模型メーカーのタミヤが販売する1/10スケール電動RCカー(ラジオ・コントロールカー)シリーズに、ND型「マツダ ロードスター」が登場する。11月下旬に予定されている発売に先駈け、メディア対抗1時間耐久レースが静岡県のタミヤサーキットで開催された。Autoblog Japanチームもこれに参戦を表明。担当者は数十年ぶりにプロポを握った。

それまで子供向けの玩具か大人の趣味というどちらかに大別されていたRCカーの世界に、子供も楽しめるホビーとしてのRCカーが、手軽に買えるようになったのは1970年代後半のこと。当時のグループ4レーシングカー「ポルシェ 934ターボ RS」を、タミヤが1/12スケールの電動RCカーとして製品化してからだ(ちなみに呼称として一般的な「ラジコン」という言葉は別の会社が商標登録しているため、タミヤではRCカーと呼ぶ)。

もっとも、その時はまだニッカドバッテリーさえ一般的ではなく、子供にはランニングコストの高い単2乾電池4本という仕様だったが、同時期に巻き起こったスーパーカー・ブームと、「ランボルギーニ カウンタックLP500S」など後発の製品がリンクしたことにより、子供たちの間でもRCカーは大流行。「競技用スペシャル」「サンドイッチタイヤ」「ブラックモーター」といった言葉を懐かしく思い出す読者の方も多いのではないだろうか。



スーパーカー・ブームが去った後も、ホビーとして発展していった電動RCカーだが、数十年ぶりに手にしてみると、その大きな進化に感心させられる。1970年代にはジュラルミン製の板に過ぎなかったシャーシは、ABS製セミモノコックのフレームに4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備し、送受信機には2.4GHz帯が採用されているため、昔のように同じバンドのプロポを持っている人同士は(バンドを変更する)高価なクリスタルを交換しないと混信して一緒に走れない、ということがなくなった。だが、筆者が最も驚いたのは、今回発売になるマツダ ロードスターの価格が税込み1万2,744円であること。1978年に発売された当時の筆者の愛車、「ブラックカウンタック」は確か1万2,000円だった。つまり、造りは大幅に進化しているにも拘わらず、40年近く経った今も価格は変わっていないことになる。プロポと呼ばれる送受信機、ステアリングを作動させるサーボ、電子制御式スピードコントローラーのセットも、タミヤの入門機「ファインスペック2.4G 電動RCドライブセット」なら、車両に搭載する走行用7.2Vバッテリーと充電器まで付属して1万4,904円。1970年代末ならこれだけ揃えれば2万円ほど掛かったはずだ。



もっとも、このマツダ ロードスターのキットは入門用に位置づけられる製品であり、よりハイスペックなモデルにはもっと高価なものもある。タミヤの方によれば、実車のオーナーをはじめ、マツダ ロードスターに関心のある人々が、RCカーにも興味を持ってはじめる、あるいは久しぶりに手に取ることを想定しているそうだ。そのため、実車と異なり前輪駆動の「M-05 シャーシ」が採用されている。車体のフロントミッドに搭載されたモーターが前輪を駆動するというレイアウトで、これはモデルカーとしてのリアリティよりもRCカーとしての扱いやすさを優先したためだ。40年近く前からRCカーで使われている540タイプと呼ばれるモーターも初心者には最適。(ちょっと練習すれば)速すぎて操縦が難しいということもなく、適度に爽快なスピードが味わえる。インナースポンジを内蔵する中空ゴムタイヤはスポンジ・タイヤより寿命が長く、トレッド面が消えるまで使えるという(そこまで減っても走行は可能だが、タミヤのレースでは車検をパスできない)。

この組み合わせは完全な安定志向で、例えばフルスロットルのままでも送信機のステアリングを目一杯切ればタイヤのグリップがブレーキとなり、いとも容易く曲がっていく。よりハイスピードで、タイトに曲がりたいなら、コーナリング中にスロットルオフにする、いわゆるタックインを使わなければならない。この辺りは実車のロードスターと大きく異なる操縦性ということになるが、操作に慣れたら後輪駆動の「M-06 シャーシ」に買い換えてもロードスターのボディは装着可能だ。これならドリフトやテールスライドも可能になるだろう。一方、ノーマルのサスペンションは軟らかくロールする動きがちょっとロードスターらしさを感じさせる。今回のレースでは「スーパーグリップタイヤ」を使用したが、楽しみのために走らせるだけならもう少しグリップが控え目のタイヤでも面白そうだ。タイヤは2本セットで、1,000円あればお釣りが来る。



今回発売されるマツダ ロードスターのRCカーは、既存のM-05シャーシに新デザインのボディとホイールを組み合わせたものということになる。ボディは軽量で丈夫なホリカーボネイト製。ハサミで切り抜き、ウインドウや幌の部分をマスキングして、裏側から専用塗料で着色する。マスキングを使った塗装は慣れないと境目が滲んでしまうこともよくあるのだが、このロードスターではAピラーやウインドウとボディの境界線に付属の黒いステッカーを張ることで上手く隠せるようになっていた。ヘッドライトはもちろん、フロントグリルなど黒い部分は全てステッカーを貼るだけなので、塗り分ける手間が掛からない。ただし、幌はボディ色と別に黒で塗り、さらにツヤのない布の質感を表現するために「フラットクリヤー」を吹く必要がある。開発されたタミヤの方にお訊きしたところ、ポリカーボネイトという素材は「膨らませるのは容易だが、絞り込むことができない」ということで、特にボディ・サイドの中央部を「それらしく見せるため」に苦労したそうだ。サイドシルには黒いグラデーションのシールを貼ることで陰を表現し、視覚的に成型不可能な絞り込みを感じさせる工夫が採られている。基本的な造形の再現性は非常に高く、フロントバンパーやヘッドライトのエッジ、そしてフェンダーの絶妙な曲線も美しい。特に光が反射すると、ボンネットとフェンダーに実車と同じ綺麗な映り込みが見られることに感激した。うん、これは紛れもなくNDロードスターだ。



他社の自動車系メディアの皆さんは、9月に筑波サーキットで開催されたロードスター4時間耐久レースのマシンを再現しているところも多かったが、Autoblogチームのカラーリングはピットで見ていると判別しづらく、特にRCカーではドライバーはともかくピットクルーが自チームの車両をすぐに見付けられる必要があるため、新規にカラーリングを考案。ポリカーボネイト製ボディの特徴を逆に活かし、NASCARのような雰囲気を狙ってみた(つもり)。幌を塗り分けるための黒い塗料を買い忘れたから、というのは内緒だ。まず、Autoblogのロゴをマスキングテープで作成し、ボディの裏から貼って、メタリック・レッドで塗装。これはマツダのソウルレッドに敬意を表して選んだカラーだ。乾いたらマスキングを剥がしてパールホワイトを吹き、仕上げにウインドウ部をスモークで塗った。自分たちのスキルを超えたアイディアを実践してしまったため、近くで見るとかなり粗が目立つ。だが、サーキットでは十分、Autoblogというメディアをアピール出来たのではないかと密かに自負している。


タミヤ 公式サイト
http://www.tamiya.com/japan/index.htm