HONDA S660 CBR600RR
オープンカー比較ですよ、そう言われて誰がこのラインナップを予想するのか。ちなみに私は単にホントに驚いた。
だって2台のオープン軽自動車と、2台のバイクが並んでいるなんて!乱暴というかなんというか、さすがAutoblog日本版、やることが無茶...いや、ユニークだ。

HONDA S660 CBR600RR HONDA S660 CBR600RR
しかし心を平静に保ってよくよく考えてみれば、うん、確かに全部排気量がアラウンド600ccあたりで、頭上を遮るルーフがなくて、乗車定員2人であるってことは共通している。タイヤが4つなのか2つなのか、おおきな違いはそこだけ。双方ともに実用車というよりは休日のための2台目的な需要が多そうな、趣味性が高い車両でもあることだし。比較としては多少型破り感はあるにせよ、絶妙なるラインナップかもしれない。

HONDA S660 CBR600RR
今回のこの特集、中でも私はホンダの2台、S660CBR600RRを考察してみたいと思う。
乗る前までは、ラインナップされた4台のなかでも、わりと性格の似た感じの2台なんだろうなと勝手にイメージしていた。
まあモチロン大前提として双方ホンダ製やし、ということも含めて、メカメカした"走り"っぽいルックスも然り、荷物の積載量(S660においてはラゲッジルーム容量)がまったくもって心許ないことも然り。共通点は意外に多い。
しかしですよ、これが嬉しい大誤算となったのは、先に報告しておきたい。
いやはやホンダ、なんだか奥深いことになっているぞ!と感激すら覚えたのだ。

HONDA S660 CBR600RR HONDA S660 CBR600RR
私は自動車ジャーナリストとしてS660にはすでに何度も試乗しているし、それは同サイト内にすでに掲載されている試乗記にも詳しく書いてます(【試乗記】ホンダ「S660」コントローラブルな感じはカートにも似たフィーリング!)。えへへ。
ハンドルを握るたびに、シャッキリして瑞々しいフレッシュな走りを堪能出来る、最もコンパクトなミッドシップ・スポーツカーだ。

HONDA S660 CBR600RR
対して、CBR600RR。こちらも硬いカウルに覆われたイカニモ、なルックスが"そっち系"であることを匂わせていることから、S660以上に"走り"に特化した、ギュンギュン系な挙動を予想した。
だってこの出で立ちですよ。

CBR600RR CBR600RR
白・青・赤のトリコロールに鮮烈に染め上げられたカラーリングは、その昔、胸ときめかせたホンダ・レーシング直系のソレそのもの。もちろん燦然と輝くHRCのロゴがこれまた「オレ速いンやで」オーラをビシバシ放出し、いや、ダメあたしこんなの乗れない......とガラにもなく、気持ちが怯む。
ちょっとアクセル開けただけで、前輪浮いちゃうんじゃないの?ていうかそもそもこんなシート高、わたし跨がることすら出来ないんじゃないの?

CBR600RR
ここでひとつ、告白しておかなければいけないことがある。
花も恥じらう女子大生時代に普通自動二輪免許を取得してこのかた、私はずっとネイキッドタイプのバイクばかりに乗り継いで来た。
しかも、当時はバーハンドルかアップハンドルが好み。タンクの上辺よりもハンドルが沈んでいるような、いわゆるレーサーレプリカタイプには一度も!乗ったことがなかったのだ。
それをですよ、ちょっと大型自動二輪免許を取ったからって、はいどうぞ試乗してきてくださいなんて無茶だと思いませんか(泣)。いくら中免歴の長い私だって、調子には乗れてもバイクにはそう簡単に乗れないでしょーよ。

しかし。それがアッサリ乗れたのである。
CBR600RRはもんのすんごいバイクだった。
一言で表すなら、ド安定感とでも言おうか。


足付きは身長162センチの私でギリギリセーフ。ドッシリとシートに正面切って乗り込んでしまうと、両つま先がようやく地面に触れるくらいに心許ない。しかもだいぶ重い。これまで所有して来た400ccネイキッドバイクに比べれば重心が上にある分、取り回しにすら四苦八苦してしまった。しかし、乗り込んだあとは身体が勝手にバランスを取り始める。バイクっていうものは、つくづく人間の基礎身体能力を研究しきった乗り物なのだなと感じ入ってしまう。乗り込んでしまえば左右に身体をずらして、なんとか足付きを確保することも可能だった。

CBR600RR CBR600RR
しかし、そんな生まれたての子鹿みたいなヨロヨロ状態も、ギアを入れて走り出せば不思議なくらいにビタっと安定しちゃったのである。
ローギアから滑らかに膨らむトルクは振り回されるようなピーキーさを微塵も出さず、至極シルキーな滑り出しを見せる。どんどんシフトアップしていっても、生まれるパワーがどこの領域でもジェントルだから、コントロール性は抜群。
つまりどのギアを選んでもパワーバンドが掴みやすく、気持ちよく加減速が出来てしまうのだ。
もちろんライディングポジションはホフク前進かってくらいに身体をタンクに沿わせるプロ仕様ではあるんだけど、そのリニアなエンジン特性のおかげで大ボディに振り回されることなくスロットル開度とシフト操作に集中でき、どんどん「乗れている」感が増してくるのが最高に快感。次のコーナーにも自然と視点を移動していける。
よって気付けば「え、もしかして私、バイクの運転上手いのかも!」なんてイタい勘違いをさせてくれる、ニクいバイクでもあった。

