ランボルギーニのレース部門「スクアドラ・コルセ」が仕立てた同一の車両を全てのドライバーが使い、各国のサーキットを転戦する「ブランパン・スーパ-・トロフェオ」シリーズは、2009年にヨーロッパで始まり、2012年にはアジアで、翌年から北米でも開催されている、いま最も華やかなワンメイク・レースの1つだ。最終戦では各地区の上位に名を連ねた選手が一堂に会し、"世界最速の猛牛使い"を決めるこのレース・シリーズには、プロフェッショナルだけでなくアマチュア、いわゆる"ジェントルマン・レーサー"が出場するクラスの設定がある。スーパーカーを所有し、ただ走らせるだけでは飽き足らなくなった富裕なエンスージァストが、自らの肉体と精神と技術を鍛え、多大な時間と資金を費やし、リスクを賭してほとんど"名誉"のためだけに戦う、それは究極的なアマチュア・スポーツと言えるだろう。6月13日、我が国の正規ディーラーであるランボルギーニ青山で、その出場車両「ウラカン・スーパー・トロフェオ」のお披露目と、レースに出場する方のパーティが開催されるというので、会場にお邪魔してみた。

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不動産会社を経営し、数々のスーパーカーを所有する木村武史氏は、その魅力をクルマ好きの人々と"エンターテイメント"として共有するために、ビジネスで得た財を投じて、それらを走らせる「CARGUY」という組織(木村氏によれば「秘密結社」)の代表でもある。その活動は例えば、わざわざ雪の積もる冬の北海道に、フェラーリのしかも「F40」や「458スペチアーレ」を持ち込み、その様子を撮影した動画を公開する。そんな彼を、人は「自動車冒険家」と呼ぶ。

その木村氏が新たな冒険のフィールドに挑むことになった。事の発端は一人のクルマ好きとして、SUPER GTやD1 グランプリで活躍するレーシング・ドライバーの織戸学選手と一緒に走った時のこと。木村氏の「スピードに対するセンス」に感心した織戸選手は、「どうしてこっち側の世界に来ないの?」とレース参戦を勧めたという。ちょうど今年から、ランボルギーニ・ブランパン・スーパ-・トロフェオは車両が先代の「ガヤルド」から、最新モデルのスーパーカーをベースにした「ウラカン」に切り替わる時だった。織戸選手の勧めによって2014年8月に富士スピードウェイで開催されたスーパ-・トロフェオを観戦した木村氏は、すっかり「レースの世界にはまっちゃった」そうだ。



それから10ヶ月、2015年スーパ-・トロフェオ・アジア参戦に向け、「こればかりはお金を持っていても買えませんから(笑)」と織戸選手が言う国際ライセンスをまずは取得し、ランボルギーニでSUPER GTに出場している織戸選手の指導の下、木村氏は「サーキットのライン取りとか、考え方とか」を教え込まれたそうだ。最初はシミュレーターを使い、「これまでの走り方を全部一度壊して、レーシング・ドライブというものを組み立てていった」という。木村氏によれば「一度(シミュレーターを)始めると、織戸さんは6時間とか付き合ってくれた」というから、素晴らしい師弟関係にも恵まれたようだ。




そして今年6月20日の開幕戦から木村氏が今シーズンのシリーズ戦を戦う新型レース・マシン「ウラカン LP620-2 スーパー・トロフェオ」がこの夜、ランボルギーニ青山で公開された。ロードカーの「ウラカン LP610-4」との最大の違いは、620馬力に向上したV10エンジンのパワーを、後輪のみで路面に伝えること。車両重量ももちろん大幅に軽減されている。"ワンメイク・レース"であるにも拘わらず、大型のリア・ウイングは先に納車された他のチームの車両よりも明らかに軟らかかったそうで、この軟らかさが、ストレートでは風圧によってしなって抵抗が抑えられるため、「(その他チームのマシンよりも)ウチのクルマの方が速いらしい」と木村氏は嬉しそうに話す。こんなところがイタリアらしいという気も。



