アウディ ジャパンは20日、3代目となる新型「アウディ TT クーペ」と「アウディ TT ロードスター」、そして「アウディ TTS」を発表。同日より販売を開始した。

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3つの進化

1998年、どこから見てもスポーツカーなのに他のスポーツカーにはほとんど何にも似ていない初代アウディ TTの登場は衝撃的だった。それを見慣れたせいか、2006年に発表された2代目は幾分個性が薄まったようにも感じられたが、プレミアムの呼称も相応しく洗練され、またシャシー性能の向上を裏付けるように、ハイパワーなエンジンを積む高性能モデルも追加された。



そして2014年3月のジュネーブ・モーターショー前夜に初公開された3代目は、アウディ ジャパンの大喜多 寛社長によれば、大きく分けて3つの方面に進化が見られるという。

まずはデザイン。これは写真をご覧になればお分かりだろう。アーチ型ルーフライン、フロントフードに僅かに食い込むところまで丸く張り出したホイールアーチ、レーシィなアルミ調大型フューエルキャップなど、初代から続くTTのアイデンティティを受け継ぎつつ、「フォー・シルバー・リングス」と呼ばれるアウディのエンブレムは、初めてグリルからボンネット上に移された。これはアウディのスーパーカー「R8」に倣ったそうだ。ヘッドライトの縦に光るラインは、ル・マン24時間レースを走るプロトタイプ・レースカー「R18 e-tron クワトロ」からインスパイアされているという。この新しい顔は、新型TTが紛れもなくアウディ最新の"スポーツカー"であることを宣言していると受け取れる。





より軽く、パワフルに、燃費も向上

その拠り所となるのが、2つ目の進化であるスポーツ性能の向上だ。高張力スチールとアルミニウムを組み合わせた「ASF(アウディ・スペース・フレーム)」と呼ばれるボディは先代より17%も軽量で、ねじり剛性が23%高められているという。同じ名前の先代「TT クーペ 2.0TFSI クワトロ」同士で比較してみると、車内を覗けば新しい装備が目に付くにも拘わらず(後述)、車両重量は30kgほど軽く1,370kgに抑えられている(いずれも数値は日本仕様)。しかも2.0リッター直列4気筒ターボ・エンジンの最高出力は、先代の211ps/4,300〜6,000rpmから230ps/4,500〜6,200rpmに、最大トルクも35.7kgm/1,600〜4,200rpmから37.7kgm/1,600~4,300rpmに向上。同時にJC08モード燃費は13.0km/Lから14.7km/Lに改善された。

さらに、より重量と価格を優先して選びたいユーザーには嬉しいことに、3代目ではエントリー・グレードの前輪駆動モデルにも、同じスペックの2.0リッター・エンジンが積まれることになった。この「TT クーペ 2.0 TFSI」は、先代の1.8リッターを搭載する前輪駆動モデルと比較すると最高出力が40ps、最大トルクは12.2kgmも増加しているが、車両重量は1,320kgと変わっていないのだ。しかも排気量は拡大したのに、JC08モード燃費は先代「TT クーペ 1.8 TFSI」の14.2km/Lから14.7km/Lに向上している。



TTSやロードスターも同時発売

ジュネーブで3代目TTが発表された時と同様に、日本市場でも高性能モデルの「アウディ TTS クーペ 2.0 TFSI クワトロ」が同時発売となった。こちらのエンジンは同じ2.0リッターの排気量から、286ps/5,300~6,200rpmの最高出力と38.8kgm/1,800~5,200rpmを発揮する。ちなみに先代TTSは272ps/6,000rpmと35.7kgm/2,500~5,000rpmだったから、こちらもしっかりパワーアップを遂げ、JC08モード燃費も11.8km/Lから14.9km/Lに大きく改善。実は今回発売された新型TTシリーズで、最も燃費が良いのはこの最強モデルなのだから恐れ入る。専用エクステリアのほか、足回りにはダンパー減衰力をアクティブに制御する「アウディマグネティックライド」が標準装備される。

