Audi A7

 様々なプロダクツの多くが熟成を経てますます洗練度を増すもの。アウディA7もご多分に漏れず、という印象を抱く。特に気になる点はなかったはずなのに、ビッグチェンジ後のモデルは走り始めた直後から「な、なんだろう、この滑らかさは...」と、気分が高まる筆者であった。
 2011年、アウディA7はA6系のプラットフォームをベースに、クーペのようなスタイルを持つ独創的な4ドアモデルとして登場。サイドビューやリアビューにその特長は表れており、A6より全長も全幅も若干大きめながら(いやそのサイズも含め...ということもあるかもしれない)、デザイン買いをされる方も少なくないようだ。
 今回のビッグチェンジではデザインの変更、そしてA8にも採用される先進のヘッドライトシステムやすでにA3やA1などにも搭載される新世代のネットワーク情報検索システム付マルチメディアインターフェースを採用。

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今ある最新の技術を効果的に搭載し、モデルの魅力アップが図られている。さらにこれまで3L TFSI quattroのみであったモデルバリエーションに新しく2L TFSI quattroが追加され、およそ200万円の価格差となる716万円~というA7としてはグッドプライスなモデルも登場した。
2LTSFIの搭載もニュースではあるが、既存エンジンのパフォーマンスも向上。またアルミの積極的な採用により既存モデルと比べ15%のボディ軽量も達成しているそうだ。さらに具体的な変更が伝えられていないチューニングレベルの改善がドライブフィールの洗練に磨きをかけているようにも感じる。

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具体的な特徴を紹介はまず注目度の高いデザインから始めよう。
外観デザインの主な変更点はボディ前後にあった。バンパーやボンネットも刷新されたというフロントマスク。その中でも大型シングルフレームグリルは六角シェイプの上部左右の角を強調し、クロームメッキのクロスバーが7本から8本に増えている。この一本...、されど一本、なのである。クロスバーの間隔が狭まったことでほどよい繊細さがグリルの大きさと立体感の迫力を強め、ダイナミックさとエレガントさを新しさと共に強めているように見えるのだ。こういった細かなディテールの変化と効果を知ることがビッグチェンジの醍醐味とも言えるのではないか。

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 同時に左右のヘッドライトも立体感が増しスッキリとシャープな印象を抱く。ライトの目頭はこれまでの下方向から上方向に吊り上がる形状に変更。果たしてグリルとライトのデザイン変更が新型の顔つきを大きく印象付けているのは間違いない。

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A7にとって注目の新技術となるのが"マトリクスLEDヘッドライト"だ。昨年、アウディのフラッグシップモデルであるA8から搭載が始まったばかりのシステムが今回A7にも標準装備される。

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これはルームミラーに内臓されたカメラからの情報によってハイビームで走行中、対向車や前車に対し19個のLEDハイビームユニットを用いて個別に減光/消灯させ照射部位を調整。おかげで相手は眩しくなく、自分にとって必要な照射エリアはLED&ハイビームならではの明るさを保ち、夜間走行の視界をより安全かつ良好に保つことが可能となる。

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加えてドライバーのハンドル操作に従い、ライトの投射の中心位置を変化させるインテリジェント コーナリングライト機能も装備。さらにこのマトリクスLEDヘッドライトには13個のLEDが内側から外側に向けて「ティロロロローン」と流れるように光るダイナミック ターンシグナルも前後に装着される。消費電力も少なく長持ちだけどパーツコストがお高めなLEDライトを他メーカーよりも早めに多めに積極的に採用しデザイン性を感じさせてくれるアウディを筆者は"LEDの魔術師"と呼んでいる。このティロロロローンと光るダイナミック ターンシグナルもしかり、のアイテムと言えよう。この最新のヘッドライトシステムが予防安全の向上に繋がっているのはもちろん、デザイン性の魅力向上に一役買っているのも言うまでもない。"マトリクスLEDヘッドライト"の存在は大きい。

 続いてA7の個性を強く表すリヤビュー。独特のボリューム感が魅力であり、同時にA7のダイナミックさをもアピールしている。今回のビッグチェンジでは既存のテイストはそのままに、テールゲートも含めデザインを一新。

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例えば丸形から台形に形状を変更したエキゾーストパイプとそれを囲むように左右に渡る黒いディフューザーやテールライトの直線的にLEDを配置した新デザインを採用したことで、テールゲットのエッジのシャープさやバンパーなどの水平基調をより際立たせる視覚的効果がある。