来場された方々はほとんどお仲間ということもあり、オーナー・ドライバーの木村氏はレース仕様ウラカンのドアを開け、気軽にバケットシートに座ってみるよう人々に勧めていた。「ボディはカーボンですか?」との質問には「いや、違うでしょ、だってこんなにペコペコなんですよ」と、ボディ・パネルを実際に押して見せ、「これで3,000万円以上するんですからねぇ」と語り会場が笑いに包まれる一幕も。織戸選手によれば、スーパー・トロフェオの外装パネルの大部分は「一般的な市販車のバンパーなどと同じ」ABS樹脂製だそうだ。というのも、レースでは他車と接触することも多いため、カーボンファイバーだと割れてしまい、補修に多大なコストが掛かるから。ABS樹脂なら少しくらい当たっても破断せず、交換しても(カーボンファイバーより)費用は抑えられるというわけだ。「エンジン音がまた凄いんですよ。ここでちょっとだけ掛けてみましょうか」という木村氏に、会場から拍手と歓声が上がるも、ランボルギーニ青山のスタッフが引きつった笑顔で必死に止める。また、木村氏の「(シリーズが終わったら)これにナンバー付けて公道を走らせる...なんてことはやっぱりやっちゃいけませんよね、はい」と漏らした言葉は、実はクルマ好きとしての本音だろう。



そして6月20日に富士スピードウェイで行われた初レース、木村氏のドライブするカーナンバー7の黒いウラカンは、スタート直後に前方で起きた事故を避けたところ、後方からスピンしたクルマに追突されてしまいクラッシュ。木村氏は病院に搬送されたそうだ。だが、深夜に及ぶ修復作業によってウラカンは復活。首のむち打ちと右手首捻挫を負った木村氏は、翌21日に行われた第2レースに痛みを押して出場する。しかしさらに不運は続き、今度はフォーメーション・ラップでギアが入らないというトラブルに見舞われ、16番目という最後尾からのスタートに。ところが、ここから自動車冒険家の本領発揮というべきか、木村氏は降りしきる雨の中、プロ・クラスのベストと比べても僅か1秒遅れという1分52秒台を連発し、次々と前車をオーバーテイク。見事アマチュア・クラス3位まで順位を上げてチェッカー・フラッグを受ける。

プロ・スポーツなら結果が全てということも出来るだろう。だが、アマチュアがスポーツする意義を考えれば、木村氏とチーム、そして応援する人々が今回のレースで得たものは、結果としては逃した"デビュー・ウィン"に匹敵するほど大きかったのではないかと思う。スーパー・トロフェオ・アジア・シリーズはこれから中国、マレーシア、インドネシア、日本、そしてアメリカ各地のサーキットを転戦する。そして11月21日・22日に開催される「スーパー・トロフェオ・ワールド・ファイナル」では、ヨーロッパや北米の強者を相手に戦う自動車冒険家の姿が見られるだろう。将来的には、ジェントルマン・レーサーにとって最高峰の舞台である「ル・マン24時間レースに一緒に出たい」と、織戸選手はその先の目標を語る。



ブランパン・スーパ-・トロフェオは出場者枠が決まっているため、(お金さえあれば)いつでも誰でも出場できるというわけではないが、希望する方にはランボルギーニ青山が車両の手配やサポートの面で「相談に乗る」そうだ。多くの人々にとって「ランボルギーニを所有すること」は夢である。既にそれを叶え、さらにその先の夢に人生の充足感を求めるなら、"あっち側の世界"に足を踏み入れてみてはいかがだろうか? 興味を持たれた方は、以下のビデオでまずはその雰囲気をご覧いただきたい。




「スーパ-・トロフェオ・アジア」開催日および開催地
http://squadracorse.lamborghini.com/jp/super-trofeo-asia/calendar/

ランボルギーニ青山
http://www.cornesmotor.com/lamborghini/

CARGUY

http://carguy.jp/

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By Hirokazu Kusakabe

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