Audi TTS
3代目となるアウディ TT/TTSが発売された。
初代TTは1998年に発売された。丸を基調にしたユニークなデザインが人気を呼び、累計販売台数50万台を記録するヒットモデルとなった。
2代目は2006年にデビュー。低くスポーティなフォルムになったTTは、スチールとアルミのハイブリッド・モノコックフレーム(=アウディスペースフレーム)を採用し、操縦性の面でも大きく進歩を遂げた。初代TTの面影を残しながら、スポーツカーとしてのキャラクターを明確に打ち出したモデルだった。

Audi TT Audi TT
今回発売(2015年8月20日)となった3代目は、操縦性をさらに進化させ、シャープで精悍なマスクとなり、アウディのスポーツカーとしての立ち位置をより明確にしている。

Audi TT
ボディサイズはTTクーペを例にとると、全長4,180mm × 全幅1,830mm × 全高1,380mm。ホイールベースは2,505mmというサイズ。2代目TTと比べてみると、全長と全幅がそれぞれ10mm短くなっているので、ボディサイズ的にはわずかに小さくなっている(ほぼ同じだが)といえるが、ボディサイズとは逆にホイールベースは40mm長くなっており、トレッドも前1,565mmで5mmワイドになっている。
大雑把にいうと、先代からほぼボディサイズは変わらず、ホイールベースを伸ばすことで、相対的にタイヤがより四隅に配置される格好になったということはいえる。

Audi TTS Audi TTS
そしてそれ以上に大きなポイントが軽量化だ。先代TTもアウディスペースフレームを採用して軽量化と前後重量バランスの適正化を図っていたが、新型はおよそ50kgの軽量化を実現している。グレードによって装備の違いがあるため車重にも差異があって、一概に50kg軽いとはいいがたいが、アルミフレームや、ボディ外板に高張力鋼板を効率よく使うことによって、ボディの軽量化を行う一方、アルミダイキャストのクランクケース(-2.4㎏)やクランクケース内蔵の軽量バランサーシャフト(-3kg)、シリンダーヘッド一体エキゾーストマニホールド(-2㎏)、軽量構造シートフレーム(-5㎏)、アルミ製ドア(-12㎏)、リヤゲート(-5㎏)、アルミ製ブレーキキャリパー(TTS・-5kg)等々、細部にわたり軽量化が施されている。文字通りぜい肉をそぎ、スポーツカーとしての資質を高めようという姿勢の表れといっていいだろう。

Audi TT Audi TTS
エンジンはTT、TTSともにインタークーラーターボ付2.0リッター直列4気筒DOHC TSFI=直噴ターボエンジンを搭載している。TTクーペ及びロードスターが最高出力230ps/4500-6200rpm、最大トルク370Nm/1600-4300rpm。TTSは最高出力286ps/5300-6200rpm、最大トルク380Nm/1800-5200rpm。

Audi TTS Audi TTS
駆動方式はFFと4WD=クワトロが用意されている。今回試乗することができたのはすべてクワトロで、FFモデルには乗ることができなかったので、これについてはまた後日レポートしたいと思う。ちなみにTTもゴルフから導入されたMQB(モジュラー・トランスバース・マトリクス)を採用している。基本的には生産の高効率化を狙ったモジュラー化だが、すでにいろんなところで言われているように、単に軽量化するだけでなく、高剛性化、高精度化のための技術がふんだんに盛り込まれており、高効率と高性能を両立させているところが、MQBの大きな特長ということができる。

Audi TTS
クワトロシステムは、ハルデックスカップリングの第5世代を採用。電子制御多板クラッチによる駆動伝達システムで、リヤデフ直前に設置され、必要に応じて後輪へ駆動力を伝達するシステム。
通常、一定速の巡航状態では数%後輪へ駆動力を配分し、必要があれば50対50まで駆動配分可能。また、前輪が空転した場合など、理論上は前後0対100まで駆動配分が可能だ。さらに、ドライブセレクトを効率(≒ECO)にセットすると、低負荷で巡航している場合には前後駆動配分が100対0にもなる。

Audi TTS Audi TTS
また、新たに採用された興味深い装備としてアウディバーチャルコックピットがある。これはインストルメントパネル全体が液晶になっており、スピードメーターやタコメーターのほか、アウディMMIと連動してさまざまな情報がメーターパネル内に表示されるというもの。中でもユニークなのは、ナビのマップがインパネ内に表示されること。スピード、タコメーターを小さくし、ほぼ全面をナビ画面にすることもできる。

Audi TTS
Related Gallery:Audi TTS

Audi TT
Related Gallery:Audi TT
Audi TT
さて、そんなアウディ TTである。試乗した印象は、どんなものだろうか。
まずはTTクーペに試乗した。先に大まかな印象を述べてしまうと、良い意味で先代と大きな違いは感じられなかった。ただ、すべての挙動、所作に洗練が加わっており、心地よい乗り味に仕上がっている。例えば、ごくごく普通に走っているときに、交差点や郊外路のカーブでハンドルを切り出した時、指一本分動かしたところから、すでにハンドル操作に対する応答の、精度の高い手応えと、それにピタリと一致するクルマの動きが現れる。

Audi TT Audi TT
ゆっくり小さく切ればゆっくりわずかにノーズが動き、スーッと90度くらいハンドルを切りだすと、ボディごと向きを変えるようにスッとクルマの向きが変わる。ハンドルの動きとクルマの動きが一致しているのだ。
ありきたりな言葉でいえば「一体感」ということになるのだろう。極低速域、微小舵角領域から思いどおりにクルマが動いてくれるその感覚が心地よい。

