HONDA NSX
"自由な移動の喜び"と"豊かで持続可能な社会の実現"というのがホンダの掲げる大きなテーマである。その背景には、本田宗一郎氏の『チャレンジして失敗を恐れるよりも 何もしないことを恐れろ』という言葉がある。これがホンダのモノ作りの原点であり、この言葉を核として、ホンダは技術開発に夢を乗せてこれまで様々なチャレンジを行ってきた。
2足歩行ロボットASIMOの開発や、ホンダJETは、培ってきた技術の広がりの一例といえるし、EVやFCV車両の開発は、CO2削減、脱化石燃料へのアプローチとして、持続可能な社会の実現のためのチャレンジである。
そしてもう一つ、ホンダが重要だといっているのがFUNである。
ホンダは、環境への取り組みについて、「妥協なき『FUNと環境』の追求」を謳っている。環境性能を、効率だけで推し進めていくことの味気無さを暗に言っているのだ。
新型NSXは、妥協なきFUNと環境の追求の、一つの答えとして開発されたクルマということができる。

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その新型NSXのプロトタイプに試乗することができた。

HONDA NSX
まずは概要を説明しよう。パワーユニットは、3.5L V6ツインターボエンジンとモーターによるハイブリッドである。エンジンはミッドシップに縦置きに搭載。前輪にツインモーターユニット、後輪エンジン+クランク直結式モーターで駆動。組み合わされるトランスミッションは9速DCT(ツインクラッチ式セミオートマチック・トランスミッション)。
エンジンは75度V型6気筒で、ドライサンプシステムを採用。ツインターボと、デュアルVTC(吸排気バルブ・タイミング・コントロールシステム)に加え、筒内直噴+ポート噴射燃料システムを採用。
最高出力は573馬力/646Nmを発揮する。
駆動方式は後輪がエンジン+モーター、前輪がツインモーターによる4WD=SH-AWD。前輪に搭載される2個の独立したモーターは駆動力を発生するのはもちろんのこと、左右輪のトルクベクタリングを行い、旋回性能のアシストに使われ、リヤの直結モーターは、発進のアシストと、アクセルレスポンスの向上に使われている。

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フレームはアルミ複合材を採用した高剛性モノコックボディとなっており、アルミ押し出し材、アルミプレス成型のほか、アルミアブレーション鋳造という手法を用いた高剛性部材を骨格結合部に採用。またアルミにこだわらず、スチール材も使われ、超ハイテン三次元熱間曲げ焼き入れを使ったスチール部材をルーフフレームに採用し剛性アップを図っている。
その結果、先代NSXと比べ、動的ねじり剛性で200%、静的ねじり剛性で100%ボディ剛性がアップしている。
ちなみに車両重量は1,725kg。

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HONDA NSX
印象を簡単に言ってしまえば、ものすごく速いのに、ものすごく乗りやすい、文字通りエブリデイ・スーパースポーツといえる。
試乗距離があまりにも短かったため詳細なところまで言及することはできないが、クルマに乗り込むのに、気合を充実させて...などという気構えは全く必要ない。静かにアイドリングするエンジンは振動が少なく、まったくもってジェントルで、まるで超高性能を意識させない。

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発進も、DCTとモーターアシストのおかげでスムーズかつ軽々と走りだす。モーターのトルク特性を意識的に使っているのだろう。とても1.8t近い車重があるとは思えない。CR-Zでモーターターボの考え方を取り入れ、エンジンのトルクの細かい低回転域に積極的にモーターの駆動トルクを使うことをやっていたが、NSXではそれをもっと明確にやっている。
しかも、足回りは適度に引き締まっているものの、突っ張るような硬さがないし、タイヤも路面をヒタッととらえている接地感があるので、走り出した瞬間から安心できる。

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でも、スムーズで軽快なのは、ジェントリーにアクセルを踏み込んだ時に限られる。無造作に、深くアクセルを踏み込むと、その瞬間、前後3つのモーターがフルパワーで駆動力を発揮し、かつ素晴らしくレスポンスのいいターボエンジンパワー(トルク)が一気に炸裂する。
発進の最初はモーターの駆動トルクが機能し、それを追ってすぐにツインターボエンジンが仕事をはじめ、大排気量ターボの豪快なトルク感がそれを引き継いで車速をイッキに伸ばしていく。
9速セミオートマはドライバーがいちいちクラッチの断続をやっていたのでは到底間に合わない素早いシフトワークでシフトアップしていき、ほんの10秒程度で180km/hのスピードリミッターにぶち当たる。
その間の加速感は超絶。モーターは完全にモーターターボとしてレシプロエンジンの不得意な低速低回転域をアシストする。だから、タイヤが2転がりくらいしてクラッチが完全につながったところから、アクセルを全開にすると、パワーの盛り上がり感など一切なく、いきなり超強烈なトルクで加速を始めるのだ。

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4WDなので、リヤタイヤだけが空転して暴れまわるということもない。もっともシステム的にはフロントは電気駆動で機械的に後輪とつながっていないので、後輪だけがホイールスピンしても不思議ではないのだが、トラクションコントロールが上手に機能しているのだろうか。
このあたりは実際にどんな制御が行われているのか改めて試してみたい。

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テストコースでの試乗は180km/hで速度リミッターが作動してしまったので、高速域の安定性がどのくらいのレベルにあるのかは何とも言えない。というのは、安定していて、限界がはるか先で見えないからだ。

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グッと話を現実に戻して、30km/hとか40km/hでごく普通に走らせたときでも、タイヤの接地面がベタッと路面に密着しているような接地感があり、それに伴う安心感がある。このあたりは良い意味で乗用車的だ。
一つ気になったのは、170km/hくらいでレーンチェンジして、ハンドルを右から左(あるいは左から右)に切り返した時、フロント左右輪の駆動トルクの出方にちょっと違和感があった。左右輪の非締結感(実際機械的にはつながっていないので当たり前ではあるけれど)がなく、ステアフィールの違和感があった。あるいはトルクベクタリングによるものなのかもしれないが...。
スポーツカーの命ともいえるステアフィールの部分なので、このあたりは当然市販までにはリファインされるものと思うが、今回の試乗で気になったところではある。

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クルマの説明では、フロントデフを持たない分トルクベクタリングによって曲がる力を強く出せるという説明があったが、それをあえて抑えて違和感を消すという方法もあるのではないかと思う。
FUNの柱を旋回スピードに置くのか、テイストに置くのか......といったら大げさかもしれないが、少なくともFUNを感じるのは操るドライバーなので、そのあたり最終的な落とし込みは大切だと思うからだ。
文句なしのパフォーマンスを備えているだけに、ここからさらに磨き込まれて登場するであろうNSXが、最終的にどんなふうに仕上げられるのか興味がある。

■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp