フォルクスワーゲンの排出ガス不正によって、米国内で59人の寿命が縮まったという研究結果が明らかに
フォルクスワーゲン(VW)排出ガス不正問題に対するこれまでの報道は、同社の法的あるいは経済的な影響に関するものが多い。VWは巨額の罰則金に直面する可能性があり、米国内ではVW米法人のマイケル・ホーン社長が公聴会で証言を行った。そして今回、英国の学術誌『Environmental Research Letters(環境研究報告)』で発表された新たな研究は、このスキャンダルの着眼点を人的損失へ向けた内容となっている。

ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、問題の2.0リッター直列4気筒ターボ・ディーゼルと違法なディフィート・デバイス(無効化装置)が引き起こした大気汚染が、米国内だけで59人の寿命を縮める直接的な原因になった可能性があると結論づけた。

この59人という数字は、米国の総人口約3億2,000万人に対して考えるとそう多いとは思わないだろう。しかし、VWがリコールを行う2.0リッターのディーゼル・エンジン搭載車は、全世界で1,100万台に上り、米国内で販売されたのはそのうち48万2,000台のみだ。計算を簡単にするため、ディーゼル車50万台につき60人の寿命を縮めると考えると、全世界では1,320人の寿命が縮まる計算となる。もちろん、これはあまりにも大雑把な計算であり、両大学の研究調査方法にざっと目を通しただけも、全世界での正確な数値を割り出すためには、米国での数値を掛け算しただけで算出できないことは明らかである。しかし、このVW排出ガス不正問題が原因で犠牲となる人数の目安にはなるだろう。

両大学の研究員は、この影響によって早期死亡する人数の算出からさらに一歩踏み込んで、この早期死亡者が出ることによる社会的負担額も割り出しており、それが4億5,000万ドル(約545億円)に上ると算出した。そして、もしVWが米国内にある問題のクルマを来年末までに全て改修できれば、130人の早期死亡を回避することができるだろうとしている。また、問題のディーゼル・エンジンが排出する高濃度NOxから光化学反応によりオゾンが生成され、そのオゾンに人間がさらされることが大きく懸念されると警告している。その一方、今回の研究では、オゾン暴露は本不正問題に起因する早期死亡原因の13%を占めるに過ぎないと指摘。残りはPM2.5(微小粒子状物質)が原因だとしている。

もし時間に余裕があり、研究結果を通読したいという方は、こちらから全文(英語)をお読みいただける。


By Brandon Turkus
翻訳:日本映像翻訳アカデミー