なお、3代目TTにもこれまで通り、エレガントな電動開閉式ソフトトップを備える「アウディ TT ロードスター 2.0 TFSI クワトロ」がラインアップされている。"カブリオレ"ではなく"ロードスター"という名前が表すように、クーペが4人乗り(2+2シーター)であるのに対し、こちらは2人乗りとなる。オープン化に伴う剛性低下を補うためボディに補強が入ることから、車両重量はクーペより100kgほど重くなる。



日本仕様のトランスミッションは全車デュアルクラッチ式6速「Sトロニック」のみ。TTSにもマニュアルの設定はない。車名に「クワトロ」と付くモデルは、ご存じのように電子制御マルチプレートクラッチ使ったフルタイム4輪駆動システムを搭載する。通常は駆動力が前輪のみに伝達されているが、前後輪に速度差が生じたり、あるいは全開加速や高速コーナリング時に高いトラクション能力が求められると、必要に応じて後輪にも駆動力が分配される。

新型TTは、全長4,180mm × 全幅1,830mm × 全高1,380mmと、3サイズとも先代より10mmずつ小さくなっている。しかし、ホイールベースは40mmも延長されて2,505mmとなった。それだけ前後オーバーハングが切り詰められているということだ。



ディスプレイ式メーターパネルに地図も表示

そして最後に3つ目の進化についてもご紹介しておきたい。それは大喜多社長によれば「ハイテク・エクスペリアンス」。つまりアウディ最新のテクノロジーが体験できるということだ。ドアを開けると、センターコンソール周りがまるでライトウェイト・スポーツカーのようにすっきりしていることに気付くだろう。一般的なクルマではそこにあるはずのナビゲーション・ディスプレイや、エアコンの温度調整ダイヤルが見当たらない。代わりにメーターパネルには12.3インチの液晶画面が搭載され、そこに速度計や回転計などの計器類と、ナビゲーションやインフォテインメントのディスプレイが全て統合された「アウディバーチャルコクピット」と呼ばれるシステムが全車に採用されている。ドライバーは必要な情報を切り替えて表示することができる(...代わりに助手席の乗員はナビゲージョンの地図やオーディオの曲名さえ見られない、とも言えるわけだが...。その辺りも"ドライバー"に任せるべきというのがアウディの考え方なのかも知れない)。ちなみにエアコンの調整ダイヤルはタービン型の吹き出し口に組み込まれており、こちらは機能というより視覚的なハイテク感が味わえる。



新型TTのヘッドライトはLEDが標準だが、オプションで「マトリクスLEDヘッドライト」も用意されている(TTSは標準)。これは夜間の走行中に対向車や先行車を検知すると、他車が眩しくないように自動的にライトが部分的にマスキングされるという機能があり、ドライバーは常にハイビームにして走行していればいい。

消費税込み価格は、アウディ TT クーペ 2.0 TFSIの542万円から、アウディ TTS クーペ 2.0 TFSI クワトロの768万円まで。サイズも車重も燃料消費も小さくなっているが、残念ながら価格は全体に上がってしまった。アウディバーチャルコクピットの採用など、装備の向上を考えれば致し方なしというところか。



なお、今回の発表会には3代目の新型を挟んで、初代と2代目のアウディ TTも展示されていた。いま見ても初代は独自の個性が魅力的だし、2代目は引退するのが信じられないほど古さを感じない。だが、3代目のキャッチコピーは「この未来に、ついてこられるか」。つまり最新のアウディ TTは、"いま買える未来のクルマ"なのだ。筆者自身はそんな未来に"ついていきたい"と思いつつ、(経済的な事情もあり)改めて見直した初代や2代目の中古車を探したくなった...なんて書くと、アウディ ジャパンの方々の顰蹙を買ってしまうだろうか(けれど書いてしまいました)。


アウディ ジャパン 公式サイト
http://www.audi.co.jp/

アウディ TT
http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja/models/tt.html


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By Hirokazu Kusakabe