PPIHC2015
第93回パイクスピーク インターナショナル ヒルクライムレースは、いよいよエレクトリックマシンがパイクス史上初の総合優勝をするのではないか。そして新しい歴史を刻むのはモンスター田嶋か、リース・ミレンか。もしくはそれを阻むのは誰か!? という点に注目が集まっていたという見方で間違いはなかったと思う。結果は総合順位1-2位をエレクトリックマシンが奪取。2015年、また新たなパイクスの記録が生まれた年となった。

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 日本人としてはパイクス参戦28年、クラス優勝はもちろん総合優勝も6年連続で果たし、4年目のエレクトリックマシン参戦となるモンスター田嶋に、オールオーバーでのエレクトリック初優勝を導いて欲しかったが、残念ながら2位で終わった。

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優勝したのは今年パイクス参戦22年目となるリース・ミレン。リースは3年前から参戦を開始したラトビアeO(イーオー)社の最新マシンで初のEVドライブに挑み、豊富な経験も活かす走りで9分07秒222のタイムでゴール。4モーター(4WD)の後輪の駆動が途中から働かなくなり、FF状態&アンダーステアの強いマシンをコントロールしながらのゴールだったそうだ。が、それでも昨年のグレッグ・トレーシー(三菱自動車)のタイム9分8秒188を1秒縮め、エレクトリック・モデファイド(オリジナル)クラスのコースレコードも更新した。


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モンスター田嶋も今年はクロアチアのリーマックオートモービル社と共同開発した新型『E-RUNNER CONCEPT 1』で挑んだが、リースが駆るマシンとの重量差は830㎏にもおよび、さらに体重差も含めると...(苦笑)、そもそもかなり厳しいレースとなるのは予想できた。それでもパイクスは何が起こるかわからないから面白いのだが...。走行を2/3終え、残るはトップセクションというところでメカニカルブレーキ(いわゆるフツウのブレーキ)が破損。ブレーキがまったく効かなくなる状態で恐々ゴールを目指したそうだ。タイムは9分32秒401。「怖かった、あ~っ、怖かった。人生で一番怖い経験だった」がマシンから降りた最初の感想だった。しかし、トラブルをかかえながらの走行だったにもかかわらず、本人の記録を11秒短縮できたこと、また4輪を制御するベクタリングシステムの開発などの取り組みとそのチャレンジには満足しているようだ。モンスター田嶋は市販のエレクトリック・スポーツカーの開発を視野に入れたチャレンジをしているため(車名のCONCEPT 1には市販化を目指すコンセプトの意味もあるようだ)、「パイクスに参戦し勝利したいと思うものの、EVカートのようなレーシングマシンであり圧倒的な重量差のあるリースが駆るマシンとは開発アプローチが違う」と言う。そしてまた来年、さらに技術を進化させたマシンでチャレンジするつもりだと笑顔で話してくれた。

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ちなみに総合3位はこちらも今年参戦21度目となるコロラドでも人気者のレーサー、ポール・ダレンバック。モンスター田嶋は日本人ながらパイクスでは大人気のレーサーであり、今回の総合優勝争い、地元で人気のあるレーサー含め実は役者ぞろいなのであった。

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 パイクスピーク インターナショナル ヒルクライムレースは標高4300mの山頂をゴールとするタイムアタックレース。ダイナミックな高山が舞台となるこのレースは様々な目的や思いを抱いて国内外から参加者が集まってくる。

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そして今年、新たな日本チームとして注目されていたのは本田技術研究所(栃木研究所)が持ち込んだ『Electric SH-AWD with Precision All-Wheel steer』だった。こちらはあくまで先行開発技術をパイクスで試すのが目的。本田宗一郎の「レースは走る実験室」的なチャレンジであった。今回はCR-Zのシャシーにレジェンドにも採用されている後輪制御ベースのSH-AWDシステムを前輪にも採用し、4つのモーターが4輪をそれぞれ独立制御するトルクベクタリングを考案&トライ。さらに北米ですでに発売中のFF版レジェンドに搭載されている後輪のトーを左右独立にコントロールするPrecision All-Wheel steerを組み合わせてのチャレンジとなった。

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ドライバーは全日本ジムカーナやスーパーGTでも活躍する山野哲也。「どこかのレーシングチームが勝つために参戦するというのでお誘いを受けたなら断っていたかもしれない。だってパイクスはリスクが高いでしょう? でも新しい技術とそれを搭載するクルマの開発となれば話は違う。研究所の開発者たちはみんなピュアでこのプロジェクトは本当にやり甲斐を感じている」と、一週間の練習走行も常に技術テストとデータ取りを念頭に着実な走行を重ねていた。

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パイクスではルーキー扱いとなる山野哲也のタイムは10分23秒829。チームの目標タイムが10分30秒だったので、7秒も速いタイムでゴール。当然ながら開発者の面々は大喜びだった。エキシビションクラスで1位、総合でも11位のタイムとなる。「この制御技術は無限大の可能性があってまだまだこれからの技術。今回の結果も良かったけれど、とにかくデータが沢山持って帰れるのでよかった」と山野さん。あくまでも研究開発の一環だった今回の参戦ゆえ、来年のチャレンジは未定であるがこれで終わってしまう訳はないと思うのは私だけではないのではないのでしょうか...

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二輪ではエレクトリックバイクでの参戦2年目となる岸本ヨシヒロが2位と14秒の差をつけ10分58秒861でクラス優勝。パイクスピークチャレンジ UTVエキシビションクラスにKawasakiのZ1000 MK-2で二年目のパイクスを走った荒井ヤスオは1位と惜しくも2秒差の11分18秒667で2位でゴール。サイドカーの渡邊/栗原組もクラス優勝。

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ところで、この数年のパイクスは二輪からレースがスタートし、続いて四輪というスケジュールとなっている。今年は二輪のレースはいつも以上にスムーズに進み、いくつかのアクシデントやトラブルでディレイはあったものの恙なく四輪のレースも進行するかと思いきや...。四輪の走行もあと半分くらいかというところで激しい雷と大粒の霰(あられ)が一時間以上続き、山頂は降雪状態。雷警報を受けて全員屋内に避難し天候の回復を待つことになった。結果的にその後も走行は不可能であり、コースは2/3ほどに短縮されて続行となったが、山頂のゴールを目指すことが叶わなかった人たちは悔しい思いをしていたようだ。が、これもパイクス。一週間、月曜日が車検、火曜日が自由参加の練習(コースの1/3のみの走行)、水―金曜日が練習&予選(毎日異なるコースの1/3セクションを走行。一番低い標高のボトムセクションの走行タイムが予選タイムとなる)。日曜日にやっと、しかしたった一度だけフルコースを走ることができるというこのレースで天候に振りまわされ、山頂のゴールを目指せなくても仕方がないのだ。

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 今回は四輪と二輪を合わせ、5組6人の日本人がはるばる参加したが、サイドカーのチームだけが、この天候の影響を受けてしまった。が、彼らもまた来年を目指すという。それだけ魅力があるのも、パイクスなのだ。
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レースのスタートはここから。ゲートの向こうにパイクスの山頂が見える

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車検。エレクトリックマシンは走行中120デシベル以上の音を発しながら走行しなければいけないルールになっている。ホンダ『Electric SH-AWD with Precision All-Wheel steer』はほんの少し音が足りず、再車検になるも無事に車検合格。

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車検風景

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デイトナ24時間でデビューしたアキュラのLMP2マシン。2レース目をパイクスに選ぶも、練習走行初日にマシントラブルで残念ながらレース参戦は叶わなかった。

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今年は例年に比べ残雪の多いパイクスピーク。156のコーナーをクリアして最終的に目指すは標高4300mの山頂だ。

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スペンサーさんはパイクス歴20年。フォード製600HPのエンジンを搭載するこのオープンホイールモデルで走る理由を尋ねると、「スタイルとハンドリングが好きだから」とこたえてくれた。今回はオープンホイールクラスでポール・ダレンバッハについでクラス2位。

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日本の所ジョージ的なクルマ好きと言えるかしら。ガレージやクルマを紹介するTVプログラムが人気のアーロン・カフマンは参戦2年目。

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トレーラーヘッド『FREIGHTLINER』に搭載するはトリプルコンパウンド・ターボシステムを組み合わせたエンジン2400HP+ZF製5レース用AT。マイク・ライアンも14回目の参戦となり、このトレーラーヘッドはマイクとともにパイクスで大人気の一台。

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アキュラNSX

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トヨタ RAV4EV ドライバーは今回総合優勝したリース・ミレンの弟、ライアン・ミレン

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このレースは標高の高さから別名「雲に向かうレース」と言われている。

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ホンダ Electric SH-AWD with Precision All-Wheel steer

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シェルビーGT500

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ポルシェ911ターボS ドライバーのデイビッド・ドナーさんはパイクスで優勝経験もあるドライバー。地元のポルシェディーラーからの誘いで数年ぶりに参戦。タイムアタック2クラスで今回もクラス優勝を果たした。

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Fit EVのドライバーはホンダの様々なモデルはもちろん、ホンダジェットの内装も手掛けたデザイン責任者、マイク・ツァイ。S2000やNSXで時々レースもしているモータースポーツ経験者だ。