Audi TT
面白いのは、そんな精度感の高さを出しながら、少しも運転していてシビアさを感じさせないところ。
もちろんペースを上げていっても印象は変わらない。欲を言えば、荒れた路面でゴツゴツした硬質な突き上げが認められる。このあたりがもう少しマイルドだといいと感じたが、あるいは初期のフリクションがまだ取れていないからなのかもしれない。

Audi TT Audi TT
高速道路での安定性は抜群といっていい。ヒタッとタイヤが路面をとらえ、真っ直ぐにクルマが進んでいく。効率モードにして、80km/h程度で負荷をかけないように走らせるとすぐに後輪への駆動が切れ、FFとなる。言い方は適切でないかもしれないが、戒めがふっと緩んだような左右方向への開放感があり、軽快な手応えがステアリングに届く。
アクセルを踏み込んで駆動系に負荷をかけると数%(らしいが)後輪へ駆動を与え、4WDならではのリヤの安定感が加わる。
...とは書いてみたが、その差は微細でほとんどわからないくらい。
アクセルを少し踏み込んだり、ハンドルを切り出すとすぐさま数%ながら後輪へ駆動力を分配するらしく、4WDならではの安定感が加わる。首都高速のカーブに差し掛かった時など、まさにオンザレールの抜群の安定感と旋回性でカーブをクリアしてくれる。

Audi TTS Audi TTS
TTSはマグネティックライド付きのダンパーを装備している。コンフォートではTTクーペとほぼ同じくらいの硬さから、プログレッシブにハードに変わっていく。 自動を選択するともう少し硬めのところから必要に応じでダンパーの減衰力の硬い/柔らかいをコントロールしているようだ。

Audi TTS
印象としてはストローク量がTTクーペに比べ短くなった印象で(実際車高も20mm低くなっているが)、その短いサスペンションの動きの中で、ショックを受け止め、あるいはグッと足回りを踏んばるような動きを作り出している。全体には硬めだが、突き上げのショックが尾を引かずスッと収まるので、歯切れのよいスッキリした乗り味になっている。

Audi TTS
ハルデックスカップリングの進化に伴って、クワトロシステムの乗り味に変化はあるのだろうか。
これに関しては、ほぼないといってよく、基本的な操縦性や、シャープで小気味よいハンドリングはそのまま生かされている。

Audi TTS Audi TTS
違いが認められるのは、先にも触れたが、アウディドライブセレクトで効率を選択したときの100対0配分になった時の軽快さ。
それから、コーナーをレーシングスピードで走らせたときの前後駆動配分を単純に50対50にしてしまうのではなく、前後タイヤのグリップ状況で、旧来よりもより緻密に駆動配分コントロールをしているように感じられた。

Audi TTS
特にウエットサーキットで、意図的にリヤを滑らせたときの前後の駆動配分の感触がとても興味深かった。印象としては、4輪スライド状態で走らせているとき、前後輪の滑り方に応じて微妙に前後駆動配分がコントロールさせているような感覚がある。露骨に駆動配分をコントロールしているわけではなく、またそれほど駆動配分コントロールの自由度は高くないが、例えば前後重量配分とほぼ同じような駆動力配分をしているようで、具体的には前60対後40くらいから、55対45くらいのところをコントロールしているように感じられた。リヤの滑り具合やフロントの滑り具合の変化をバランスさせるように、クルマのスライドバランスを保ってくれるように感じられた。

Audi TTS Audi TTS
実際のところ、それほど緻密なものではなく、単にアクセル操作に応答しているだけなのかもしれないが、4輪スライド状態のTT/TTSは横方向に滑りながら、前方向へのトラクションもしっかり掛かってくれた。

Audi TT
ハードウエットで試したサーキットドライブでは、TTの足の柔軟さがグリップからスライドに移る時のクルマの動きをマイルドにしていて、コントロールしやすかった。また、グリップで走らせているときも路面をしっかりとホールドしてくれる感覚が強くあって、安心して走ることができた。

Audi TTS Audi TTS
TTSは足回りが硬めな分滑り出しがやや速く、とくにドライブセレクトをダイナミックにすると、サスペンションがハード寄りにセットされ(マグネティックライドなのでプログレッシブな変化だが)、サーキットスピードだと滑り出しはやや唐突な印象となる。ドライ路面だと旋回スピードを上げる方向に作用するのだろうが、滑りやすい路面だと、多少神経質な動きが出てくる。なので、ウエットはコンフォートか、オートがおすすめ。クルマの動き自体にも神経質さとかシビアさが消え、動きがグッとマイルドになるので、走りやすい。

Audi TTS
スポーツカーを謳うTT/TTSだけに、カテゴリー的にも価格的にも、BMW Z4ポルシェ ケイマン/ボクスターといったところがライバルになるのだろう。ただ、TTのスポーツさは、何かを突き詰めていくようなストイックなものとはちょっと違って、あるドライブスキルに到達して初めてパッと開けるような、スポーツドライビングの開放的で楽しい広がりを、よりイージーに、そして安心して知ることができる種類のものではないかと思う。しかもそこにFUNがあり、奥行きまであるところがクワトロの独特なところだろう。

■アウディ 公式サイト
http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja.html