前編からの続き

静岡市にあるタミヤサーキットは、RCカー・ファンにとっての聖地だ。タミヤ初の電動RCカー「ポルシェ 934ターボ RS」が発売された1年後の1977年にオープンし、今回のメディア対抗レースでも当時から残されている伝統的なコース・レイアウトが使用された。RCカーで初心者が間違いやすいのは、クルマが自分の方に向かって走って来るときに、つい左右を逆に(つまり自分から見た方向に)ステアリングを切ってしまうことだが、このコースはよく考えられていて、ドライバーが立っている操縦台から見ると常にクルマは水平あるいは斜めに走っているため、左右が間違いにくい設計になっている。RCカーの走行専用に作られたフラットなアスファルト路面は走りやすく、攻め甲斐のある各種コーナーも揃っているので、初心者からベテランまで楽しめそうだ。屋根のあるピットには100V電源も完備。これが普段は無料で開放されているというのだから、近隣にお住まいの方が羨ましい。



我々Autoblogチームは事前に準備をする時間が取れず、ボディの塗装を行ったのが前日の夜という慌ただしさで、サーキットに到着した当日の午前11時にはまだ塗料の臭いが残っていた。受付順に配布されるゼッケンは4番。ちょっと縁起の悪い気もするが、F1ではティレルでジャン・アレジも付けていたナンバーだ。すでに練習走行を行っているチームも多く、我々も勇んでAutoblogロードスター(1/10)の電源を入れる。なんと、これがいわゆるシェイクダウン、初走行。本当に久しぶりということで、慣れないドライバーには意外と高速コーナーの微妙なステアリング操作が難しい。「日本平コーナー」では何度もイン側の縁石をジャンプ台にしてしまい、レースが始まる前にすでにボディは傷だらけ。それでもポリカーボネイト製のボディが破損することはなかったが、レース前に行われた記念撮影では恥ずかしい思いをした。タミヤの方が仰るには「RCカーはボディがバンパー」。キズはパーツクリーナーなどをつけてキズの方向に磨けば目立たなくなるそうだ。



今回の戦いは1時間耐久レースということで、タミヤから2,200mAhと1,600mAhという2本の6.6V LFバッテリー(リチウムイオン)と、昔からお馴染み7.2V 1,300mAhのニカドバッテリーが2本、合計4本が貸与された。LFバッテリーは2,200で約27分、1,600では20分程度の走行が可能だが、ニカドは約10分ほどで電池切れになるという。これをどういう順番で、どのタイミングで交換するか。それがチームごとの作戦となる。ゴール時には電力が余る計算なので、ニカドをラストに使用することは決まっている。我々Autoblogチームは容量が大きいものから順に使うことにした





そして午後12時50分にレースはスタート。序盤はピットストップを遅らせたこともあり、一時は5位を走行することもあったAutoblogチームだが、途中で縁石に当たった時にフロント・サスペンションのアームを曲げてしまい、真っ直ぐに走らなくなった。このままでは走りにくいだけでなく他チームに迷惑が掛かる。修理をお願いしたタミヤのスタッフは、チーム・ヨースト並みの迅速な作業でAutoblogロードスターを復帰させてくれたものの、タイムロスを取り戻せるほどアタックが掛けられるドライバーは残念ながらAutoblogチームにいなかった...。しかし、このまま行けば、ひょっとしたら11位に入れる(13台中)かも...と思ったら、レース終盤に再びクラッシュ。同じアクシデントが発生するが、残り時間が少ないためチーム監督はレース続行を決意する。ところが残り1分の声が聞こえたと同時に電池切れ。止まってしまったロードスターを慌てて回収し、バッテリーを交換してコースに出たらほどなくチェッカーフラッグが振られた。結果は102周でやっぱり最下位。それでも12位の「痛車グラフィックス」チームとは同一周回数という接戦で、ありがたいことに最後まで熱い闘いが楽しめた。

見事に優勝したのはカーナンバー1、広島から来られたマツダの"ワークス・チーム"。皆さんレーシングスーツ着用という気合いの入り様で、電波を介しても人馬一体の走りは健在だ。筑波サーキットに出場したマツダ・チームのロードスターを再現したマシンは、レースを終えてもどこかのにわかチームと違ってほぼ無傷、美しい状態を保っていた。



準備不足、練習不足は否めず、結果についてはまったく期待していなかったので、最下位という結果はあまり悔しくない(負け惜しみではない)。それよりも、実に楽しかった、という思いでいっぱいだ。久しぶりに走らせたRCカーは、子供時代の気持ちに戻れた...ということは全然なく、大人になってから知った本物と同じようなモータースポーツの興奮と、クルマを走らせる歓びを味わうことが出来た。思い通りのラインでコーナーを抜けた時のぞくぞくする快感は実車に近いものがあるし、ピットクルーとしてレース中のマシンを見守る気持ちは筑波サーキットの時とまったく一緒だ。



実車のレースに比べたら、確かに体感できるスピードとスリルには欠けるが、その代わり、誰もがドライバーからエンジニア、メカニック、そして監督まで、レーシング・チームにおける全ての役割を体験できる。実車のように各部をカーボンやアルミ製の軽量な強化パーツに交換したり、高出力モーターを搭載して性能を向上させることももちろん可能だ。豊富に用意されているチューニング・パーツは数百円から数千円程度と、実車に比べればはるかに手軽に楽しめる。さらに、今回使用したシャーシには、タミヤから「Mシャーシ」用として発売されている別の車種のボディを載せることも簡単で、そのラインアップには現行モデルからヒストリックカー、日本車に欧州車と、様々なものが用意されている。マツダのTVCMのように、初代NA型「ユーノスロードスター」とこのND型ロードスターを一緒に走らせても、RCカーならレースになるし、1つのシャーシで気分によってボディを使い分けても楽しいだろう。また、タミヤの方から聞いたお話では、ボディを交換すれば空力性能の違いによって、クルマの挙動も実車と同様に明らかな変化が体感できるそうだ。

左がノーマル 右はチューンアップしたシャーシ

どんなにクルマが好きでも、趣味としてそれを存分に楽しむことが許されない事情を抱えている人は多いはず。電動RCカーは、少しでもそんなストレスの解消に役立つのではないかと思った。もちろん、実車でレースをしているプロのドライバーや、誰もが憧れるスーパーカー、クラシックカーを所有するエンスージァストの中にもRCカーを趣味で走らせている人は少なくないので、きっとRCカーならではの奥深い魅力もあるに違いない。だが、いきなりそんな領域を知ることは難しい。取っ掛かりは"実車の代わり"として、憧れのクルマを手に入れ、自由に走らせ、レースをして、チューニングして、そして好きなだけ買い換えて(あるいは買い足して)、存分に楽しむことだ。「遊びをせんとや生まれけむ」とは平安時代に作られた有名な歌謡の一節だが、最近あまり遊んでいないな、と思うクルマ好きに、手軽に始められる電動RCカーを是非ご提案したい。


タミヤ 公式サイト
http://www.tamiya.com/japan/index.htm