HONDA S660 CBR600RR
ボディ自体のバランスも良く、バンクさせるのも不安がない。それどころか走り込むたびに不安が払拭されていき、最終的にはレーサーレプリカ初心者と思えないくらいにチャレンジングな走行を満喫しちゃったのである(はい、手前味噌ですみません)。
ハマってしまった。

CBR600RR
これまで、レーサーレプリカってちょっと、その独特のドヤ感に一抹の嫌悪感があったのである。先述の通り、そこはかとなく匂い立つ「オレ速いンやで」オーラを、かえってそれちょっと気恥ずかしいかも、と敬遠していたのだ。
しかし、しかし。食わず嫌いは一気に覆った。
なんじゃこれ、めちゃくちゃ面白い乗り物やないか!である。
私でも乗られたんだから、大型レーサーレプリカ入門車として、CBR600RRはかなりオススメな一台だと思う。クセがなくて扱いやすいところは日常の愛車としてベストチョイスかもしれない。

CBR600RR CBR600RR
ちなみにあまりに惚れすぎて、試乗シーンとなった箱根エリアから東京都内までコレに乗って帰ったが(往路はダイハツのコペン・セロであった)、それこそ600ccというたっぷりしたエンジンが、ほんのわずかのスロットル開度でも高速道路走行に充分な速度を保ってくれるから、意外にクルーズにも向いている。
ただし翌日、このライディングポジションのせいで、腕と背中はもんのすごい筋肉痛に襲われてしまったのだけど。

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HONDA S660 CBR600RR
対してS660だ。
いやはや、こうして改めてワインディングを走ってみると、覚えていたよりも随分ヤンチャなクルマであった。

HONDA S660 CBR600RR
660ccのターボエンジンは、ワインディングでも息切れするものではない。登り勾配にさしかかれば3速くらいをチョイスして、ガシガシとエンジンをぶん回してアクセルを踏み足していく。徹底した軽量化技術のおかげで、スイスイとかなりの勾配を駆け上がって行くのが快感だ。

S660
パワーに対する不満はそういうわけでさほどないのだけど、とにかく挙動の付け方が若々しい印象なのだ。
アシのセッティングはそれほどスパルタンな締まりではない。むしろホンダのスポーツカーとすれば柔らかくストロークを生かす、イマドキっぽい方向にされている。これは一般道や日常生活域での快適性にも考慮されてつくられたアシだから。
それでも、ちょっとしたギャップを踏んだときなんて、ドライバーごとゴン!とフロアにお尻をぶつけちゃうんじゃないかと思うくらいに上下のGを拾うのは、やはりその辺の軽自動車とはひと味もふた味も違う。こんなにちっちゃくてもやっぱりS660はミッドシップ・スポーツカーなんだと、コーナーに斬り込んで行くたびに気付かせられる。

HONDA S660 CBR600RR HONDA S660 CBR600RR
純正タイヤとして装着されているヨコハマタイヤのアドバン・ネオバも超ハイグリップな手応え。路面を捉えまくり、仔細にドライバーにインフォメーションを伝え続けるから、いやはや、ちょっとした山道もスポーツドライブ気分満点である。

HONDA S660 CBR600RR
ステアリングは意図的にかなりクイックに味付けられていて、ちょっとした切り込みでもグイグイと内側に鼻先を入れ込んでくるし、レーンチェンジのときなんかもバキュン!と瞬間移動的。
それら全部のアジが、言いようのないくらいにベリーベリースポーツ!なんである。

S660 S660
S660単体で試乗すれば、クルマ全体の印象として660ccターボエンジンを持て余すことはない。ハンドリングもしかり、しっかりと細部にまで行き渡らせた設計と、最小ではあるけれど効果的な電子制御のおかげで至極コントローラブルだ。サーキット、ワインディングと過去色んなシーンで試乗をしてきたS660だけど、あくまで掌の中できちんとスペックを把握できる、仕上がりのまとまったクルマだと思っていた。

S660
しかし、こうしてCBR600RRと比較してみたら、どう考えてもS660のほうがフレッシュなスポーティーさを秘めているなと感じたのだった。
ワイドなタイヤがよっつしっかりと接地し、よっつのグリップがあるからこそワイルドという、なんだかパラドクス的で新鮮な発見だった。

HONDA S660 CBR600RR
ごく個人的に、じゃあどっちが欲しい?と聞かれたら、CBR600RRと答えたい。
見た目イケイケなのに実は懐の深い優しい系、きっちり私をサポートしながら楽しいツーリングを演出してくれるなんて、人間に置き換えたとしてもついこっちからプロポーズしてしまうかも、なくらい魅力的なんだもの!

S660 S660
ただし、CBR600RRの100kmほどのライドで感じたような全身筋肉痛は、S660では起こらない。ゆったりとシートに身体を預けて、タラっとドライブすることも可能なのはやっぱり自動車のイイ所でもある。いざというときはお風呂のフタのような簡単な機構で屋根をクローズすることも出来るしね。
ファーストカーがあって2台目に選ぶならCBR600RRに、ファーストカーとしても使い倒したいならS660に軍配があがるっていうのが、有り体ながらも真実なのではないかな。

honda
さて、今回の企画中、個人的な感想は置いといて、この4台の中で日常使い、ファーストカーとして使えるかどうかを使い勝手の面からのみ考えてみれば、群を抜いてあらゆるシーンをカヴァーしてくれるのはコペン・セロだと思う。
しかしコペン・セロに関してはまた後日、個別に記事化するから、ここではその辺華麗にスルーして、次の試乗記に期待して欲しい。

【特別企画】600〜700Ccの国産オープン2シーター、4台を乗り比べ!(序章)

■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp