赤い「ダッジ チャレンジャー SRT」が事件の現場を目指してLAの街を走る! 映画『ナイトクローラー』公開中
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「ナイトクローラー」とは、事件や事故の現場に駆けつけ、刺激的な映像をカメラに収めてテレビ局に高値で売る、いわば"報道のハイエナ"だ。本来は「夜を這う者」という意味の業種をタイトルにしたこの映画には、主人公が乗るクルマとして旧い日本製コンパクトカーと現代のアメリカン・マッスルカーが登場する。

1台目は1980年代半ばに米国でも販売されていたトヨタの2代目「ターセル」。日本では販売チャンネルによって「カローラII」「コルサ」と3兄弟として売られていた小型車は、生産終了から30年が経ち、映画の中では仕事も友人も家族もなく、インターネットの世界から心の支えを得ているルイス・ブルームという青年のアシになっている。彼はこのクルマで盗んだ金網とマンホールの蓋を運び、それらを売り捌いてその日暮らしの生活費を得ているような男だ。

そんなルイスはある夜、偶然ターセルで交通事故現場を通りかかった際に、"ナイトクローラー"と呼ばれる人たちに遭遇する。事件の映像が売れると知った彼は、今度は盗んだロードバイクと引き換えに無線傍受機と安価なビデオカメラを手に入れ、その晩からナイトクローラーとしてロサンジェルスの街を走り回る。真面目でモラルが欠如したルイスには、この仕事が向いていた。見事、数々の刺激的な映像をモノにした彼が、テレビ局から稼いだ金で買い換えるクルマが、2代目の愛車となるダッジの赤い2ドア・クーペ「チャレンジャー SRT8 392」だ(撮影に使われた車両は2011〜2012年モデルと思われ、現行型のSRTとはボンネットの形状等が異なる)。



だが、この映画の主人公は真っ赤なアメリカン・マッスルカーが似合うヒーローではない。現代社会では決して珍しくない、社会と自我の適合に苦慮する一見冴えない青年だ。古びたターセルの方が似合っていたんじゃないか。しかし、そんな思いは映画がラストに向かう頃になると、すっかり消し飛んでしまった。

ナイトクローラーはようやくルイスが見付けた自分の天職だと思っている。彼の中にくすぶっていた野心がようやく発露の術を得て、社会の底辺に近い場所から高みに向かって突き進むために、その象徴として赤いチャレンジャーは走るのだ。

同時に物語が進むにつれ、ルイスの中の狂気が次第に鮮明になっていく。それはひょっとしたらこの主人公だけではない、彼が撮影した映像に惹かれる一般市民、わたしやあなたのなかにも同種の狂気は潜んでいるのかも知れない。ただ、ルイスにはそれを抑えるモラルというものが欠けていた。そんなオーナーのほとばしる狂気に、チャレンジャーはどこまでもクールに応えていく。同業他者に先駈け、現場にいち早く到着するためには、1.5または1.3リッター70馬力前後のトヨタよりも470馬力の6.4リッターV8エンジンを積むダッジの方が好都合だ。まるで誰よりも先に餌に有り付こうとする動物のように、飢えて焦るルイスの精神を反映し、チャレンジャーは夜の街でテールを滑らせ、咆哮を上げる。時には意気盛んに、時には苛立つように。




それにしても、車両を提供したフィアット・クライスラー・オートモービルズは、よくこんな使い方を許したものだと感心する(ちなみに悪役が乗るのはGMのキャデラック エスカレード)。映画の後半、ルイスと相棒の若者リックは、チャレンジャーに乗ってさらに危険な領域に入り込んでいく。もちろん最後のクライマックスでもチャレンジャーはLAの大通りを舞台に大活躍するのだが、それは是非、映画館でご覧いただきたい。そしてV8 HEMI エンジンが停止した後には、"最悪のハッピーエンド"が訪れる。映画館を出るクルマ好きには、脳裏に残る艶やかな赤いボディにブラックのストライプを入れたチャレンジャーの清麗な美しさが救いとなるだろう。

ジェイク・ギレンホールの怪演が大いなる話題を呼び、ダン・ギルロイ監督の手掛けた脚本がアカデミー賞にノミネートされているこの作品は、決して家族や恋人と観るのに向く映画とは言えない。だが、あの名作『タクシードライバー』のように、公開から何年も経った後にも、きっと熱烈なファンによって語り継がれるのではないだろうか。キャストや劇場に関する情報は、文末のURLから公式サイトでご確認を。


『ナイトクローラー』
公開:8月22日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
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『ナイトクローラー』公式サイト
http://nightcrawler.gaga.ne.jp/




By Hirokazu Kusakabe