■交通教育センターレインボー埼玉 公式サイト
http://www.tec-r.com/