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最近、クルマを取り巻く技術の変化や進化を感じている方も少なくないのでは?
IT技術の進化がクルマはもちろんカーライフまでを変えつつある。
今後、それはどうなっていくのだろう。
企業のインフラ/システム構築に優れた企業、という印象を持つIBMも近年、自動車マーケットにIBMらしいアプローチを始めていることがわかった、というのが今回の内容だ。
社名こそ明かさぬ、明かせず...なビジネスが多いであろうIBM(という印象)。

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最近では日本IBMがIBMのコグニティブ・コンピュータシステム(人工知能を持つ)"Watson"とソフトバンクが開発する人と会話のできるAI搭載ロボット"Pepper"を連携、業務展開を始めた。余談だが、Pepperは先日も二子玉川駅で記念撮影を求められ、大忙しのようでした。

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マツダはIBM社製の"SoftLayer"をグローバルな情報処理システムに採用すると発表。これは情報処理速度や能力に秀でたデータセンターのようなものゆえ、カタチあるクルマに具体的な装備として備わるものではない。

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PSA(プジョー・シトロエン)グループも今年4月、コネクティッドカーシステムを共同開発すると発表している。これはユーザーの車両や走行情報を分析しサービスに繋げる(コネクト)という意味が強い。
ITを使った異業種、たとえばより個々の走行データに沿った保険システムの開発など、これまでにないサービスを今後やっていこうという発表をしたばかりと...と言えるか。
マツダやPSAの場合は、今後どう活かしていくのかという段階だという。が、この業界、いろんなことが進み始めると実現は思ったよりもスピーディかもしれない...?
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今回の本題は今後の自動車業界がどう変わっていくのかを知る取り組み、日本IBMが今年行った『Automotive 2025』というリサーチについてについて、日本IBMで自動車業界を始めとする企業にコンサルティング・サービスを提供するGBS事業パートナーの安藤 充氏に話しを聞いた。

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"これは10年後の自動車業界がどう変わっているか"を世界21カ国(うち8割が欧米と日本の企業)、175人のエグゼクティブに同様のインタビューを対面で行い、その結果をまとめたものであります。
今後のビジネス方針を決める際、他の企業が今後の動向をどう読み、どんな風に考えているのかを知りたいという企業への日本IBMサービス(ビジネス)の一つである。ちなみに今回が2回目であり前回は2008年に行っている。対象の6割は自動車業界関係(完成車メーカーやサプライヤー)であり、ほかには流通やモビリティフィナンシャル(保険)、情報提供やプロモーションを行う業界団体や政府、学会、メディアにもインタビューを行っている。

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「このデータをもとにIBMが世界中の大手企業のエグゼクティブと繋がりを持ち、ビジネスにするというシナリオか?」と筆者が単純かつ低俗な思惑を抱くも、このデータ作成と結果のフィードバックこそが一つのプロジェクトだった。
"まわりはどう考えているのか"という情報を丁寧に収集し、企業に伝える。あくまで業界を横通しで見てビジネスチャンスを広げる指標となるのだろう。

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細かな質問内容については画像をご確認いただきたい。1つの質問に対する結果から多くの考察が可能だそうだ。が、今回はそんな中から日本IBMの方が色々な人に紹介すると面白いと言われる例を説明してくださったので、さらにその中からいくつかを紹介させていただく。そのなかには少々衝撃的な結果も含まれているのだった。

まず、クルマの未来について。
これはグローバルのエグゼクティブと日本のエグゼクティブとでは意見が異なった一例だ。2025年、"クルマ業界にインパクトを与える3つの外的要因(気にすべきもの)"では「技術の進展」が前回同様に最も多くのエグゼクティブたちが重要と答えた。

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興味深いのは「消費者の期待」について。グローバルのエグゼクティブの55%が重要と回答したのに対し、日本は20%。グローバルでは前回の25%に対し50%に上がっている。が、「日本は1番でも2番でもなかった。なぜでしょう?」と日本IBMの 安藤 さん。
他の結果も含め日本は"技術とその他"みたいなものになっている。消費者への期待は下のほう。これは消費者の期待に応えないという意味ではなく、クルマづくりに際し消費者の声を(極端に言えば)重要とするか否かである。「日本は消費者が答えを持っていると思わない。いいプロダクトをつくって消費者の結果を見る」という考えが多かったそうだ。
 一方のグローバルでは消費者のニーズをダイレクトに聞き入れプロダクトに反映するという考え。どちらも消費者に喜ばれるプロダクトを造るというスタンスは同じだが、アプローチの違いがあると安藤さんはいう。日本の企業でも消費者が答えを持っていると答えたエグゼクティブもいるだろう。が、確かに完成車(メーカー)まかせのユーザーも確かにいるだろう。"プロダクトアウト=作り手がいいと思うものをつくる"という発想が日本はまだ根強いのも確かだ。

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例えばジャガーが本国でトライアルを開始しているバーチャル体験システム。これは販売促進の頼もしいツールとしてだけでなく、お客様がどういったところに興味を持つのか。触ったり開けたり、よく見るところを知る機会(データ)にもなり今後のクルマづくりに生かすこともできるのだ。プレミアムブランド系メーカーほど内外装の色も素材も一つの価値として豊富であり、選ぶ側のこだわりも強まる。が、日本は"つるし"の文化が根強く、"オーダー"に対する個人の価値やこだわりがなかなか育たないのかもしれない。日本人には日本人向けの商売があって、しかしグローバルとのズレがあるのか。それにしてもなんだか生々しい結果だ。
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パーソナルモビリエティについてもグローバルでは捉え方も含め変化が大きかったそうだ。5-6年前、グローバルではパーソナルモビリティを2人乗りくらいのモビリティと捉えていたが、今回は物理的なクルマよりインフラ=移動手段ととらえていることが多いように見えたそうだ。
ウーバーの登場しかり、タクシーやレンタカーも含めたサービスの変化が新しいビジネスを生むという可能性に目を向けている。
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クルマの購入方法についても変わっていくと考えるグローバルのエグゼクティブが多いようだった。インターネット販売の登場。テスラは自社サイトですでに行っているが、BMWでは、i3が日本で初めてアマゾンで購入できるようになった。賛否はさておき「新しい」と多くの人が思っただろう。
スタディのなかでは半分以上が販売チャンネルそのものが変わると答えたそうだ。具体的にはディーラーを中心とした販売の仕方やサービスの仕方がソレにあたる。日本はディーラーがなくなることはない、と信じているから触れてくれるな、という意見が多かったそうだが、一方ではディーラーの役割がどう変わっていくのかという議論もすでに始まっているようだ。

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例えばBMW i3をアマゾンで購入できるようになったというのも、ネットが入り口になるだけで、サービスなどはBMWが行う。ポジティブに考えれば入り口が一つ増えたと言える。オンラインやインターネットの活用をすれば、お店では得られない情報や他の人たちの忌憚のない声が入るようになる。「排除ではなくどうやって取り込むのかが今後のキーになってくるのかもしれない。多くのエグゼクティブたちも"この流れは止められないと思っている"と思います。とすれば、いかに早く自分のものとして取り込むのか、これは競争になる」、と安藤さん。

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ちなみにこの結果を各社にフィードバックするタイミングがBMWのニュースの前と後では反応が違ったそうだ。「ここで興味深かったのはデジタルの力」だと安藤さんは言う。たった一つのイベント(BMWのニュース)で多くの、とくに偉い人の意見が変わるんだということ。デジタルのメッセージの力、ある意味怖いけれど、そういうことが今後もありながら変わっていくんだろうな、と感じた一件となったそうだ。
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クルマは自分で持つものか借りるものか、所有から利用への考え方について。
半分以上のエグゼクティブが利用へと変わるだろうと思っている、あるいは覚悟しているようだ。完成車メーカーのグローバルでは5割。日本はコンサバで2割くらい。これは気持ちとして売りたいのだ。
この変化に対しては「作る側=完成車メーカーは、台数が減るのではなくて使う形態が変わる」と考えるといいらしい。すると、買えば自分のものとしてキレイにする。借りるとしたら汚いまま借りるわけでも貸すわけでもなく、キレイにする人が要る。すると台数が増えればこのサービスがビジネスになる。「持ち家と賃貸の家みたいな感じですね。このように他の業界のビジネスモデルを取り入れること、意外に多いんですよ」と安藤さん。 "所有か利用か"で変化するビジネス、発展するビジネスもあるのだ。
これに関連してもう一つ。価格に対する考え方の話だ。一台のクルマを購入する場合、例えば喜んで一台が購入できる場合と、已むに已まれぬという場合とがある。普段はファミリーカーでもいいけどたまにはカッコいいクルマにも乗りたい。そういうユーザーに対するオーナーシップの一提案として、支払う金額でメイン車種が決まり、ときどきコレとコレも使えるみたいな、リゾートマンションのオーナー制度のような利用方法も考えられるのだ。こちらの例も他業界のビジネスモデルを用いた発想の転換。購入するのは一台のクルマではなくサービス(システム)を買うという考えも確かにアリだ。

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すると...。自分好み=パーソナライズの技術やシステムもますます求められるようになるのではないか。利用するクルマでも自分のクルマのように使えるパーソナライズの重要性。グローバルでは81%のエグゼクティブが認識しているようだ。
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例えばAppleのi―Tunesはデバイスを越えたサービスが可能なように、どんな情報やデータを移すのか移せるのか。さらにその範囲をブランド内か自社内か、はたまたメーカーを越えてでも可能にするのかでビジネスの可能性も変わる。ほとんどのエグゼクティブは自社内は可能にすべきとの意見。一方でナビメーカーなどはメーカーを越えたマッチングシステムを広げたいと考えて当然。ココが完成車メーカーとサービスをするメーカー、サプライヤーとのせめぎ合いとなるかもしれないと安藤さん。

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自動化はどこまですすむのか?
IBMはどこまでできるかではなく、"どこまで普及していると思うか"を聞いたそうだ。2025年までに部分的な自動化が進むと回答したエグゼクティブは84%。

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対して高度レベル=完全な自動化はできるところもあれば、できないところもあるという見解だ。技術的にはできるけど、俺たちがつくりたいクルマじゃない気がするという個人意見もあったそうだ。
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2020年東京オリンピックではエリア内での自動化はあるかもしれない。が、2025年時点で一般道路では無人(も可能となる)自立走行可能なクルマとの共存協調(インフラ)はまだないだろうと。
政府の規制や省庁の横の連携、システム構築が必要なのは筆者も実感としてある。それが企業間の連携によるクルマとクルマ、クルマと人との繋がりにつながる。これについては各国の行政の取り組み方によっても歩幅は異なるだろう。
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一つの質問がどのように今後の自動車業界を変えていくのか。
『Automotive 2025』はあくまでもビジネスソースとしてのリサーチだ。企業がこのフィードバックをどう活かすか。先に挙げたのはあくまでも一例だ。
ただクラウドだとか太い海底のLANケーブルがビッグデータの扱う量も質もスピードも変えること。例えばマーケットリサーチも個人ユーザーのリアルな情報の収集が可能になるとクルマとメーカーを直接繋ぐ貴重な生データに変わる(もちろん個人情報の扱いについても今後様々な議論を経て活用の有無や内容は変わっていくだろう)。するとプロダクトアウトという考え方も変化していくのだろう。
すでに一般ユーザーにも同様のインタビューを行い、その結果もまもなくまとまるそうだ。

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■IBM 公式サイト
http://www.ibm.com/jp/ja/