ROADSTER AT
2ペダルのスポーツカーなんて、胸毛のないイタリア人とおんなじくらい味気ないと思っていた。
あ、ごめんなさい、特別に私が胸毛フェチだとかそういうわけではないんですけど(嫌いじゃないけど)、まあそれくらい腑抜けたモノだと思っていたわけです。スポーツカーはMTに限るやろ!と。イタリア男の胸毛はフッサフサのほうがエエに決まってるやろ!と(違)。
しかし、自分が成熟したのかそれとも最近の2ペダルのフィールが向上したのか、最近はすごく思うのだ。
2ペダルスポーツって、アリだよねって。
今やレーシングカーだって2ペダルの時代......なんていうのは有名な話だけれど、レーシングカーなんて一生運転することのない一般ドライバーだってもう、MT神話からは脱却したほうが人生2倍楽しい。たしかにMTは素晴らしい。でも、その固定概念に縛られてちゃもったいない。
それを実感したのはマツダのエース、いよいよ皆さんのもとにも待望のデリバリーを叶えつつあるロードスターだ。

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もちろんマツダのことだから、ラインナップにはMTが待機している。そして試乗したかぎりショートストロークであるそれも相当に楽しい。
しかし、敢えて私は推したい。ロードスターの6AT、とてもいいですよ。

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全車1.5L 4気筒エンジンを搭載するロードスターは2枚ドアにキャンバストップをもつオープン2シーター。
先述のとおりラインナップにはATとMTが用意された。

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ATはロードスター専用設計の6速。ステアリングシフトスイッチ(いわゆるパドルシフト)と、シフトレバーの手前にドライブセレクションを備えている。
パドルシフトは右手側がプラス、左手側がマイナスになっていて、Dレンジで走行中でもどちらかのスイッチを手前に引けばMTモードに切り替わる。

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ドライブセレクションでは、スポーツモードを選択すると自動的に低いギアを設定し、名の通りスポーティーで低段ギアならではのトルクある走行を叶えてくれるから、2ペダルとてただのオートマと侮るなかれ、なのだ。

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けっこうな勾配のワインディングを駆け上がるときだって、逆に駆け下りるときだって、このパドルシフトを上手に操作すれば気分はマカオグランプリ。
とくにシフトダウンのときは自動的に「ヴォン!」とブリッピングが行われ、クルマ側が回転数を合わせてくれるのは"ウマい人"になれたようで快感だ。

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MTだといわゆるヒール&トーという作業がこれにあたるのだが、いや、出来ますよ私だってヒール&トーくらい。だって過去、当時の師匠に怒られながらめちゃくちゃ練習したんだもん!
だけど、サーキットで攻めまくってるスポーツ走行時ならいざ知らず、普段のドライブのテンションで回転数を必死こいて合わせるとかそういうの、ねえ。スイートなデートドライブ中なんかにおいて、できればそういう汗臭い作業は、もっと涼しい顔でしれっとこなしたいのだ。
つまりクルマ側がやってくれるんならそんなにラクなことはない。
なんといっても、アップ・ダウン双方において、やっぱり人力で行うシフト操作よりも、メカニカルに操作してくれるATの方が、シフトチェンジが速いのも事実。スコン、スコンと軽快にシフトチェンジしてくれるから、来る次のコーナーに向けて、アクセル操作だけに意識を集中させてハンドリングを堪能できるのは、むしろATだけに許された特権である。
あのマツダのCMソング「明日へ〜突っ走〜れ♪」を思わず口ずさめるドライブが、ATには用意されているのだった。


とはいえ、パドルシフトを備えたスポーツタイプのATなんて今や世にあまた溢れている。
中でもロードスターのATが楽しい理由は、6代目にもなったモデルの成熟の中で、オーナーから寄せられた声をデータとしてきっちりと反映させているところにある。

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ロードスターにはオートレブシフトというものが用意されているのだが、これが秀逸。
ATモデルにはキックダウンスイッチが備わっていて、アクセルペダルを底まで踏み込むと、カチっとスイッチを入れたような感覚とともに、ローギアに入るのだが、登坂道の再加速の際などに有効なこのスイッチ自体は、さほど珍しいものではない。
しかしロードスターでは、シフトダウンスイッチによるオーバーレブ(車速に対して低すぎるギアに入ること)が感知されたその後には、オーバーレブすること=ドライバーが走る意思がある、とみなしてシフトアップが自動的に行われるようになっているのだ。

