YAMAHA YZF-R1
なかなかこんなチャンスはないだろう。今年の鈴鹿8耐で優勝したマシンそのものをサーキットで試乗させてもらった! ほぼノーマルのマシンで競う「スーパーストック(SST)クラス」でトップだったゼッケン14「team R1 & YAMALUBE」のヤマハ YZF-R1だ。

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今年の鈴鹿8耐、ヤマハは強かった。YZF-R1 新型投入を機に、2002年以来13年ぶりにワークスチームが復活。ゼッケン21「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」が、全日本最高峰クラスJSB1000チャンピオンの中須賀克行、二輪ロードレース最高峰のMotoGPで活躍するポル・エスパルガロ(スペイン)とブラッドリー・スミス(イギリス)の3選手で、1996年以来19年ぶりの総合優勝を果たす。周回数204、2位に1分17秒411の差をつけての完勝だった。

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さらにSSTクラスでも「team R1 & YAMALUBE」が、時永 真、藤原儀彦、ジェフリー・デ・フリースの3選手で総合21位、クラス優勝と大健闘。つまり、ヤマハ YZF-R1はトップクラスのFormula EWCとSST、両クラスでダブルウィンを達成している。

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そして今回、わたくし青木タカオが乗ったのはゼッケン14「team R1 & YAMALUBE」のR1。もちろん、決勝レースも鈴鹿で見ていた。ファン目線で眺めていたあのときから約2ヶ月、再び対面したのはスポーツランドSUGOのレーシングコース、そのピットだった。

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目の前にあるのは紛れもなく正真正銘の8耐レーサーであり、決勝レースで走ったときの汚れもそのままにした貴重な1台。只者ならぬ佇まいでそこにいて、オーラさえ漂う。
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考えれば考えるほど、ビビってくる。なんといっても、300km/h超の壮絶バトルのなか194周をマークし、総合でも21位と大健闘したモンスターマシン。8時間という長丁場のレースの中、1周5.821メートルのコースをわずか2分13秒強で走ってしまうのだから凄まじいとしか言いようがない。

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ロードレースの参戦経験はおろか、国際格式のレーシングコースを走行したことさえもほとんどない自分が簡単に乗れるものではないことくらい、わかっている。ゼッケン14をつけたR1の眼光鋭いフロントマスクに睨まれ「おまえ、本当に大丈夫か......!? 転んだら承知しないぞ」と、R1に脅されているようで、跨る前、思わず手を合わせたくなる。
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前後タイヤには何やら被せられ、電源コードが繋がっている。そう、スリックタイヤがタイヤウォーマーで暖められているのだ。スリックタイヤって、ゼンゼン滑らないと聞くが、いったいどんな感じなんだろう......。もちろん「スリックタイヤ初体験です」なんていまさら言えない。メカニックさんたちが忙しなく、いろいろと準備を進めてくれていて、いったいどうしたものか、なんだか申し訳ない気持ちになる。完全に場違いなところにきてしまった。今日は「ちょっと調子が悪い」とか何とか言って帰ってしまおうかとも終わったが、そんなわけにはいかないし、「もう、どうにでもなれ!」と思いつつ、エンジンをスタートした。

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ギヤチェンジペダルは逆シフトだ!。「冷静になれ、自分」と言い聞かせつつ、何食わぬ顔をしてギヤを描き上げ、ローに入れた。時永さんを含め、みんながピットから自分を見ている。メカニックさん、そしてこの機会を用意してくれたヤマハ広報の担当者らにあまり心配をかけては申し訳ない。本当は泣きたいくらいビビっているのに、平然を装ってピットロードを走り出す。

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ローギヤのままでも軽く50〜60 km/h出る。これはノーマルR1でもそう。デジタルタコメーターのバーグラフが表れるのは8000rpmからで、そこにいたるまではもしやノーマルR1の方が力強いのかも。レースで使わない回転域なのだから、当然と言えば当然だろう。

