マツダ「越 KOERU」の市販車が、スバル「アウトバック」のクローンにならない理由
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これまで多くの自動車メーカーが、スバル「アウトバック」(日本名:レガシィ アウトバック)の成功を目指して同じようなモデルを市場に投入してきたが、どれもあまりうまくいったとは言えない。しかし、マツダのCEOが米自動車メディア『Automotive News』のインタビューで語ったところによると、同社はそんな状況を変えるべく、クロスオーバーコンセプト「越 KOERU」の市販モデルでこの市場に挑む準備をしているという。しかし我々としては、これが本当にチャレンジすべきことなのか、また、このモデルが本当にアウトバックを狙っているのか、あるいは真似しただけの失敗作として他のクルマと同様の運命をたどることになるのか、まだ判断できずにいる。

求められる要素は至ってシンプルだ。ワゴンに似た形状、ボディに取り付けられた樹脂製ガード、一般的なクルマよりもやや高い最低地上高。しかし、これらを満たすクルマを作っても、他のメーカーはアウトバックのような人気を獲得することができなかった。その理由として考えられるのは、他社製モデルにはパッケージングの問題やブランド・イメージとの不適合が見られたこと。そして、スバルには本気で全輪駆動モデルに取り組み、そこで確固たる地位を築こうという、止まるところを知らない勢いがあったからこそだろう。

それでも、アウトバックの成功に続こうとするメーカーは後を絶たない。その例を挙げてみよう。フォードは「トーラスX」(旧名:フリースタイル)で挑戦したが、「フレックス」や、クロスオーバー的様相を強めた新型「エクスプローラー」に事実上取って代わられ、トーラスXは既に姿を消している。アウディは「A4アバント」を米国市場から撤退させ、「オールロード」のバッジとフェンダーフレアを取り付けたワゴンでアウトドア好きの富裕層を引きつけようとしたが、当初は良かった売れ行きも、現在は前年比で40%減と落ち込んでいる。猫背のホンダ「クロスツアー」(日本未発売。旧名:アコード クロスツアー)やトヨタ「ヴェンザ」(日本未発売)は、セダンのボディにハッチゲートとオプションの4輪駆動を加えただけの、アウトバックを真似た短命なモデルだったと考えられる。ダッジも数年前にトリムレベルの「ジャーニー・クロスロード」を投入したが、見せかけだけのグリルガードやブラックのホイールを装着しただけではアウトバックに対抗するに至らなかった。ボルボ「XC70」は最も健闘しているモデルと言えそうだが、同社の他のモデルと同様、ブランド・イメージは守られているものの、あまりクロスオーバーらしい仕上がりではない。スバルにとってのスバリストと同様に、ボルボ一筋のファンに助けられている面もあるのだろう。

いずれにせよ、これらのモデルはもう存在していないものが多く、生き残っていたとしても、今年度のアウトバックほど売れているモデルはない。仮に「ジャーニー」の全トリムの販売台数である9万6,718台(フィアット・クライスラー・オートモービルズはクロスロードのみの販売台数を発表していないため)に、V70/XC70、ヴェンザ、クロスツアーの販売台数を全て足し合わせても、2015年1~11月にアウトバックが達成した13万6,227台という数字には届かないのだ(数字は米国における販売台数)。



また、『Automotive News』の記事でも指摘されているように、米国で今年マツダが販売したクロスオーバーの全車種を合計しても(好調な「CX-5」のおかげで12万9,932台まで迫ったが)、アウトバック単体の販売台数には及ばない。では、なぜマツダは、半ば神格化されているアウトバックの後を追うことを考えているのだろうか? まず、そもそもアウトバックだけで本当にこのニッチな市場がすでに埋まっているのか、という問題もあるのだが、それは分からない。同社の代表取締役社長兼CEOである小飼雅道氏は、越 KOERUについて「これは全く新しいクルマだ。車高の低いスポーティーなSUVで、むしろワゴンに近い」と『Automotive News』に語っている。とすると、これは単なるクロスオーバーに似せてジャッキアップしたルーフが低いワゴンに過ぎず、機能面での拡張はない、ということになるのだろうか。それでは単にコスプレしたワゴンになってしまう。

越 KOERUのコンセプトモデルがフランクフルト・モーターショーで発表された時、これは新型「CX-9」のプレビューに過ぎないと思われていた。そしてCX-9が正式に公開された今、この両モデルのデザインに共通点があることは明らかだ。しかし、マツダに言わせれば、越 KOERUは単なるCX-9を予告するために作られたスタイリングの試作車ではないらしい。小飼氏によれば、越 KOERUは同社のクロスオーバーの中でも最も低く、走りが優れたクルマで、サイズはCX-5に近くなるという。つまりCX-5がBMW「X3」だとすると、「X4」のようなモデルになるのかもしれない。

同記事は、小飼氏が越 KOERUの市販モデルの方向性について、アウトバックを引き合いに出したと報じている。だが、今回の同社の説明では、決してアウトドア向けのモデルになるとは思えない。確かにタフなワゴンの特徴は押さえているものの、スタイリングを優先するために荷室容量が犠牲になっているからだ。ちなみに、スバルは90年代後半に「インプレッサ」のボディ・スタイルをSUV風に変えた「フォレスター」を登場させ、成功を収めている。機能面での改良がなくても、形状が良ければ売れるのだ。

他に考えられるのは、マツダが、昨今のクラス分けされたカテゴリーに当て嵌まらない、これまでにないニッチ市場に向けた、何よりも走りの性能を重視した車高の低いクロスオーバー(もしくは車高の高いワゴン)を作ろうとしているいう見方だ。ともあれ、たとえスバルを超えることはできないとしても、マツダは少なくともクロスオーバー市場という大きなパイを他社と分け合うことができるだろう。


By David Gluckman
翻訳:日本映像翻訳アカデミー