三次試験場50周年を記念して集まった歴代マツダ車の中から、魅力的な軽自動車をご紹介!
9月20日、広島県三次市にあるマツダのテストコース「三次自動車試験場」の開設50周年を記念して開催されたファンミーティングには、この試験場で育てられた約1,200台ものマツダ車が集まった。その中から「歴代マツダ車展示」として並べられた貴重なクラシック・モデルをいくつかご紹介しよう。

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今回の「三次試験場50周年ファンミーティング」はマツダが主催するものではなく、あくまでも全国のマツダ車ファン、そしてマツダ社員たちによる実行委員会によって主催されたイベント。というわけで、歴代のマツダ車を展示するコーナーも、メーカーのミュージアムから運ばれた車両ではなく、参加者の中からオリジナルに近い状態の車両を所有する方の協力で行われた。その歴史を共に過ごしてきたオーナーが、ひっきりなしに訪れる来場者の質問ににこやかに、そして誇らしげに答える様子が印象的だった。




3輪トラックから車両の生産を始めたマツダが、1960年に初めて発売した量産乗用車が「R360クーペ」だった。ラップラウンドしたアクリル製のリア・ウインドウを持つ小粋なクーペ・スタイルは、いま見ても非常に魅力的。軽量なアルミ合金製356cc空冷V型2気筒エンジンは車体後部に搭載され、最高出力16ps/5,300rpmと最大トルク2.2kgm/4,000rpmを発生する。トランスミッションは4速マニュアルの他に、軽自動車として初めてトルクコンバーターを持つ2速オートマチックが設定されていた。この1964年型の展示車両は当時「ノークラッチ車」と呼ばれてたAT仕様であり、下肢に障害のある方が運転を習得するために、広島県の松永自動車教習所で教習車として10年間使用されていたそうだ。





R360クーペが登場する1年前の1959年に発売され、小さくて手頃な価格の商用車として人々の生活を支えたのが、3輪軽トラックの「K360」だ。ライバルのダイハツ「ミゼット」が単気筒エンジンを搭載していたのに対し、より排気量が大きな小型トラック用のエンジンを原型とする鋳鉄製356ccエンジンはV型2気筒。座席と荷台の間に配置され、最高出力11ps/4,300rpmと最大トルク2.2kgm/3,000rpmを発生。3速トランスミッションとプロペラシャフトを介して後輪を駆動する。美しい状態の展示車は1968年式で、会場ではオーナー共々大人気だった。




マツダの軽乗用車は1962年、大ヒット作となる「キャロル」に進化する。一気にモダンになったエンジンは358cc水冷直列4気筒OHV。最高出力18ps/6,800rpm、最大トルク2.1kgm/5,000rpmを発揮した。「クリフカット」と呼ばれる直立したリア・ウィンドウが特徴的な4ドア・セダン(1963年に追加)のボディは居住性も高く、足回りは前後トレーリングアーム式の四輪独立懸架。この成功により、1962〜63年には軽乗用車市場で6割以上のシェアをマツダが占めていた。1964年式の展示車は、現オーナーが2003年に手に入れたもので、8年半の期間を掛けてレストアされたという。昭和30年代のショールームからタイムスリップして来たかのようにどこもかしこもピカピカ。



このキャロルという車名は、1989年にスズキ製軽自動車のコンポーネントをベースに内外装をマツダが独自にデザインした新型車として復活する。プラットフォームやドライブトレインはスズキの3代目「アルト」と共通だが、直線基調の兄弟と異なる丸みを帯びたスタイルは、特に女性オーナーから支持された。上にご紹介して来た1960年代のモデルとも共通するイメージが感じられないだろうか。



他社製コンポーネントを流用しつつ、マツダらしい個性と魅力を放った軽自動車はそれだけではなかった。広島のエンジニア達は、スズキ製直列3気筒ターボを独自に設計されたフレームのミドシップに搭載し、樹脂製ボディ・パネルにガルウイング・ドアを採用したスポーツカーを作り上げたのだ。1992年に発表されたこの「AZ-1」は、同じエンジンでFRレイアウトを実現したスズキの「カプチーノ」や、やはりミドシップの軽自動車ながら高回転型自然吸気エンジンを搭載するホンダの「ビート」と並び、"軽自動車スポーツカーのA・B・C」と総称された。乗り手を選ぶアグレッシブな設計とバブル経済の崩壊により4,000台あまりで生産終了してしまったAZ-1だが、この日は多くの個体が三次に"里帰り"していた。



かつては会社の成長を支え、ユニークなモデルもたくさん生まれたマツダの軽自動車だが、現在ではスズキからOEM供給を受ける車種のみとなっていることはご存じの通り。マツダという会社の規模と現在の車種ラインアップを考えれば、これが正しい決断であったことは疑う余地もないけれど、過去の歴史として埋もれてしまうには惜し過ぎる傑作がいくつもあることを、「デミオ」や「ロードスター」に乗る若いオーナー達にも知っていただければと思う。もし愛車をこんなキュートなご先祖に逢わせたくなったなら、ぜひご自身もイベントに参加されてみてはいかがだろうか? 2020年に迎える創立100周年に向け、今後も各地で多くのマツダ車ファンが集う機会が催されるはずだから。


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By Hirokazu Kusakabe