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8000rpmから加速が一段と鋭くなり、可変吸気ファンネルが高速レンジに切り替わる10,500rpmを超えるとさらにパワーが盛り上がってくる。しかし、レーシングライダーではない自分。そんなスイートな回転域をキープして走るなんて、とうてい出来ない。

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なのにそこを外しても、マシンはこのへっぽこライダーを気持ちよく走らせてくれるのだ。レーシングコースをまるでツーリングペースで周回する始末だが、それでも面白いのだ。

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ストレートでは全開走行を続けられず、第1コーナーのはるか手前でアクセルを戻し、ブレーキング。キャリパーもマスターシリンダー、ホースさえもノーマルなのに、走行中は「やっぱり効き、タッチともに別次元だなぁ」なんて感心。グリップの良いスリックタイヤが、ブレーキの印象を良くしているのかもしれない。

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ハンドリングも軽快。狙ったラインにスッと入っていき、とにかく身のこなしが軽い。当然、スリックタイヤの限界なんて感じることはできず終いだが、20分ほど汗をかくほど乗らせてもらった。

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とにかく、転ばなくて良かった。そして、楽しかった。なんせ軽い。もちろんポテンシャルはハンパなく凄まじく、持て余すばかりなのだが、チンタラ走ってもマシンがそれなりに気持ちよく走らせてくれるのだ。

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残念ながら「team R1 & YAMALUBE」のR1の凄さを分析するほどの技量や経験がなく、どの点でライバルを凌いでいたかなど語ることはできない。

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ただ言えることはコントロール性の良さが際立ち、8時間という長丁場のレースに求められるのは絶対的な速さはもちろん、扱いやすさも必要なんだろうなってこと。

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乗りやすいということが結果的に速さ、そして勝利に繋がるのかもしれない。2〜3年くらい前だったか、全日本モトクロスのIA1チャンピオンのマシンに乗せてもらった経験もあるが、そのときの第一印象もやはり想像していたのに反して「扱いやすい」だった。

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ライダーの時永 真さんは言う。「SSTクラスのマシンはほとんど改造が許されず、きわめて市販車に近い。タイヤやタンク、ブレーキを耐久仕様にする程度で、ほぼ市販車のままです」

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※市販車では容量17リットルの燃料タンクは、レギュレーションに合わせ24リットルに拡大。RC甲子園製のバックステップは、バンク角を稼ぐために10mmほどアップ。マフラーはキットパーツのアクラポヴィッチ製。スイングアームはノーマルで、ドリブンスプロケットは41 42Tとなっている。

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つまり、YZF-R1のそもそものポテンシャルが高いということだ。市販車にも乗せてもらったが、8耐レーサーはその延長線上にある。たしかに加速感や軽快感はケタ違いだが、パワフルさ、俊敏な動きは、ノーマルでも目を見張るものがある。

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「team R1 & YAMALUBE」、じつはライダーを含め、チームメンバー全員がヤマハの社員なのだ。監督の藤原英樹さんはニューYZF-R1の開発プロジェクトリーダーで、時永選手はSP開発部で実験走行を繰り返した張本人。藤原儀彦さんは元ヤマハファクトリーライダーのレジェンドであり、ジェフリー・デ・フリースさんもヤマハモーターヨーロッパのテストライダーだ。

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もちろん、過去の戦績も素晴らしいもので、時永さんは鈴鹿8耐でクラス優勝、総合9位入賞を果たした経験があるし、藤原さんは全日本ロードレースで3年連続チャンピオンに輝いた実力の持ち主。ジェフリーさんもWSB(ワールドスーパーバイク選手権)で活躍した。

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マシン開発では、操縦安定性を時永さんが、エンジン制御系を藤原さんが、電子制御サスペンション系をジェフリーさんが担当。「この3人ならマシンを熟知しているし、面白くなる」と時永さんが思い、「この素晴らしいR1で、どうしても8耐を走りたい」と会社を説得したという。
そんな社員チームの目標だったのは、「R1こそサーキット最速、それを証明する」ということ。今年の鈴鹿8耐で、ヤマハはそれを成し遂げた。

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■ヤマハ発動機 公式サイト
http://www.yamaha-motor.co.jp