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昔のものはエンジンの限界が近い回転域であることを知らせる"レッドゾーン"に入って3秒程度で、自動的にスロットルを絞る制御がなされていた。
もちろんオーバーレブを繰り返せば、エンジンにかかる負担は大きい。
しかし、以前の制御では回転数を下げるためにスロットルを絞られていたために、踏んでも踏んでも加速せず、ドライバーの「走りたい」という意思をそぐことになっていた。これをシフトアップしてギアを適正化し、回転数を下げることで解消したのだ。つまりエンジンもドライバーの意思も、その両方を守るという細工がなされている。
ちなみに、キックダウンスイッチを押すギリギリ手前を踏力でキープすれば、ギアダウン状態を保持できるから、どんな領域だってコントローラブルな走行を堪能することも可能。
この制御こそタフにロードスターを使用するオーナーからの不評を改善したポイントのうちのひとつであるという。

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「他のどのクルマでもなく、"ロードスターだから乗る"という思い入れの強いお客様が選ばれるクルマだからこそ、こだわったモノは多い」という開発担当の皆さんの言葉が、いちいちキュンと刺さる。
ATだからといって、操作やフィールにモッサリ感はない。むしろ下手なMT操作よりもスッキリ軽快なのは、この辺の味付けにもよる。
さらに言うなら、街中での通常走行中はクルマ側が高いギアを選択し、エコ運転を心がけてくれるのも嬉しい。

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こだわりと言えば、有機的でドラマチックな外装もさることながら、ドライバーがほとんどの時間を過ごすインテリアに各所工夫がなされているのにも注目したい。
まず2シーターでありながら各所に張り巡らされたおもてなし精神溢れるあれこれだ。

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小物入れやドリンクホルダーの配置が行き届いており、車内の狭さを感じさせない使い勝手の良さは、普通のクルマとして日常使いをも網羅する仕上がりになっている。

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かつて輸入2シーターオープンカーを所有していた身である私、当時のクルマの収納の少なさにはほとほと閉口していた。ドリンクホルダーがないせいで車内でコーヒーも飲めなかったあの頃......そんな辛い経験を、ロードスター乗りなら経験することもないのだろう。

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座席の間にはドリンクホルダー(しかもSスペシャルパッケージとSレザーパッケージにはちゃんと二人分ある!)だけでなくサングラスなんかのちょっとした小物を収納できるグローブボックスも、背面の並びには鍵のかかるリアコンソールボックスもある。シートを倒したらそこにもちょっとした収納スペースが隠されている。

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懸念だったトランクスペースだって、車格を考えれば驚くほどの容量だ。
これなら荷物を絞らずとも、二人で旅行に出掛けることさえ苦にならないサイズだから、ちょっと遠いところだってどこにでも乗って行かれる。

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さらに、オープンカーはどれだけ風の巻き込みを考慮されて設計されていたって、外気で髪が乱れるのは機構的に仕方がないものではあるのだが、左右それぞれのサンバイザー裏両方にバニティミラーが備えられているのも嬉しいポイントではないだろうか。颯爽と降り立つ前にちょちょっとヘアスタイルを整えるという仕草もこれならスマートだ。

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同じ2ペダルを搭載するオープンカーの中でも、660ccという小排気量を誇る軽自動車、ダイハツ・コペンなんかは、依然MTを推したい。
小さいエンジンならではのトルクの細さを、自分が選択するギアの低さによってキュンキュンした軽快な走りに変換することが可能だし、しかももともとが小排気量だから低いギアで走ったとしても燃費に対する罪悪感をさほど抱かなくて済むから、とにかく踏んで走られるMTが楽しいのだ。

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だけどこれは言い換えれば、シフトチェンジのタイミングを自分で決められないATだと若干のモノ足りなさを感じるということでもある(コペンのCVTではマニュアルモードを選択していても一定の回転数に達すると自動的にシフトアップされる)。

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その辺1.5リッターのロードスターだと「わざと低いギアで走らねばならぬ感」はない。Dレンジに入れっぱなしにしていても、車重わずか1000kg前後(グレードにより異なる)という軽量ボディの恩恵もあって、一般道はおろか山道でも思わずヒャッハー!と声が出る、きめ細やかなワクワクする加速が待っていて、それはATだからといって希釈されているわけでは決してないからだ。
むしろハンドリングを楽しみたいから選ぶAT、そう言い切っても正解だと思う。

ROADSTER AT
良い意味でも悪い意味でも目立ってしまう新型ロードスターだからこそ、しゃらっと気軽に乗りこなせるATは、スマートな選択であるとも言えるのではないだろうか。エンストもしないしね!

■マツダ 公式サイト
http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/#roadster