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マツダ ミアータ

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三菱EVO9 ちなみにランサーやインプレッサはパイクスでは人気がある

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ジャガーFタイプ イギリスからやって来たジャスティン・ロウさんはグッドウッドでシクルカット・ジャガーを走らせ、コースレコードも持つ方なのだとか。グッドウッドにパイクスのウイニングマシンがやって来ては話題になり、ご本人もパイクスを走ってみたいと参戦。

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レクサス RC-F CCS-R

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EVSR(EV・Sports Racing)のマシンは日本でいうザウルス(日産)のようなレーシングカーのエンジンを電動にコンバートしたエレクトリック・レーシングカー。もともと消防車だったという1951年式のトラックとこのマシンたちのマッチした感じ、センスも抜群では?

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金曜日の夕方は毎年恒例のファンフェスタが開催される。20時ころまで明るいこの時期、日が暮れけたころからぞくぞくと人が集まってくる。

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モンスター田嶋のブースはいつもサインを求める人で大行列ができる。この行列が人気のバロメーターだとしたら、この日、一番だったに違いない。

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5年前からホンダのオハイオ研究所のモータースポーツ好き有志だちがパイクスにやってきていた。3年前からはカリフォルニアの研究所の人たちも参加し、今年は6台のクルマと4台のオートバイがパイクスの山頂に挑んだ。

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ファンフェスタには参加車両はもちろん、地元のディーラーやカーショップが出展。クルマ好きもそれほどでもない人も、クルマに触れる絶好の機会となる

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金曜日の夕方とあって、家族連れも多い。

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毎年恒例と言えば、地元の消防団によるチリコンカンコンテスト。買って食べて、美味しかったところに投票をする。思い思いのアピールをしてお客さんを呼ぶパフォーマンスも見もの。

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モンスター田嶋のE-RUNNER CONCEPT 1は四輪で4番目にスタート。後半、ブレーキトラブルに見舞われながらも9分32秒401でフィニッシュ。総合&エレクトリックモディファイクラスともに2位の結果を残した。

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雨雲が気になりだした頃、山野哲也の駆るホンダElectric SH-AWD with Precision All-Wheel steerがスタート。目標タイム10分40秒台を大幅に上回る10分23秒829でゴール。山野は無事完走できたことに安堵し、「とても有意義な一か月(テスト含む)だった」と満足。

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総合&クラス優勝を果たしたリース・ミレンとマシンのeOのPP03。

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今年のペースカーは新型NSX(アキュラNSX)のプロトタイプ。スポーツハイブリッドにSH-AWDを組み合わせる。ドライバーはパイクスに2度の参戦経験(S2000ならぬS3700をドライブ)もある広報部シニアマネージャーのセージ・マリーが務めた。「とっても楽しかった。このクルマは山道のカーブを速くスムーズに走るためにデザインされたクルマだって納得できたよ。運転もとてもし易かった と」感想を述べてくれた。

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レクサスRC F CCS-Rはジャスティン・ベルがハンドルを握り、11分18秒667というタイムでタイムアタック1クラスで3位入賞。

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レース終了後、山を下りるライダーやドライバーたちとハイタッチをし称える観戦者と参加者のコミュニケーションもパイクスならではの光景だ。

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スタート地点で山野の帰りを待つ本田栃木研究所のエンジニアたち。多くの開発者たちが携わったこのプロジェクトも、最後のレースウィークは10名ほどで挑んだ。興味深かったのはチームの年齢層だ。最年少は22歳。他は30歳代とベテラン50歳代がチームを組み、若手育成にも役立てていたそうだ。 ぜひ、この経験と技術を次世代のクルマに活かしてほしい。

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モンスター田嶋のチームもスタート地点で結果と田嶋の健闘を称え、田嶋もスタッフにお礼を述べていた。

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山頂の名物、ドーナッツで完走を祝う。

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お昼過ぎになって天候は急変。激しい雷とヒョウのように大粒の霰が一時間以上降るというこの数年では異例の天候によりレースは中断。

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総合3位、パイクスピーク チャレンジ オープンホイールクラスで優勝したポール・ダレンバック。

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アメリカの様々な環境下で3万キロの走行テストをした仕上げにパイクスピーク(高山)でテストとレースに挑んだメルセデスベンツ C300d。ドライバーはかつてヨーロッパラリー選手権に三菱のドライバーとしても参戦したことのあるウベ・ニッテル。山頂で話を聞くと、「素晴らしいエンジンとパフォーマンスを持つクルマだ」と絶賛していた。

■モンスタースポーツ 公式サイト
http://monster-sport.com

■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp