MAZDA KOERU
9月15日、ドイツ・フランクフルトで開催された第66回フランクフルト国際モーターショーにおいて、マツダは次世代クロスオーバー・ビークルを想定したデザイン・スタディ、「越 KOERU」をワールドプレミアした。

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この「越 KOERU」は、マツダのデザインテーマである"魂動(こどう)- Soul of Motion"をベースに、日本的な奥行き感のある造形を取り入れた、既存のクロスオーバー・ビークルの概念を「越える」、未来に向けた提案だという。
今回はフランクフルト・モーターショーのマツダ・ブースにおいて、同社のチーフデザイナーである小泉 巌 氏に話を聞くことが出来た。

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小泉 巌 氏(以下、小泉):今回の「越 KOERU」は、ここフランクフルトの近郊にあるMRE(マツダR&Dヨーロッパ)で製作したデザイン・コンセプトです。既存のカテゴリーやヒエラルキー、お約束に縛られずに、それらを「越えた」、既存の概念にない、新しいバリューを追求したクロスオーバーを目指しました。「越 KOERU」というネーミングもそこから来ています。

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編集部:魂動デザインの進化形と考えて良いのでしょうか?

小泉:これまで魂動デザインをやって来て、さらにもう一歩進化させたいと考えました。「また同じ?」とは言われないよう、マツダ・ブランドをさらに高められるものにチャレンジしました。魂動デザインでは、野生動物、例えばチーターのような躍動感のある、本能に訴えかけるような美しさを訴求してきましたが、ブランド価値を引き上げるために、「品格」を高める事を狙っています。

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編集部:どのように「品格」を高めたのでしょうか?

小泉:量産車の枠の中で作ろうとすると、デザインがグラフィカルになったり、抑揚を表現するために上下の動きが過剰になったりしがちです。なので、そういう制約を外して、我々が本来やりたかったボリュームの変化による動きの表現を意識しました。そのように魂動デザインを進化させていきたいのです。今回はそこに向かってチャレンジしたつもりです。

編集部:では、この「越 KOERU」は、魂動デザインの「フェーズ2」と考えて良いのでしょうか?

小泉:我々は常に色々なことにチャレンジしています。スポーツカーや、既存のカテゴリーに当てはめなければならないクルマもあります。しかし、本道は外していません。クルマに命を与えるという理念、それが魂動デザインです。この「越 KOERU」もそうですし、今後もそこは外しません。魂動デザインのバリエーションです。フェーズ2に行くわけではありません。魂動デザインというベースの上で、テーマ毎に異なる表現となるのです。

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編集部:ではマツダは今後も魂動デザインをやり続けるという事ですか?

小泉:たとえ「魂動」からネーミングが変わっても、やることは変わりません。それはマツダがというより、日本人の世界観に息づいている、「モノに命を与える」というセンスです。空間に命を与える生け花などがまさにそれです。我々人間が感動する要素である「命を感じるかどうか」、そこを追求していきます。それが「魂動」の本質です。
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編集部:では「越 KOERU」における新しさとはどこにあるのでしょうか?

小泉:この「越 KOERU」には、従来と同じように見える部分と、じつは違っている部分が色々とあります。例えばフェンダーラインは平面ではなく、立体的な描き方になっていて、稜線に向かって消えていきます。ラインがヘッドライトに向かってきていないのです。同じ事を繰り返すのは本意ではないのです。従来との共通性と個性のバランスが重要です。

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編集部:最も重視した部分はどこでしょうか?

小泉:最も大切なのはエモーションです。しかし、そこを洗練させていくとバイタリティ(生命感)が弱くなる危険性があるのですが、バイタリティを感じさせたまま品格を上げるという、かなり難しいチャレンジをしました。

編集部:「品格」というのは、どうすれば引き上げられるのでしょうか?

小泉:プロポーションが最も重要です。単純に伸びやかというものではなく、要素と要素のバランスです。具体的なタネ明かしは出来ませんが、「黄金比」の様なものがあります。決してディテールの処理ではありません。頭が小さくて足が長い人はスタイルが良く見えるでしょう? それと同じです。

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編集部:ではマツダは今後デザイン・コンシャスなプレミアム・ブランドを目指すのでしょうか?

小泉:価格が高いとか、社会的なヒエラルキーが高い、というようなプレミアム・ブランドは、我々が目指すものではありません。我々はデザインのバリューが高い「デザイン・プレミアム」を目指しています。デザインのエモーショナル・バリューが高いという点で、プレミアムなブランドと呼ばれたいのです。世の中にはそのようなブランドもあります。その仲間に入ることを目指しています。そして、クルマ好きが喜ぶ、ユーザー・フレンドリーで特別感のあるブランドにしたい。

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編集部:ではこのコンセプトは、デザイン最優先で作られたのでしょうか?

小泉:いえ、デザイン最優先ではリアリティがなくなってしまいます。このコンセプトのホイールベースはアクセラと同じなのですが、SUVやクロスオーバー・ビークルに求められるユーティリティを確保しながら、そのカテゴリーのボーダーを超えた、未来のライフスタイルを想定したエモーションの提案なのです。実際、この「越 KOERU」は、ガソリンとディーゼル、ハイブリッドが搭載できるように考えてあります。

編集部:どのような市場やユーザーを想定しているのでしょうか?

小泉:我々は常にグローバル市場を想定しています。カスタマーは若いエリート層です。どこの市場にも、最先端の価値観を持った、次の時代をリードするヤング・ライフスタイル・エリートがいます。そういった方々と一緒にマツダ・ブランドは時代を作っていきたいのです。
ですが、以前はクーペに興味を持っていたような年配の人にこのクルマに颯爽と乗ってもらうのも、素晴らしい事だと思います。マツダのクルマ作りに共感して、未来に向いている人たちが想定しているユーザーです。

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編集部:では未来志向のユーザーに向けた新しいジャンルのクルマなのでしょうか?

小泉:これがどんなクルマであるかは、市場が決める事です。市場のコンセンサスが取れれば、他メーカーが似たクルマを作ってくるでしょう。そうして新しいカテゴリーが出来ていくのです。
既存のカテゴリーに当てはめるビジネスのやり方もありますが、「越 KOERU」ではプロアクティブなトライをしました。

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編集部:この「越 KOERU」は、今後市販される可能性はあるのでしょうか?

小泉:我々はこの「越 KOERU」を、「アレは嘘だ!」と思われないようなデザインにしたつもりです。「アレは良いですね! ぜひ作ってください!」と言われれば、社内に「作りましょうよ!」って言えます。そうなればいずれ市販されるかもしれません。


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小泉 巌
1982年に東洋工業(元マツダ)に入社。かつては初代フェスティバやユーノス・コスモ、ランティス・セダン、初代プレマシーなどのエクステリア・デザインを担当。その後チーフデザイナーとしてアテンザやビアンテ、CX-7、そして現在の新世代商品群のデザインを統括している。

■マツダ 公式サイト
http://www.mazda.co.jp