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 インテリアではデザイン性と質感の高さを改めて強調したい。ドライバー側にやや傾きのついたセンターコンソール。フロントシートを取り囲むように左右ドアトリムのワンモーションを感じさせる、ラップアラウンドデザイン...。それを一層強く感じさせてくれたのがオプションながらトリムの装飾に新採用となるアルミニウム ビューフォートウッドブラックだった。ウッドとアルミをバームクーヘンのようにかさねたパネルを薄くスライスし断面を見せる工法が用いられている。

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一見、単純で飾り気のないように見えて見栄えのするソレは、身に着けるマテリアルでその印象もクラス感すらも変えるほどの"力"があると改めて感じさせられた一例だ。そしてこういったマテリアルが映えるのも、基本的な造り込みの良さがあってのこと、なのである。A6のモダンさとA8のよりエレガントな質感の間にあるような、そんな雰囲気が広さも含めA7の個性なのではないかと思う。

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一方、実用面では変化あり。まず後席が2人がけから3人がけとなりA7が5人乗りへと変更されている。運転席では2つのメーター間に配置された7インチの液晶ディスプレイの表示バリエーションが増え、地図(しかもカラー!)を表示できるようになった。これがとても見やすいのだ。

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今回からインフォテイメントシステムMMI(マルチメディアインターフェース)に最新世代型を採用。携帯電話回線を使い、ネットワーク接続する"Audi connect"は様々なリアルタイム情報を入手できる上、オペレーターと対話しながら目的地設定や予約手配も可能。これまで通りタッチパッドに文字入力をすることも可能でありその文字認識度も上がっているようだ。が、右ハンドル車の場合、右利きの方が左手で入力するのがやや難しい...。対話式のほうがスムーズであり、そもそも移動中の煩わしさを助ける効果がある。ナビゲーションには「Google Earth」の表示も可能だ。

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搭載エンジンは、これまでよりも+23psの333ps/440NmとなるV6 3Lスーパーチャージャー付エンジンに加え、今回から252ps/370Nmを発揮する2L直4インタークーラー付シングルターボエンジンが新たなラインナップに加わった。トランスミッションはともに7速Sトロニックが組み合わされている。

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ところで今回の試乗では3Lのみハンドルを握ることができたのだが、このエンジン、スーパーチャージャーのほうに燃費性能を向上させる新技術が詰め込まれている。最大トルクが250Nmもしくはエンジン回転が3000rpmに到達すると、電磁クラッチによってエンジンと切り離される。つまりそこからは自然吸気エンジンで走ることになる。アクセルペダルを踏み込めばまたスーパーチャージャーがエンゲージされる。
アイドリングストップ(これまでの0キロから2キロ以下で停止するようになった点が新しい。)はもちろん、アウディ ドライブセレクトで"効率"モードを選べば、このスタイリッシュでエクスクルーシブなモデルで、より一層スマートでエコな走行が可能となった。ご参考までに新型A7のカタログ燃費はこれまでの10.2km/l 13.15km/lと向上している。

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エンジンのパフォーマンスは申し分ない。加速時の盛り上がりを感覚的にもほどよく伝える音とアクセルペダルを通して伝わるトルク感の強さや変化のわかりやすさがドライバーにとってはエンジンというかトルクの扱いやすさとしてわかるところがいい。それでいてエンジン音が果たす役目と相反するような静粛性も高いのだ。このエクスクルーシブなモデルで得られるクルマづくりの奥深さ、動力に在り、とも言えそうだ。

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 ビッグマイナーチェンジを受けて、この新型A7のドライブフィールはより一層、滑らかな印象を受けた。ステアリング操作時の応答性とその手応えの重さ、そして乗り心地、アクセルを様々な強さや弱さで踏み込んだ際のリニアなスムーズさに熟成を感じることができる。当然ながらドライバーはそれらの複合操作を行った結果を一瞬にしてワンモーションで感じるわけで、相乗的な反応が一台の乗り味の質を生むとても大事な要素なのだ。そしてこのあたりの熟成内容については詳細の説明はないところが、自然熟成発酵的?(笑)

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もともとシャーシにはアルミを多用しバネ下の重量低減に向けた開発が行われていたが、今回はさらにボディが15%ほど軽量されている。また全車標準装備となった"アウディ ドライブセレクト"(=エンジン、トランスミッション、ステアリングを用いた電子制御による走行モード切り換え技術)のマネージメントもチューニングレベルながら洗練されているのではないかと推察する。
新採用の先進技術ももちろん大歓迎だが、細かなチェンジやチューニングが相乗効果を生み、質を高めるのがマイナーチェンジの利点でもあるのだ。

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■アウディ 公式サイト
http://www.audi.co.jp/