フィアット「124スパイダー」のアバルト・バージョンは登場するか?
11月のLAオートショーで新型「124スパイダー」を発表し、フィアットはついにスポーツカーの市場に復帰を果たした。当然、次に持ち上がる質問は、「フィアットはそのアバルト・バージョンを開発するのか」ということだろう。

フィアット・ブランドのディレクター、オリビエ・フランソワ氏は、「124スパイダーの高性能バージョンを検討する可能性はある。しかし、現時点では明言できない」と語っている。

124スパイダーが発表された後の取材では、フランソワ氏は記者たちに対して口が重かったが、量産モデルをベースに高性能版が登場することは、フィアットの遺伝子にも書き込まれている。フランソワ氏は多くを語らなかったものの、その血統からよりハイパワーなアバルト・バージョンが生まれる可能性は高い。フィアット 124スパイダーの発売は2016年夏の予定だから、アバルトはその1年くらい後になるだろう。

アバルト・バージョンは、強化されたサスペンションやインチアップしたホイール、サソリのマークが描かれたバッジを装備し、エアロダイナミクスも改良されるはず。カーボンファイバー製パーツも採用され(おそらくボンネット)、フィアットの個性豊かにチョイスされたカラーリングに映えることだろう。上の画像でイラストレーターが選んだ「ロッソ・コルサ(競争用の赤)」も間違いなくその1つだ。

中でも大きな関心は、エンジンのパワーがどれくらいになるかということ。可能性として高そうなのは、124スパイダーに搭載されている1.4リッター直列4気筒マルチエア・ターボエンジン(米国仕様のベースモデルは最高出力160hp、最大トルク24.5kgm)をチューンアップする方法だ。同型のエンジンは「アバルト500」にも使用されているが、124スパイダーのアバルト版ではよりトルクが増強されるだろう。フィアットはこのエンジンの最高出力を200馬力前後まで引き上げるか、あるいはフィアット・クライスラーの豊富なパワートレインの中から他のエンジンを選択することも考えられる。アルファ ロメオ「4C」の最高出力240psを発生する1.7リッター直列4気筒ターボエンジンも候補に挙がると思われる。

(変更が加えられているとはいえ)共通のプラットフォームを持つマツダ「MX-5ミアータ」(日本名:ロードスター)と同じように、124スパイダーも絶対的なパワーよりドライビング・ダイナミクスやスタイルを重視した設計だ。フェラーリアルファ ロメオ、あるいはランボルギーニに手が届かない多くのクルマ好きに、イタリア車の魅力を伝えるのが124スパイダーだとフィアットは考えている。「こういうクルマを熱望する数多くの人々にアピールできると考えています」とフランソワ氏は言う。

もちろん、アバルトの価格帯が分かるのは当面先になるだろうが、フランソワ氏によれば、ベースとなる124スパイダーは「このセグメントに見合った価格」になるという。2016年型ミアータの価格が輸送費込みで2万5,735ドル(約320万円)からなので、アバルト 124スパイダーはおそらく3万2,000ドル(約390万円)程度になるのではないだろうか。

124スパイダーは正真正銘の歴史あるスポーツカーであり、フィアットのイメージを高める存在だ。フランソワ氏も「これはまさしくイタリア車の真髄のようなクルマです」と語っている。つまり数を売ろうとは考えていないということだ。124スパイダーの米国向け販売数は年間6,000台ほどと控えめで、世界中でもおそらく1万2,000台程度だろうと、調査会社HIS Automotiveの上級アナリスト、ステファニー・ブリンリー氏は見ている。彼女の調査書にも「フィアットが124スパイダーで実現したいのは、ブランドイメージを高め続け、ブランド全体の評価を高め続けることだ」と記述がある。

新型124スパイダーには、伝説に残る先代のように、レースに参戦するのではないかという噂もあるが、そんな競技用車両としてもベースになりそうなクルマがある。今年から、新型MX-5をワンメイク・レース用車両に仕立てた「グローバル MX-5カップ」レースカーの販売も始まっているのだ。

124スパイダーという名前はフィアットのアイコンの1つではあるが、実はフィアットは別の選択肢も考えていた。1970~1980年代の量産ミッドシップスポーツカーのパイオニア的存在であった「X1/9」の名前も検討したらしいのだ。だが、124スパイダーの方が「ブランドが持つ資産的価値が上だと考えました」とフランソワ氏は語っている。ということは、「アバルト 124スパイダー」なら、さらにブランド価値が上がるに違いない。




By Greg Migliore
翻訳:日本映像翻訳アカデミー