ディーゼルより"クリーン"なプラグインハイブリッド、フォルクスワーゲン「ゴルフ GTE」なら日本でも発売中
日本市場で長らく待たれていたディーゼル・エンジンの(再)導入を目前にして、不正プログラムの使用で排ガス検査をクリアしていたというスキャンダルが発覚してしまったフォルクスワーゲン。主力車種「ゴルフ」に、歴史の長いディーゼルよりも、先進的なプラグインハイブリッドを優先して日本で発売した決断は吉と出た...と言えるかもしれない。

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9月8日に日本で発売された「ゴルフ GTE」は、日本カー・オブ・ザ・イヤーをはじめ各国で多くの賞を獲得した7代目ゴルフに、フォルクスワーゲン・ブランド初のプラグインハイブリッド・システムを採用したモデル。フロントに搭載する1.4リッター直列4気筒直噴ガソリン・ターボ「TSI」エンジンと共に、6速「DSG」デュアルクラッチ式トランスミッションに一体化された電気モーターが前輪を駆動する。他の多くのハイブリッド車と同様に、電気モーターはエンジンをアシストするだけでなく、"第3のクラッチ"によってエンジンを切り離し、一切の排気ガスを出さずに電気モーターのみで走行することも可能だ。



これに電気を供給するエネルギー容量8.7kWhのリチウムイオン・バッテリーは車体フロア下に搭載されており、外部の充電器につないで充電することができる。充電用ソケットはフロント・グリルのVWマークを開けると現れる。ここにプラグを差し込むだけで自動的に充電が始まり、家庭用200ボルト電源なら3時間でフル充電が完了。シフトレバー横の「Eモード」ボタンを押せば、電気モーターだけで最長53.1km(国土交通省審査値)の距離を、あるいは最高130km/hの速度で走ることができるという。



クルマに乗り込んだ時にはデフォルトで自動的にこのモードになっているが、バッテリー残量が低下したり、追い越し加速などでより大きな駆動力が求められると、「HVモード」に切り替わりエンジンが始動。状況に応じてエンジンとモーターを組み合わせ、あるいは使い分け、効率の良い走行を行う。このモード時のJC08モード燃費は23.8km/L...という数字を見ても、国産車に比べたら大したことないように思うかもしれないが、通勤や買い物などで短距離のみに使用する場合、エンジンはずっと使わずに用が足りてしまうことも大いに有り得る。その場合、人によって"実燃費"はどんどん向上するはずだ。そうなると4気筒エンジンは何週間もまったく使われずに置かれることも考えられるため、内部ではメインベアリングとコンロッドのベアリングにポリマーコーティングを施したり、ベアリングシェルとピストンの遊び量を変更するなどの対策が採られている。



ただし、このゴルフは単なる"エコ・ゴルフ"ではない。スポーツ・モデル「GTI」との関連性を感じさせる車名の「GTE」という文字が描かれたボタンを押すと、最高出力150ps/5,000〜6,000rpm、最大トルク25.5kgm/1,500〜3,500rpmを発生するエンジンと、109psの出力と33.6kgmのトルクを生む電気モーターが同時に最大限のパフォーマンスを発揮する。この時、アクセルペダルやギアボックス、パワーステアリングの設定もシャープになり、エンジンのチューニングもより性能重視に変更になるという。オプションのアダプティブシャシーコントロール"DCC"装着車なら、電子制御ダンパーのセッティングが「ノーマル」から「スポーツ」に切り替わる。"GT"が付く名前に相応しいダイナミックなドライビングが楽しめるというわけだ。ハイブリッドなのにこれ見よがしに突き出た2本のクロームが眩しいエキゾースト・パイプも、そんな性格を主張しているのだろう。



内外装には、GTIで使われているレッドをブルーに置き換えたアクセントが各部に用いられている。チェック柄のシートもGTIの伝統を譲り受けたものだ(オプションでレザーも用意)。GTEならではの特徴であるフロント・バンパーのC字型LEDランプをはじめ、デュアルヘッドライトやウインカー、テールランプ、ライセンスプレート照明などには電力消費量の少ないLEDを採用。標準装備される専用ナビゲーション・システムには、その時の残存電気量でEV走行できる範囲を表示する「レンジモニター」という機能が追加されている。

フロア下にバッテリーを搭載するために燃料タンクの位置が変更されており、エンジンのみを搭載するゴルフに比べると荷室容量は100リッターほど縮小している。燃料タンクの容量も10リッターばかり小さいが...電気が使えることを考えればこちらは大して問題にならないだろう。




エンジンルームの向かって右側に見えるオレンジ色のホースがつながっている物体は、パワーエレクトロニクスと呼ばれるもので、バッテリー側の直流電流とモーター側の交流電流を変換する役目を果たす。エンジンは他のゴルフより57.5mmほど左側に寄せてあり、トランスミッションとの間に電気モーターが組み込まれている。電気モーターのみで走行している時にもDSGはギアチェンジしているそうだ。



前回ご紹介したBMWの「X5 xDrive40e」の記事をお読みになってくださった方は、両車の設計に共通する考え方があることにお気付きだろう。どちらも既存のエンジンとトランスミッション(を改良したもの)の間に1個の電気モーターを搭載し、その能力を燃費だけでなく動力性能にも活かすモードを用意している。このスタイルが、少なくともこれからしばらくの間はプラグインハイブリッドのスタンダードになりそうだ。

ゴルフ GTEの価格は、BMW X5 xDrive40eに比べるとほぼ半値の499万円。とはいえ、ゴルフ GTIより100万円も高い。燃料代でもとを取ろうと思ったら大変だ。家計のためというより地球のため、しかし自分(ドライバー)のための運転の楽しさも諦めたくない、という人が選ぶゴルフである。となれば、「ゴルフ Rより50万円も安くてずっと燃費がよいのだから」と考えるとこの価格にも納得できる...かもしれない。


フォルクスワーゲン 公式サイト:ゴルフ GTE
http://www.volkswagen.co.jp/ja/models/golfgte.html


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By Hirokazu Kusakabe